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第二話 一人の兵士として 一人の人間として

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さっきまで沢山の人が話していた場所は一気に静かになった。

空気はピリつくような、まるで化け物を見たかのような表情をしている人もいる。


開かれたドアから入ってきたのは白髪で華麗な女性だった。

服装はシワ一つもない薄灰色のコート、胸には沢山の勲章と思わしき物。

首の襟には階級が書かれていた。

まるでナチス・ドイツ時代の将官の格好だった。


見た感じだと彼女がテラ中将だろう。

そう予測していると彼女が俺を見つめてこちらにゆっくりと向かってきた。


「この子がハルトくんね?」

そうリンに尋ねると、答えた。

「ええ、そうです」

その時のリンの表情は緊張していたが、どこか慣れた感じだった。


「わかった、皆楽にしてくれ。治療や雑談を続けて構わない」

そうテラが答えると医者や看護師たちはそそくさと作業を始めたが、さっきまでの平和な空気は取り戻せなかった。


俺はリンに助けを求めるような表情で見つめてると、親指を上げて【グッドラッグ!】と言わんばかりの顔だった。


……こいつの表情のバリエーション多くてかわいいな。


「さて、ハルトくん。いきなりで悪いけど私の自室へ来てもらえる?」


「なぜ貴方のような高官がこの俺と……?」

そう話すとテラはニッコリと笑って答えた。


「貴方が必要だからです」

その瞬間隣で見ていたリンがテラに少し怒りながら話した。


「中将殿、申し訳ないのですが彼はまだ負傷しているのです。精神的にもパニック状態が見られておりますし、この子の身のためです。少し安静にさせてあげてください」


そう答えるとテラは不思議そうに俺の全身を確認した。

「あら?どこも怪我はないけど……精神も安定しているように見えますし」


「それでもです!我ら陸軍衛生部はいかなる理由があっても負傷した兵士は人道的に扱わなければならないのです!」

そう反論されるとテラは呆れた顔で答えた。

「そういえば今の陸軍衛生総監は彼でしたね……」


そんな俺は今何が起きているのかわからないが二人の困り顔や怒り顔がかわいいと思っていた。

……ここに来てから俺はそれしか思ってないな


「それはそうね。ローリア戦争時のときの負傷兵に関する策定が今ここで仇になるとはね……」


そしてテラは少し考えた後、リンに妥協案をだした。

「なら貴方もついてきて。それなら大丈夫でしょう?」


リンは少し悩んだが渋々承諾した。

「わかりました。では車椅子を持って連れていきますので中将殿は部屋で待っててください」

「はいはい、わかりましたー」

そうしてテラは自室へと向かっていった。


「はぁ・・・あの人は本当に困るお方ですね」

リンは苦労していた。


「な、なぁリン。一応あの人は中将だろ?なんでそんな強気に話せるんだ?」

そう答えるとリンは小声で答えた。

「実は私あの人の後輩っていうか昔からの付き合いがあるんですよ」

「それに私は一応大佐だからね?」


そう聞いた瞬間俺は驚いた。

「なんで大佐が現場で治療に携わってるの?!」

大佐という階級はそうそうに現場で治療などしない。

ましては組織の管理が仕事なのだ。


「そうだね……昔前線で衛生兵をしているときに大量の仲間が死んでいったの」

リンは近くにあった椅子を持ってきて語り始めた。


「それはもう酷かった。足がなかったり頭が半分なかったり」

「でもね、それでも生きてる人はいたの。だからその人達を絶対に生きて返したい、故郷に返してあげたい。そういう気持ちが沢山あって助けてたの」

「でもそんな時まだ階級もない私にその時の施設長、つまり中佐が言ってきたの」


俺はつばを飲み込み、真剣に話をきいた。


「まだ戦える負傷兵以外はすべて処分しろって」

その言葉を聞いた瞬間俺は戦争の残酷さを思い知った。


「悔しかった、無視してでも治療したかった。でも将校の命令に従わないと行けなかった」

「だから私は心を殺して助けを求めていた兵士を……この手で……」

リンは肩を震わせながら涙を流した。


「なんであんな奴が生きて、生きたいと願っている彼らが死んでいかなきゃいけないんだって物凄く思った!」

「そしてこんなことはもう起こしてはならないって誓った!」

「だから私は一生懸命に勉強して、昇格試験を受けて、ここまできた」


リンは涙を拭きながら俺に質問をした。

「今日始めてあったのにごめんね。でも貴方に聞きたい」



――私の正義って正しいのかな?


――この手は仲間を殺した手でもある。


――でも仲間を救った手でもある。


「私は悪魔かな……」


そのことを聞いた俺はリンを優しく抱きしめた。

「あっ……」


急な出来事にびっくりしたリンだが、優しく俺を抱き返してきた。

「お前はよく耐えた。やるべきことをやり遂げたんだ」


優しくリンの頭を撫でながら答えた。

「俺も正解はわからない。でも――」

「人を失った、この手で殺してしまった。でもそれは環境のせいであって君の責任じゃない」

「だから自分を責めないでくれ。君はその環境を変えるためにここまで来たんだろ?」


そういうとリンは頷いた。

「君は一人の兵士として、そして一人の人間として正しいことをした。だからこれからはその手でまた命を救っていこう」


こうして俺少しの間リンを慰めていた。

用語解説たーいむ!


--ナチス・ドイツ時代--

言わずもがな学校とかで勉強するあの国です。


--陸軍衛生部--

陸軍の所属する兵士すべての命や健康を守るために設置された組織。

治療だけではなくそれに使う物資や負傷兵の輸送、野戦病院の運営など様々なことも担当する。


そして重要なのが彼らは命を奪う存在ではなく

――兵士を一人でも多く生きて帰す存在である。


--陸軍衛生総監--

名前の通り陸軍の衛生や医療の最高責任者。

兵士の命に関わることすべてを総括する立場です。

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