カフェキュウビの日常4話20
「とりあえず、調べてみるか」
久遠はそう言って、将門塚の周囲を歩き始めた。
石碑の文字を確認し、地面の様子を見て、結界や呪符の痕跡がないかを探っているようだった。
「僕はミケを探してみます」
光太はそう告げて、周囲を見渡しながら走り出した。
しばらくして、息を切らして戻ってくる。
「……見つかりませんでした」
「こっちも特にめぼしいものはないね」
久遠は肩をすくめる。
「一度戻ろう。ここだけで判断できることは少なすぎる」
二人がカフェキュウビに戻ると、いつの間にかミケも店内に戻ってきていた。
カウンターのそばで丸くなり、何事もなかったかのように尻尾を揺らしている。
「どうじゃった?」
椿が尋ねる。
「ミケについて行ったら、将門塚でした」
光太が答える。
「将門塚か……」
椿は煙管をくゆらせ、少し考え込む。
「ふむ、それだけでは何とも言えんのう」
「将門といえば怨霊で有名だしね」
久遠が頷いた。
「もう少し調べてみるよ。歴史と絡んでる可能性もある」
「そうか。ならば、しばらくここに泊まるとよい」
椿はあっさりと言った。
「その方が動きやすかろう」
「じゃあ、お世話になろっかな」
久遠は気軽にそう返し、そのまま居候が決まった。
翌日。
光太は学校で、中島にこれまでの経緯を簡単に説明した。
中島は真剣な顔で聞き、何度も頷いていた。
昼休みになり、光太は購買でパンを買って屋上へ向かう。
ベンチに目を向けると、先客がいた。
「あ、光太もご飯?」
海だった。
「そうだよ」
「じゃあ、一緒に食べよ」
二人は並んでベンチに腰を下ろした。
春の風がフェンス越しに吹き抜け、校舎のざわめきが遠くに聞こえる。
しばらく無言でパンをかじっていると、海がふいに口を開いた。
「ねぇ、光太」
「ん?」
「光太って、好きな人いるの?」
「ゲホッ、ゲホッ!」
あまりに唐突な質問に、光太は飲んでいたジュースが器官に入ってしまった。
「だ、大丈夫?」
海は慌ててカバンからティッシュを取り出す。
「ど、どうしたの急に……」
光太は差し出されたティッシュを受け取り、口元を拭いながら動揺を隠せずにいた。




