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プロローグ

※パリッパリ同性愛を扱います!

ブロマンスではありますがBLのキラキラしさもありません。ノーマルな方閲覧注意!

 ゾンビものって言われたら、普通の人はどんなものを想像するだろう?

 荒廃した世界でのサバイバル? 銃を使ったゾンビや人間同士の激しい闘争? 世界の存亡をかけた正義vs悪の構図が描かれるってのも王道だと思う。

 けど、僕は断然ラブロマンスを推したいな。

 孤独や寂寥を埋めるために退廃的な関係性を築くのもいいし、家族愛を貫き通すのもいい。吊り橋効果じゃないけど、死と隣り合わせの緊張が常にあるからこそ理性で引かれたラインを不意に超えてしまうのが良いというか、抑圧された情愛が沸き立つ瞬間がたまらなく好きだったりするんだ。


 小旗悠(おばたゆう)、20歳──僕は同性愛者だ。


 加えて、老け専。


 20年生きてきて恋愛感情を抱いたことは何回かあって、覚えている限りだと全員が同性かつ後期高齢者だった。つまりは筋金入り。

 年齢差あるし、みんなノンケだしで嫌になるけど如何ともしがたく、そんなこんな灰色まっしぐらな青春を歩んできた僕にとり恋愛というものは憧れなわけで。

 同性間、異性間に関わりなく、日々創作物を読んで無聊を慰めている僕だけど、最近のマイブームといえばゾンビ映画だった。


「でも、羨ましいよなあ」


 観ていた動画を止めて、スマホをいじりながら独りごちた。

 別にゾンビに限らず、雪山での遭難なり無人島漂着なり、追い詰められた状況だったらなんでもいい。

 とにかく、自分がその立場だったらって考えるのが僕は大好きだった。


 というのも、


「ん?」


 画面をスワイプさせていると、不意に通知が鳴った。メールのようで差出人は、


「せいさん!?」


 ひとつ言っていなかったことがある。僕は絶賛片想い中でもある。

 相手はバイト先に時々来るお客さんで初見から惹かれていた人だった。

 78歳、見るからにノンケのおじいさん。

 向こうも親しみを覚えてくれたのか二回目の来店時に名刺を貰い、連絡くれたら嬉しいなと言われたため、お言葉に甘えてメル友に。

 以来数ヶ月、三日おきくらいではあるもののメールは途切れず、連絡が来るたびにキュン死しかける心臓に悪い日々を送っていた。

 

 この日もいつもと同じだった。送られてきた内容に返信し、僕はそのままベッドに入った。

 すでに零時を過ぎている。電気を消して仰向けに天井を眺めながら、僕が思い描いていたことといえば、やっぱり映画やなんかのキスシーンや濡れ場の情景と、あとは……。


「明日はもっと楽しくなるといいなあ」

 

 例えば、明日唐突にポストアポカリプスなんてことになったら。で、タイプなロマンスグレーと急接近しちゃうんだ。

 彼が銃を構えて僕を庇ってくれたり、避難所で背中合わせに眠ったり、焚き火を前に乱れたシャツの襟元から鎖骨がチラ見えしてたり、終盤でゾンビに噛まれた僕の腕を縛る手が震えてたり。

 もし世界が壊れたら同性愛だの年齢差だの、そんなものは全部どうでもよくなって一歩を踏み出せるかもしれない。


 その相手がさ、あの人だったら素敵かな。


「なんてね……寝よ寝よ」


 明日もバイトだ。寝坊なんてしたらたまらない。

 布団を耳元まで引き寄せて寝返りを打った。カーテン越しに入り込む月の光をぼんやりと見つめてから僕は目をつぶった。


 それが僕の日常だった。少なくとも、この日までは。

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