忌まわしい記憶 #3
武器に関する描写と残酷な描写があります。ご注意を。
訓練が進んで、僕は・・・
訓練が進んで、また以前にやったプログラムをこなしていくようになった。前と違うのは、分隊ごとに役割を言い渡され、時には制圧する側、時には制圧される側に回されたことだ。
ジェームズはいつも言っていた。
「考えろ! 制圧する方もどうしたら確実に制圧できるのかを! 制圧される側はどうしたら逃げられるのかを、反撃できるのかを! 考え、行動しろ! そうしなければ死ぬぞ! 貴様ら死にたいのか! 考えろ! そして行動しろ! 貴様らが生き残るためにはそれしかないぞ!」
そして実弾と防弾ベスト、そして防弾用のヘルメットなどが支給され、僕らは血の気が引いた。抗議しに行った奴がいたが、ぶん殴られて帰ってきた。
僕は覚悟した。そして思った。教官の言うとおりにすれば死ななくて済むかも知れないと。その考えは、結果的に合っていた。
テロリスト制圧作戦のときに、最初の犠牲者が出た。
犠牲者の名前は、フランク・オブライエン。僕が撃ち殺した。制圧する側の僕が撃った弾は、運悪く彼の首に当たり、彼は即死した。
作戦自体は、彼を撃ち殺した時点で終了していた。僕は吐いた。目の前で人が死ぬのを見るのは初めてだった。そして、人を殺すのも。
ビルが優しく介抱してくれた。自分も最初はそうだったと、そのうち慣れると言いながら。でも、僕は慣れたくなかった。人を殺したくなかった。吐きながらそう考えていた。
僕は、ビルが言ったとおり、人を殺すのに、仲間を殺すのに慣れていった。それは悲しく、そしてつらいことだ。なぜ仲間を殺さなければならない? なぜ模擬弾じゃ駄目なんだ?
フランクを撃ち殺した日、何も喉に通らなかった。ボブとトーマスが無理やり口に食事を詰め込んで食べさせた。そしてまた吐いた。そうしているうちに、ジンマーマンが僕を呼んだ。
「ツクル。つらいのは解る。俺も最初はそうだった。でもな、戦場では誰かが死ぬ。お前は家族を護りたいと言ってここへ来たそうだな? 誰かを護るためには他人を殺す必要がでてくる。いつか必ず。そして、戦場では仲間を殺さなければならないこともあるんだ」
「でも、教官。ここは戦場じゃありません。フランクは僕の仲間です。友人なんです。なぜ、なぜ殺すまでやる必要があるのですか?」
ジンマーマンは優しく、そして悲しそうな目で言った。
「我々も殺したくはないんだよ。でもな、ジェームズの言うとおり、考えて行動することができなければ、たとえ戦場でなくても死ぬんだ。今回の件は不幸な事故としか言い様が無い。死にたくなければ、そして殺したくなければ考えろ。考えて行動するしかないんだ」
泣きながら頷くしかできなかった。今度口答えしたら殴り飛ばされそうだったから。
ジェームズはいつも言っていた。
「急所を狙え! 頭、心臓、他にもたくさん在るぞ! 躊躇うな! 容赦するな! 死にたくなければ俺の言うとおりにしろ!」
死にたくなかった。そして、彼の言うとおりに、躊躇わず、容赦せず、仲間を攻撃するようになった。
初めの頃、何回か吐いた。いつの間にか吐かなくなった。
僕らは四人で分隊を作っていて、分隊のメンバーは、ビルとトーマス、そしてボブ。
分隊長はビルだった。ビルが一番年長者で(他の二人と一つくらいしか違わなかったみたいだけれど)、一番経験があった。突入するとき(クリアリングと言うんだ)の先頭はいつも一番小柄な僕だった。まあ、順番は部屋とか階を変えるときにはいつも変わるのだけれど。
例えば、部屋が二つ並んでいたとする。一番目の部屋は僕が先頭でクリアリングする。二番目の部屋は僕が最後尾に回って、最初に僕の後ろにいた人間が先頭に立ってクリアリングするという具合だ。
時間が経つにつれて、仲間が減っていった。当然僕が殺した人間も含めて、死んだ人間が多かった。死者は全部で十二人。再起不能に近い重傷を負って去ったものが十三名。僕は五人を殺していた。最初のフランクを入れて。
テロリスト側にまわったときにも仲間を殺していた。制圧を排除してしまったんだ。僕らの分隊は防護服を着て、AK47を抱えていた。そして僕ら四人は、制圧順序を確認し、裏をかくことにした。
その作戦は、人質の救出を想定したミッションだった。ドアが一つ、窓が四つある部屋を割り当てられていた。人質役は人形だった。中にはテーブルが一つ、大きな食器棚が一つ。
食器棚でドアをふさぐことにした。侵入ルートを窓だけに絞り込んだ。そして中央に固まりそれぞれ窓の方を向いて伏せ、顔をあげないことにした。
通常の制圧パターンは、最初にスタン・グレネードを投げ込んで爆発と同時に侵入し、人質が自発的に伏せるのを期待しながら腰から上の方へ弾丸をばら撒いていく。
スタン・グレネードの強烈な光を顔ごと伏せておくことで避けることにし、強烈な爆発音をあらかじめ耳を塞いでおくことで減少させることにした。そして、最初から伏せておくことで弾に当たらないようにした。
僕が担当したのは長方形をした部屋の、片面の右側の窓だった。
結局、制圧側の分隊は、通常のマニュアル通りの方法で制圧にかかってきた。僕らは予想通りに彼らの裏を書くことに成功した。
その時、担当した窓から入ってきた仲間に冷静にAKの銃弾を浴びせ、マガジンを訓練どおりにすばやくチェンジして、さらに左の方にある窓(トーマスが担当だ)を破って入ってきた仲間を撃っていた。
あっという間に持っていたAKのマガジンは空になっていて、僕とトーマスの方に二人倒れていた。ボブとビルの方では一人が倒れていて、一人が脚と腕に銃弾を受けてホールド・アップしていた。
僕らの方に倒れていた二人は即死していた。最初に撃った一人は防護用のゴーグルが割れて弾丸が二発頭蓋を割っていた。次に撃ったもう一人は、防弾ジャケットの隙間から弾丸が三発入り、胸部を通って彼の肺や心臓をめちゃめちゃにしていた。弾道から考えると、僕が撃った弾だった。




