古傷
掲載日:2026/04/13
二階の自室へ上がろうとすると、とん、とん、と足音が聞こえた。
今は私一人のはずだが、と見上げると、四歳の女の子が踊り場に立っていた。
とん、とん。
すこし止まって、また、とん、とん。
一段一段おりてくるその子を見ていると、足を滑らせて頭から落ちてきた。
咄嗟に受け止める。幽霊にしては意外と重い。
その子の頭からは血が流れていた。私の頭からも流れていた。額の古傷が静かに開いたのだった。
幼い頃、この階段から転げ落ちたときにできた傷だった。
あのとき、家にはたしかに誰もいなかった。
私は誰に受け止められたのだろうか。
腕の中からの視線が強くなった。とっくに塞がったはずの傷がじわり痛んだ。




