第8話 ダルマ
AIイラストを使って龍太郎や佳鈴達の挿絵を作ってみようとしましたが、AIイラスト難しい…。
先に動いたのはカマキリだった。
両手の鎌を振り上げて龍太郎を襲うが、龍太郎は半歩引いて鎌を躱し、床に突き刺さった鎌に刀を振るうが、刀は金属音と火花を発して弾かれた。
「硬いな」
カマキリが床から鎌を抜くと、今度は今までのカマキリがやってこなかった行動をみせた。
鎌を振るうスピードは同じではあるが、まるで知能があるかのように左右別々に鎌を連続で振るって龍太郎に襲い掛かる。
龍太郎はまるで見切っているように躱し、避け、刀で受けたり流したりしてカマキリの攻撃を捌く。
何度かカマキリの鎌を受け流した直後、今度は龍太郎が攻勢に入った!
横薙ぎの鎌をしゃがんで避けて、縦振りの鎌を今度は刀で流してまた床に突き刺さし、跳び上がって突き刺した鎌を思いっきり踏み付けて床に鎌を深く刺してカマキリの体勢を崩した。
そのままの勢いで龍太郎はカマキリの頭にある派手な触覚を唐竹割りで斬り、続けざまに逆袈裟斬りを複眼にお見舞いしたが、複眼には亀裂が入ったが触覚は毛のようなものがすこし剥げた程度だった。
怒り狂ったカマキリがさらに苛烈な攻撃を放って壁際にまで龍太郎を追い詰めたが、龍太郎は壁を切り裂いて来る鎌をしゃがんで避けるのと同時に、鎌の腹の部分を蹴り上げてまたカマキリの体勢を崩させた。
龍太郎は低姿勢になって、次はカマキリの腹と足の内側をすり抜けざまに斬りかかるが、やはり少し切り目が入った程度で硬かった。
「………………」
龍太郎は思案していた。
刀で斬ろうにも、目の前のカマキリはやたらと硬い。
しかも可動域である関節部分も刀の刃を通さない。
腹の部分も通常なら柔らかい所だがそこもダメ。
(大元だからかもしれんが、コイツたぶん今まで斬ってきた妖魔達の瘴気を取り込んで刀に耐性をつけたな…)
そう考えれば辻褄は合う。
そしてこのカマキリの倒し方も自ずと……。
龍太郎は刀を鞘に収める。
「え!?龍太郎!?」
私は龍太郎の行動に驚いたが、朱里さんは冷静に龍太郎が何をするかを黙って見ていた。
「スー、ハー」
龍太郎が深呼吸すると、カマキリが龍太郎を狩るべく勢い良く突っ込んで鎌を振るう。
だがその鎌は龍太郎を捕らえることは無かった。
ブチっ!
何かの音がした直後、カマキリの鎌が半分になっていた。
龍太郎の手には、カマキリの引き千切られた鎌が握られていた。
カマキリの甲殻に指が食い込む程に強く握られていて、それを捨てると今度は一瞬でカマキリの眼前まで飛び付き、触覚を二本引き抜いた。
「刀が通じないから、別の方法でってのがアレでしょうね」
朱里さんが私のために代弁してくれた。
「私の火で焼くのも手だけど、それだと佳鈴ちゃんにも危険が及ぶかもしれないから、龍太郎はあえてその選択をしなかった。で、ついでに怒ってるから、意趣返しでもあるんでしょうね」
「意趣返し?」
どういう意味なんだろ……?
「妖魔には残虐性があって、それを楽しんでから食べるのを愉悦としてるのよ」
「え…?」
「佳鈴ちゃん、貴女あの妖魔に襲われた時、何かを感じたでしょ?私が助けに入る前に、あの虫が笑ったように見えたって」
「!?」
「アレ、その通りなのよ。妖魔はどんな形をとっていても、基本的に残虐性が高い。子供が命の尊さを知らずに、虫の羽を千切って面白がるように、妖魔も人を弄ぶのよ。なおかつ、あなた達の幼馴染みがそのせいで命を失ってるって事も考えると、そりゃあぁなるでしょうね」
龍太郎に目を向けると、彼は鬼の形相をしながらスピードでカマキリを翻弄して、残りの鎌、足、広げた羽などを一つずつ引き千切っていく。
そして…………手足と羽、触覚にと、もはやダルマ状態にされて倒れたカマキリ。
それでも生命力の賜物なのか、カマキリはウネウネしながら、まるで『助けてくれ』と言っているように龍太郎を見る。
だが龍太郎はカマキリのそんな視線を無視して、引き千切った鎌をもう一度手にすると、カマキリの胸と腹を分断した。
そして再び刀を手にして、今度は内側に刃を入れるとアッサリと切れた。
お腹部分がウネウネしてて気持ち悪いけど、龍太郎構わずにお腹の中に手を突っ込んだ。
「返してもらうぞ」
そう言うと、龍太郎が手を引き戻して何かを取り出した。
「!!!」
お腹の中から引き出したのは、莉桜ちゃんの遺体だった。
「莉桜ちゃん!!」
まさかあのカマキリのお腹の中に居たなんて思いもしなかった。
思わず私は朱里さんの結界から飛び出してしまった。
「佳鈴ちゃん!ダメ!!」
飛び出した直後だった。
首だけしか動かせないカマキリが、せめてという思いで私に噛み付こうとした。
気付いた時にはもうカマキリの口が目の前だった。
だが、カマキリの牙が私に食い込むことは無かった。
「させるかよクソがっ」
通常のカマキリと違い、ニセハナマオウカマキリの頭の形は一本角のような形をしていた。
その一本角の部分を、龍太郎は莉桜ちゃんを抱えながらガッシリと掴んでいた。
メキメキと音を立てて龍太郎の指が食い込む。
「もうさっさと、黄泉に還れっ!」
龍太郎はカマキリの頭を捻り切った。