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人外討魔伝記  作者: 一ノ瀬カイヒロ
第三章 穢れた胎の叫び
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第72話 家族写真

お疲れ様ですよ〜∠(`・ω・´)


引き続き、この回は龍太郎目線です。

羅刹紅蓮らせくぐれんの紅い炎が天へと立ち昇り、雲に穴を空けながら殺戮の木(キリング・ツリー)を焼き払う。


木のみきがボロボロと崩れ落ち、中に閉じ込められていた亡者達の魂が解き放たれて、ホタルのように飛んでいく。

純也じゅんやが足止めしてくれていた亡者達も、ガワめくれて囚われていた魂が出ていき、またホタルのように飛ぶ。


ポル・ポトを焼き尽くした俺は着地すると、一気に疲れがドッと出て来て、グラウンドに大の字で寝転がってしまう。



「よ、お疲れさん!」

「あぁ……」



純也じゅんやからのねぎらいの言葉も生返事。


疲っかれた……………。



「にしても龍太郎りょうたろう! オマエなんだよあの炎!? あんな力いつの間に手に入れたんだよ〜?」



羅刹紅蓮らせくぐれんの炎は、使えば強力だが、使う場面が限られそうだな。下手したら関係無い人間まで巻き込んじまう。



「スゴかったなアレ!! なんつーかさ、まさに鬼って感じのもんだったよな〜!」



それに使えば今みたいにドッと疲れが襲う。


いくら()()()()()()()とはいえ、無闇矢鱈むやみやたらに使うのは避けた方が良さそうだが………()()()()()()()


………なんで、この炎が俺にとって馴染みのある力なんだ…………?


この炎の名前も、使い方も、今まで何百回と使ってきた感覚すらある。


いったいどうして………?



「なぁなぁ、使ってみてどんな感じだったんだよ〜? ちょっとくらい教えてくれても……」



ブチっ





ゴッッッ!!!(足払いですねを蹴るの音)



「おフッッッ!!?」



ボゴォッ!!!(鳩尾みぞおちに蹴りがクリーンヒットした音)



「ゴヘェッッ!!?」



ズザザーーーーッ!(純也じゅんやがグラウンドでる音)




「うるせぇ、蹴るぞ?」

「もう蹴ってるだろ!?」



たいした事ないだろこんなもん。


ハァ、考えてた事がコイツのおかげで吹っ飛んじまった。


疲れた体に(むち)打って身体を起こし、立ち上がって佳鈴(かりん)達が逃げた方向に向かおうとした。だが、


「ん?」


視界のすみに、亡者達の魂とは違う何かが写った。


なんだ?っと思って手を伸ばして掴んでみると、それは写真だった。

かなり古いモノクロの写真で、そこに写っていたのは1人の男を中心に、大人の女性が2人と、たぶん娘なんだろうか? 小さな女の子が写っていた。


調子に乗ってた純也じゅんやがヒョコッと顔を出して、持ってた写真を覗いてくる。


「ん?龍太郎りょうたろう、なにそれ?」

「知らねぇ写真だ。なんか降ってきた。オマエ知らねぇか?」

「んにゃ知らね。でも結構古い写真だよな? なんか教科書の写真みたいな?」


なんだってこんなもんが……?


とりあえず、朱里(しゅり)辺りが知ってそうだから、佳鈴かりんの所に向かおう。


そう思って写真をポケットに仕舞おうとした時だった。



龍太郎りょうたろうーー!」



学校の校門から朱里しゅりが飛び出してきて、こっちにやって来た。後ろから佳鈴かりんに肩を貸してもらいながら、セツの奴もこっちに歩いて来た。


「お!朱里しゅりちゃーん! コッチコッチ〜!」


朱里しゅりの声が聞こえて純也じゅんやの奴は、両手と一緒に尻尾もブンブン振ってる。朱里しゅりもノリ良く純也じゅんやとハイタッチして、互いの無事を確認し合った。


俺は佳鈴かりんの所に駆け寄って、怪我けがをしていないか確認しに行く。



佳鈴かりん、無事か?」

龍太郎りょうたろう………」

「……どうした?」



佳鈴かりん、なんか様子がおかしいな。

何かあったか?


