表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空を翔ける者  作者: 翔柴
3/4

空より堕ちた希望

 塔の最深部、《空の心臓》にたどり着いたカイルを待っていたのは、異形の精霊だった。


 それは風とも火とも水とも違う。色を持たず、形を変え、ただ揺らぐだけの存在。


《名を問う》


 空間に響く声。カイルは真っ直ぐ立ち、名を告げた。


「カイル・ヴァン。……無属性の、ただの人間だ」


《汝は“空白の器”。選ばれぬ者。されど、選びうる者》


 精霊は、光となってカイルの体内に宿る。


 全身を走る激しい痛み。そして、その痛みの先にあったのは、風、火、水、土、雷、すべての属性の感覚だった。


「これが……精霊の力」


 導き手が静かに頷く。


「お前は“属性を持たぬ者”ではない。“すべてを受け入れる者”だ」



 塔を出たカイルは、廃都ルーメルへ向かう。

 そこには、かつて精霊信仰で栄え、そして神の民によって滅ぼされた民の記憶が眠っている。


 カイルはそこで、少女と出会う。名をリュミナ。白髪の魔術師。彼女もまた、神の民によって家族を奪われ、塔に魅せられた一人だった。


「あなた、無属性なの?」


「ああ。でも、今は違う。空の塔に選ばれた」


「……あなたが、希望だというのなら、私はあなたを守る」


 カイルとリュミナは、共に旅をすることになる。


 廃都の深部で二人は、神の民が設けた「封印の石碑」にたどり着く。それは、かつて精霊との契約を試みた“罪人”たちの記録だった。


 石碑は語る。


「属性なき者が、空の力を制したとき――神の支配は終焉する」


 それは、神の民が最も恐れていた存在。

 選ばれぬ者が、選ばれし者を超える未来。



 その夜、襲撃があった。

 神の民――「聖印官」を名乗る男が、光の剣を持って現れた。


「異端者カイル・ヴァン。神の名のもとに、お前を粛清する」


 戦いが始まる。聖印官は空を裂く雷を操り、リュミナを傷つける。


 カイルは怒り、立ち上がる。


「……もう、奪わせない!」


 全属性の力が、彼の中に渦巻く。

 その瞬間、聖印官の雷が封じられ、代わりに風と火が逆巻いた剣がカイルの手に現れる。


 それは、塔に選ばれた者の剣。名を――《ヴァル=エア》。


 剣が振るわれ、聖印官は敗北する。


「なぜ……選ばれぬ者が、ここまでの力を……!」


「それは、お前たちが見ようとしなかったからだ。空白は、可能性なんだ」


 聖印官は逃げ去り、二人は傷を癒しながら、次なる地へと向かう。


「世界は、思ってたよりも壊れてる」


「でも、あなたなら変えられる。私は、そう信じてる」


 夜空に光の塔が浮かび上がる。

 それは、カイルの力が世界に認識された証。


 希望は、いま、空より堕ちた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