1
太陽の光を毛先の表面で反射し、角度を変える度にキラキラ輝く明茶の毛。
まるでもう一つの自我を持っているかのように自由自在に遊び回る長い尾。
顔の真ん中に大ぶりの宝石の如く鮮やかな琥珀色を帯びている2つの丸い目。
その琥珀色の目は、今、己の目の前で、半ギレ状態で見下ろしてくる男を屈託なく映していた。
その愛らしい小さな姿に対して、向かい合う金髪碧眼の半ギレ状態男は、目の前の小動物に大人げなく射殺さんばかりの鋭い目つきで睨み、片手にはその場には全くもって物騒な愛用のシルバー銃を握っている。
その危ない男の少し後ろで寝転がって狸寝入りを決め込んでいる黒髪の男は、金髪の男の手に握られている銃に、気付いているのか気付いていても止める気が無いのか、微動だに動く気配がなかった。
学校が終わって帰路を歩いていた千夏が、家の近くの人気ない公園で遭遇したのがこの一場面だ。
さすがに周りを考えない行動と考えに、一瞬ながらも立場を忘れて小さくチッと舌打ちした。
まったくこいつらは……。
状況を把握していなくてもほぼ100%猫に罪がない事は、その小柄さと純粋な瞳、何よりも可愛さが証明している。
だいたい男たるもの、あんな可愛い仔にちょっとやそっとのことでムキになってはかっこ悪いとは思わないのだろうか。
……思わないだろうな、あいつらなら。
ということはさすがに口に出しては言えないので、慌ててその仔と金髪の間に割って入り、金髪の男と向かい合うようにして軽く睨みつけながら目で訴えてみた。
「何があったか知らないけど、こんな真っ昼間に何物騒なもの出してるのさ、悠理さん?」
当然千夏の内心から響く文句など伝わるわけもなく、金髪の男――悠理は千夏の何倍もの睨みを効かせて呆気なく千夏は怯んだ。
「俺は何も悪くない。 悪いことしたのはそいつだよ。
つーか『さん』付けキモい。」
皮肉込めて言ったんだけどそれすら通じないのかあんたは、とは口には出せなかった。
「悪いことって……何されたの?」
体長約20センチもないのではという程の大きさのこんな小さな小さな天使が、身長179センチの大男――20センチから見れば大男と言えるだろう――に何が出来るというのか。
――――しかも、「人間」ではない彼らに。