第82話 シャー・ペイ
引き続き、純也目線です。
「キュウン!キュウン!」
「わぁ!カワイイ!!」
「ミルクはさっきあげたから、ねんねだね!」
「あ、そろそろオシッコさせないと。シンちゃん、頼める?」
「ああ!ちょっと待ってて!」
「ねぇ!どうやって、おトイレするの?」
「ん?こうやってな…」
アレから1週間が過ぎた。
ワンコは、夏休みで体力のあり余ってる子供達にとっても、結構良い刺激になってるみたいだった。
宿題そっちのけでお世話する子もいれば、自由研究にワンコの成長記録をつける子もいて、ワンコはスクスク育っていった。
オルカも気になってる様子で、ワンコの側を離れないし、人が離れてる間にペロペロ舐めてた。
そして早いもんで、ワンコの目がもう開いて、子供達も大興奮。
興奮のあまり、俺からスマホを奪って写メをパシャパシャ撮りまくってるw
俺も世話をやりつつ、とりあえず龍太郎を1週間休ませて、その間、俺が出来る範囲で妖魔狩りをしていく。
増えてるのは相変わらず錆人だったけど、ホントになんでこんなに増えてんだよ……。
んで、ワンコの様子を見に来ていた筧のおっさんと鉢合わせた。
「よ、おっさんもワンコが気になるのか?」
軽口を叩きながら声を掛けると、おっさんはワンコの開いた目を見つめて、抱き上げると「病院に連れて行ってくる」って声掛けした。
なんかあったのか?
子供達も少し心配そうな表情をして、気になった俺はおっさんに着いて行くことにした。
ついでにオルカも着いてきた。
病院に着くと、いつもの医者が、ワンコの状態を診る。
どうやら犬種が分かったらしい。
「この子は、シャー・ペイって犬種ですね」
「やっぱりそうか」
筧のおっさんが納得した様子で、赤ちゃん犬の頭を優しく撫でる。
にしても、シャー・ペイ?
聞いたことのない犬種だな?
「シャー・ペイってのは、中国原産の犬だ」
「へぇ、中国の?」
「日本じゃまずお目にかかれない、珍しい犬種だ。昔、絶滅危惧種に指定されてた古代犬なんだよ」
フレンチブルドッグやパグ、ボストン・テリアにペキニーズと、顔にシワのある犬種はいるけど、シャー・ペイは特に、顔や身体のシワが多くて深い犬種らしい。
筧のおっさん、市役所勤めの時代に、生活保護の不正受給の現場に突撃した事があったんだと。
生活保護を受けながら、劣悪な環境で繁殖犬ブリーダーとして金を稼いでいて、そこから犬を保護した事があったらしい。
そん時に、シャー・ペイを見た事があったらしい。
「まさか、またこの犬種と縁が出来るなんてな」
ネットもスマホもない時代、保護した犬の世話をしながら里親探しに尽力して、その時にシャー・ペイの世話もした事があったらしいんだけど、筧のおっさんの表情は、少し陰りが差した。
シワのある犬種は、そのシワの中に自身の皮脂や老廃物、ホコリ等が溜まりやすくて、雑菌が繁殖しやすい。
そのせいで、皮膚炎を起こしやすい。
だから、定期的にシワの間を綺麗にしていく事が必須なんだと。
その知識を知らなかった筧のおっさんは、保護したシャー・ペイの酷い皮膚炎を発症しているのに心を痛めて、自宅で色々ケアをしたけど、その時の犬は助けられなかったと………。
だとしら、もしかしたらこのワンコは、その時の助けられなかった子の、生まれ変わりなのかもしれねぇな。
「あと、筧さんの見立て通り、この子に涙と目ヤニが溜まってきてました」
「そっか。なら、処置を頼めますか?」
「わかりましたよ」
? 目ヤニが溜まってた?
おっさん、もしかして目ヤニがあったから病院に連れてきたのか?
「シャー・ペイはな、目が開き始めた時に"眼瞼内反"の症状が出やすいんだ」
「エントロピオン?」
なんだ?そのロボットアニメに出てきそうな名前は?
「眼瞼内反ってのは、眼瞼の縁が、眼球の内側に巻き込まれて、まつ毛が眼に触れる状態の事だ。眼がゴロゴロしたり、涙があふれて止まらなくなったりしたりする。結膜炎になりかねないもんだから、早めにそうならないように、処置してもらおうと思ってな」
へぇ、初めて知った。
「人間でも、年を取ったらなりやすくなる症状だからな、最近俺も困ってるもんだからなw」
筧のおっさんも、少し目を擦りながら笑った。そういえば、筧のおっさんも、もうずいぶんと年だからなw
「お前、なんかすごい失礼なこと考えたか?」
「いや別にw」
こえ〜w
スッゲー勘の良さw
とりあえず、このワンコが病気がなんかじゃないってのは、子供たちに先に伝えたほうが良いな。
Rainで職員さん所に連絡を入れていると、処置を施されたワンコが戻って来た。
「キュウン」
可愛い声を上げていたけど、ワンコの瞼には、ホッチキスの様なものが刺さっていて、ちょっと痛々しく思ってしまう。
アイ・ダッキングっていう処置らしい。
「では、3週間後にまた来てください」
「わかりました」
帰ってきたワンコを受け取ると、オルカが心配そうにしてワンコに鼻先をくっつける。
「あ、オルカくん。この子、ホッチキスをしてるから、舐めちゃダメだよ?
もし舐めたりしたら、ホッチキスが外れたり、病気を誘発させてしまうかもしれないからね?」
「だってさ、オルカ?」
「ク〜ン……」
メッチャ寂しそうにするな。
まぁ、ホッチキスが取れる3週間までの我慢だ。
頭の良いオルカなら、大丈夫だろ。
俺達はワンコを連れて、車で筧の家まで戻ると、子供たちがこぞって押しかけてきて、ワンコは少しビックリした様子だった。
んで、3週間はホッチキスをする事を話すと、「がんばれ!」ってワンコに声を掛けて、またいつものようにお世話をし始めた。
ホントに、コイツ等は良い子だなぁ。
親バカ(?)を発動しながら、俺もワンコの世話を手伝いながら今日は終わった。
あ、ちなみにワンコの名前は、帰ったら何故か「ジゲン」になってたw
なんでル◯ンじゃなかったんだろなw
私の実家で飼ってたワンコの名前がジゲンだったので、ジゲンと命名しましたw
では、今回は以上です∠(`・ω・´)




