忌まわしい記憶 #7
彼女を護り抜く・・・
彼女はとにかく目立った。ヴェールをまとって顔を隠しているのに。行動が目立っていたということもあるかもしれない。でも、とにかく目立っていた。誘拐すれば金になると思わせる雰囲気があったのかもしれない。
三回ほど、似たようなことがあった。
一度目は、彼女が車でしか行けない様な所に行きたいと言い出したときだ。運転手が付いていた。でも、防弾仕様の車ではなかった。
彼女が行きたいといったのは景色が綺麗だと評判のところだった。その綺麗な景色を堪能して帰路へついた。
その帰りだった。襲撃されたのは。
助手席に座り、ずっとバックミラーを見ていた。少し前から同じ車が距離を開けてついてきていた。男が四人乗っていた。それが気に入らなかった。
運転手に、運転を代わるように指示した。しかも車を走らせながらで交代するようにと。運転手は僕が言った事の意味がわからなかったようなので、強引にハンドルに手を出し、席を代わらせた。
彼は助手席でぶつぶつ文句を言っていた。自分の仕事が取られたと思っているようだ。でも、もう少ししたらわかる。代わって正解だったと。でも、彼はそう思うことができなかった。
車が細い道から広場へ出た。すると、後ろについてきていた車が急に割り込むように僕らの前で停まった。そして四人がアサルト・ライフルを持って降りてきた。
ブレーキを踏んだ。そして姿勢を低くして、ハンドルを左に切りながら(彼女は運転席の後ろに座っていた)、サイド・ブレーキを使って車を急転回させた。彼女に向かって叫んだ。
「伏せろ! なるべく低く! 伏せろ!」
彼女は伏せた。その時アサルト・ライフルの弾丸が車の右側面から後方にかけて当たりだした。窓ガラスの割れる音がした。幸い、タイヤには当たらなかった。
奴らがマガジン・チェンジにもたついているのをバックミラーで見ながら、アクセルを踏んだ。奴らが車で追いかけてこないのをミラーで確認した。
助手席を見たら、窓ガラスは見事に砕けていて、運転手はアサルト・ライフルの弾を何発も受けて、即死していた。伏せることもしなかったのだろう、頭に当たっていた。
二度目は、新しい運転手が来てからだった。
その新しい運転手が気に入らなかった。態度が悪かった。嘘の儲け話をしてみたら、すぐに喰いついてきた。彼女の両親に言って、男をすぐに解雇させた。
その男は逆恨みしたのか、儲けになると踏んだのか、体制を整えて襲撃してきた。襲撃してきたとき、ちょうど一人だった。彼女を車に乗せ家へ帰し、街を観察しながら歩いて帰るところだった。
車が一台走ってきた。道の横へよけようとしたが、車の中を見て理解した。あの男が、三人の男と車に乗っているのが見えた。銃を取り出しているのが見えた。
すかさずグロックを取り出して、運転手を撃った。車は左へターンする形で建物にぶつかった。グロックを構えながら車へ駆け寄り、激突した衝撃でふらふらしている男たちに一発ずつ銃弾を与えた。もちろん、頭部に向けて。
全員が頭から血を流し死んでいるのを確認してから、平静を装って無理をして歩いて帰った。
そしてまたトイレへ駆け込んで吐いた。やっぱり胃液しか出なかった。苦しかった。吐いたあとすぐに自分の部屋に閉じこもった。
また人を殺した。
三回目はチンピラに絡まれたときと同じような状況だった。あの時と同じように彼女をメイン・ストリートまで走らせ、相手を迎え撃った。このときは、銃は使わなかった。至近距離で、しかも囲まれたからだ。
相手は三人だった。訓練所で何回もやったのと同じことをしていた。考え、相手を殺した。
一人は盾に使ったので、仲間のハンドガンで撃たれて死んだ。もう一人はナイフが手首を切り裂いたのでびっくりしていた。その隙にもう一人の胸元にナイフを突き立て、心臓をえぐった。それからゆっくりと、手首を押さえて逃げ出そうとしている男を捕まえてから口をふさいで心臓にナイフを突き立てた。靴に少し血がついた。
血がついたという意味で、珍しく失敗した。完全に効率よくできたとは言えなかった。
また彼女は心配して待っていたが、僕の姿を見て嬉しそうな目をした。なにしろいつも顔はヴェールで隠れていた。彼女がどんな顔をしているのかは、目を見て想像するしかなかった。
そして家へ帰り、いつものようにトイレで吐いた。吐いたあと、自室へ閉じこもった。
また人を殺した。




