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安息の地  作者: 月夜見
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護るために #1


九月二十六日

 昨日思ったとおりに、それはきちんとやってきた。

 深夜に電話が鳴った。田代さんからだった。

 「おい、創。大事なことだ、ちゃんと目を覚まして聞けよ」

 「田代さん、いったいどうしたの?」

 「・・・今日、ロシアン・マフィアが日本に入り込んできた。ただな、マフィアといっても小さい組織だ。それでな、俺たちと敵対する組織と手を組んだらしい。」

 でも、それは田代さんの仕事でしょう? そう言おうと思った。口を開く前に、彼は心臓が止まりそうなことを言った。

 「ターゲットは、お前の大事な女だ。薫・マリア・リューリク。彼女の父親を脅迫して自分たちの言うことを聞かせるつもりらしい。俺の掴んだ情報だと、もう奴ら動き出しているらしいな。とりあえずは誘拐のようだ。実行部隊は別行動らしい。お前しか彼女を護れる男はいねぇだろ? 護ってやれ。それが男の仕事ってもんだ。で、必要なものを用意してやる。言ってみろ」

 呆然として考えがまとまらなかった。薫がターゲット? 誘拐? 必要なもの?

 「おいっ! どうしたっ! 創っ! 創、てめぇ聞いてんのかっ!」

 田代さんにそう怒鳴られて正気に戻った。

 「・・・ストライダー製のタクティカル・ナイフを二本。あと、ハンドガンを二丁。できればグロック17がいいです。ずっと使っていたモデルなんで。予備のマガジンは四本。あと弾も。用意できますか?」

 「待て。チャカはお前の言うブツが良くわからねぇ。詳しい奴に聞くから少し待ってろ」

 電話口でもさもさと話し声がしている。銃器に詳しい人間に聞いているらしい。

 しばらく待っていた。

 「わりぃ。待たせたな。詳しい奴に聞いたら明日には用意できるようだ。でもな、すまねぇがナイフはわからねぇ。俺の方じゃ用意できねぇ」

 「・・・刃渡りが十五センチくらいで、持ち手が同じくらいの長さの刃物はありますか?」

 「近いヤッパがあるぜ。二本で良いんだな?」

 こういうときに頼むべきは友人だな。そんな変なことを考えていた。

 「用意できたら、すぐに俺が持って行ってやる」

 「助かります」


 要人誘拐のミッションを思い出していた。手順やそこで負傷させた人間のことや、あのデュプレのことを。そう、あの時撃ち殺したデュプレを。

 僕の大事な、僕と家族が大事にしていた薫が、あの国にいた時のように危険にさらされている。護らなくては。護りたいんだ。彼女を。薫を。


九月二十七日

 登校途中から考えていた。襲撃手順を。奴らが日本に入ってきたのは昨日かおととい。当然奴らは準備にかかっているところだろう。

薫と一緒に、通学路を警戒しながら帰ってきてすぐ、田代さんは護衛兼運転手のいかつい男と一緒に部屋に来た。指定したものが揃っていた。彼らに感謝した。

 「お前は俺の大事な友達だ。助けなきゃ男じゃねぇ。礼なんて言うな。いいな。彼女を護れ。男なんだからな。そして護りきってから礼を言いに来い。俺たちもこれから抗争に入る。いいな、死ぬなよ。死なずに彼女を護れ。俺も死なねぇ。それにな、奴等の組織はちいせぇんだ。お前が彼女を護れば後は俺たちで全部ぶっ潰せるんだ。敵対組織ごとな。でな、終わったらまた一緒に飯を食おう」

 田代さんはそう言って去っていった。


 田代さんが帰った後、また電話が鳴った。

 「恭平だ」

 「どうしたんです? こんな時間に」

 「大変なことを小耳に挟んだものでね。いても立ってもいられず電話をしたというわけだ」

 「?」

 「君の友人、いや恋人と言ったほうが良いのか。 薫・リューリクさんのことだよ」

 「昨日、田代さんから聞きました」

 「なら、話は早いな。実行部隊が日本に入ったことは聞いたな? 奴等はただ雇われているだけだ。雇った連中は弱小組織で、一度失敗したら再起できないほどに吹っかけられたらしい。しかも全額前払いだそうだ。実は雇った連中とは私たちも敵対していてな」

 面白い。依頼されたミッションで百%のデポジットを要求する連中がいたなんて。僕と田代さんと恭平さんとの利害が一致しているなんて。

 「実行部隊の人数はわかりますか?」

 「五人だそうだ」

 「ありがとうございます」

 人数があらかじめわかっているだけでもありがたい。それにしても、恭平さんの情報網は凄い。

 「ただな、連中は君と違って実戦経験が豊富だ。君は私が止めても彼女を護ろうとするだろう? 十分に気をつけてくれ。友人を失いたくは無いのだ」

 とても嬉しかった。こんなに心配してくれるなんて。

 「ご忠告ありがとうございます」

 お礼を言った。

 「礼なんていい。言うんじゃない。彼女を護りきってから、そして私が日本に戻ったときに直接言いに来るんだ。いいな、絶対に死ぬんじゃないぞ」

 友人というのは同じ言葉を言うものなんだな。変なことに感心した。そして電話を切った。


 そしてグロックの手入れをし、いつでも撃てるように準備した。すぐに使えるようにするにはいくらハンドガンでも手間がかかる。そして短刀の持ち手を握りやすいように削り、持ち手が滑らないように靴紐を巻きつけた。いつどんな状況でもすぐに取り出せるように加工し、準備した。



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