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カフェキュウビの日常  作者: ころまる


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カフェキュウビの日常4話12

ファミレスのテーブルでは、ジュンと二郎の会話が絶えず続いていた。

キヌもそれに混じって笑っていたが、光太はなにか視線を感じた。

窓の外――そこに、海が立っていた。

彼女は驚いたように目を見開き、窓に手を当てている。

まるで「どうしてあなたがここに」と言いたげな表情だった。

光太は慌てて席を立ち、外に出た。

そして、事の経緯を説明して中に連れてきた。

「……そんなわけで、アキに頼まれて。ちょっと様子を見てただけなんだ」

海は腕を組み、冷ややかな目を光太たちに向けた。

「あんたら、何してんの?」

光太は苦笑いを浮かべ、もう一度説明する。

「だから、アキが“最近の海が変だ”って気にしてたんだ。

心配して……っていうか、その……」

「それで、尾行してたってわけ?」

海の声には呆れと怒りが混じっていた。

ジュンは口笛を吹いてごまかす。

その様子に海はさらに眉をひそめた。

そして――二郎を見る。

「あっ……」

何かを言いかけたが、途中で口をつぐむ。

その一瞬、海の瞳がわずかに揺れた。

それから5人で少しだけ話をした。

二郎が椿の知り合いだということ、

そして昔、妖怪絡みの仕事をしていたことを光太たちは知る。

話の最後に、ジュンが「せっかくだし」と言って全員で連絡先を交換した。

海は終始どこか落ち着かない様子だったが、それ以上は何も言わなかった。

自分が助けられたことを、どうしても言い出せなかったのだ。

夜、光太が家に帰ると、リビングの明かりがまだついていた。

母親がテーブルの上の書類を片付けながら言う。

「あんた、学校から連絡あったわよ」

光太は一瞬固まった。そろそろ連絡が来る頃かとは思っていた。

話を聞けば――

たまたまクラスメイトがカフェで働く光太を見かけ、

それを担任に報告したらしい。

体調が悪くないなら、登校しろ。という内容だった。



翌朝。

光太は久しぶりに制服の袖を通した。

生地の少し固い感触が懐かしい。鏡の中の自分を見て、

「……意外と悪くないな」

と呟いた。胸の奥がほんの少しだけ弾む。

別に学校が嫌いなわけではない。

むしろ「行かない理由」を探す方が難しいくらいだった。

久々の登校に緊張はあったが、

教室に入り、クラスメイトに「おお、光太じゃん!」と声をかけられると、

少しずつ肩の力が抜けていった。

「何してたんだよ?」

「バイトしてた」

そう答えると、「マジか!」と笑われた。

いくつかの視線を感じたが、それも午前中の授業が終わる頃には

いつもの空気に戻っていた。

――拍子抜けするほど、普通の日常。

光太はどこかほっとしつつも、少し物足りなさを感じていた。

昼休み。

「光太、飯行こうぜ」

明るい声で誘ってきたのは中島。

席が近く、昔からよく話しかけてくるクラスメイトだ。

二人は購買でパンを買い、屋上へ向かった。

春風が気持ちよく吹き抜ける中、

中島がパンをかじりながら言った。

「へぇ、妖怪なんているんだな」

光太は驚いて顔を上げた。

つい、正直に“カフェ・キュウビ”や椿の話をしてしまっていたのだ。

てっきり笑われると思っていたが、中島はあっさり信じた。

「信じるのか?」

「まぁな。実はさ、最近ちょっと妙なことがあって」

「妙なこと?」

「うん。妹が小学生なんだけどさ、その学校で“ウィジャボード”ってのが流行ってるんだ」

「ウィジャボード?」

「日本で言う“こっくりさん”みたいなもん。

紙とか板に“YES・NO”とか数字、アルファベットが書いてあって、

何人かで指を置いて質問すると、指が勝手に動いて答えを教えてくれるってやつ」

光太は思わず笑った。

「子供の遊びだろ、そういうの」

「だよな。普通はすぐ飽きるんだよ。

……でも、今回は違うらしい。

ある男の子がやると、ほぼ100%答えが返ってくるって話なんだ」

光太の背筋がぞくりとした。

「まさか……」

「妖怪って本当にいるんだろ?

だったら、そういう“何か”があってもおかしくないじゃん」

中島の言葉に、光太は黙り込んだ。

――確かに、椿やキヌ、権助たちの存在を知った今では、

“ただの噂”で片付けることもできない。

ファミレスでの出来事や、猫又、都牟刈のことが脳裏をよぎる。

そして、光太は悟った。

日常に戻ったと思ったのは、ただの束の間だったのだ。


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