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023 「これって彼氏に話すと不味いことだったのかな?」

ナツは、びっくりした顔をして言った。

「それは、初耳だわ」

いやいやいや、とこころの中で僕は思ったけれど、店長はナツの言ったことを気にしたふうには見えない。

おそらく、ジョークの類だと受け取ったのだろう。

店長は煙草の煙を吐くと、特に表情を変えることもなく言葉を重ねた。

「4年ほど前だったと思うよ、ナツが結婚すると言って辞めたのは」

ナツは、あまりのショックに言葉を失っているように見える。

店長は、淡々と語り続けた。

「その後、子供が出来たってハガキがきていたね、そういえば」

ナツは、パニック状態のように見える。

店長は、困惑しているように少しだけ眉を顰めていた。

僕はくらくらする頭を抑えると、事態を理解するために問いを発する。

「えっと、そのハガキが来た後に、ナツはここに復帰したんですね」

店長は、頷く。

「ある日、ひょっこりと戻ってきたんだよね。そして、何も言わず当たり前のように仕事をはじめたんだ」

僕の呆れ顔に、店長は少し苦笑を返す。

「まあ、たまたまバイトの子が突然辞めたもんで、求人してたところだったしね。ナツは、自分なら当然即採用と思ってきたんだろうけれど」

僕は、少しため息をつく。

「あなたは、そのう、話をしなかったんですか?」

店長は、片方の眉をあげる。

「何を話すというんだ?」

「いやだって、結婚したはずだとか、子供はどうしたとか」

店長は、煙草を灰皿に押し付け火を消すと、肩をすくめる。

「そんなの見当つくだろうよ。何も言わずに戻ってきたんだぜ、何が起きたかは決まってるさ。聞くだけ野暮っていうか」

店長は、腕組みをする。

「聞けないだろ、怖くて」

言葉を発すること無く、口を動かしているナツを見て、店長は少し口を歪める。

「いや、これって彼氏に話すと不味いことだったのかな?」

「まあ、大体判りました」

そう言い放った僕を、店長とナツは見つめる。

「一体、何が判ったんだね」

店長の言葉に、僕は答える。

「ナツは一年分の記憶を失っています。おそらく、4年前から3年前にかけて」


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