疑問に思ったが、佳鈴かりんに肩を貸してもらっているセツの方に目を向ける。

右足首を引きりながらどうにかここまで来たって感じなんだが、顔色があまり良くないみたいだった。


大分だいぶやられたか?」

「いや、ちょっと開放骨折しただけだ」

「重傷じゃねぇか」


なんだよちょっと開放骨折しただけって……。


「しかも脳出血までしてたのよ彼女」

「瀕死の重傷だろそれ」


朱里しゅりが補足して、思った以上の怪我だった事に内心驚いた。

どんだけ強えんだ、あのフレネってヤツは………。


「よく生き残れたな?」

「奴の右腕1本は奪ったが、すぐに再生するだろうな。戦果としては、たいしたもんは出してない」


それでも、生き残れた事に安堵あんどすべきだ。

俺も、思ってた以上に血を流しちまったからな。


「そういえば、お前コレに見覚えなんかあるか?」


俺はポケットに入れてた、あの写真をセツに見せた。彼女はソレを受け取ると、ジッと見て、思い出したようにこの写真の事を話した。


「コレは、ポル・ポトとその家族写真だな」

「ポル・ポトの?」

「おそらくだが、コレがF,Eの言ってた、反魂はんごんの術の媒介ばいかいとなったものだ」


この写真が?


こんなもんで、あんなバケモン呼び出したってのかよ……。

生前のポル・ポトと、女性2人にその娘。

全員笑顔で笑っているその写真は、それだけを見れば普通に微笑ましい写真なんだが………。


奴の所業しょぎょうを、亡者達から半強制的に視せられた身としてみれば、コレが特級呪物に見えてしまう。


「生前のポル・ポトは、国民に対しては『家族の絆』を徹底的に否定して、自身は私生活で家族を可愛がるという二面性を持ってたらしい」


セツいわく、ポル・ポトにとっての「家族」は、「自分自身の家族」は愛でる対象であったが、「他人の家族」は革命の邪魔になる不要な概念がいねんとして、破壊の対象であったと言えるらしい。


他人の家族の絆を平然と引き裂く呪いを持つ一方で、自らの大切なものを守るためなら何でもする、という矛盾を持つポル・ポト。


奴の死後、残された家族は、人口の1/4もの国民を殺した事実を差し引いても、「父のしたことは間違いじゃない」と語り、奴を愛していた事がうかがえたらしい。


「………残された家族さん達は、どうなったんですか?」


佳鈴かりんおそおそる聞いてきた。大抵たいていの場合、独裁者とその親族は諸共処刑されてきた歴史がある。


だが、ポル・ポトの家族は皆、現在はカンボジアの発展に全力を尽くしつつ、幸せに暮らしているらしい。


それを聞いて佳鈴かりんは、どこかホッとした様子で胸をなで下ろした。


これ以上、血で血を洗う話は聞きたくなかったんだろうな。


「………さて、もうちょっと仕事をするか」


俺は振り返って、殺戮の木(キリング・ツリー)から解放された亡者達の魂を見据みすえた。


いつまでもここに留まらせて置く訳にはいかないからな。



朱里しゅり、やるぞ」

「オーケー!」



いつの間にか、純也じゅんやと合体解除していた秋田犬のオルカの頭の上で、犬吸いしてた朱里しゅりが元気良く返事して、俺の肩に止まった。


俺は刀を抜いて、殺戮の木(キリング・ツリー)の生えていた場所に向かって、五芒星(セーマン)を刀で刻む。

そして刀をグラウンドに突き刺せば、俺を中心に地面に五芒星(セーマン)が浮かび上がり、霊力を放出して場の空気が変わる。


「国が違うからアレだけど、そこは我慢してね?」


肩の上で朱里しゅりが手印を刻み、俺が放出した霊力を使って浄化を開始する。




くるしみのはなれ、やすらぎのみちみちびかん


陰陽おんみょうことわりにより、おだやかなる来世らいせねが


亡魂ぼうこんたちよ、ひかりはしわた


うらみもうらみも、かぜらしきよめん


清浄せいじょうちて、こころやすらげん


極楽ごくらくきしへ、やさしくまねかん


永遠えいえん平和へいわを、たましいさずけん


くらやみてららし、あたたかなるひかりとなれ


犠牲ぎせいいたみよ、いやされえゆけ


安寧あんねいそのにて、いこいを


輪廻りんねくさりき、自由じゆうとなれ


慈悲じひあめりて、たましいうるおせん


おだやかなるねむりへ、やさしくみちびかん


過去かこごうきよめ、あらたなせいねが


光輝こうき彼方かなたへ、たましい


くるしみく、よろこちたる


陰陽おんみょうちからもて、永遠えいえんやすらぎを


亡者もうじゃたちよ、おそれずすす


やさしき来世らいせが、きみらを


浄土じょうどはなき、たましいつつまん


安寧あんねいかぜきて、こころいやせん


急急如律令きゅうきゅうにょりりょう、このねが成就じょうじゅせよ


たましい永遠えいえんに、やすらげよ、おだやかに」




唱え終わると、五芒星(セーマン)の形をした光が天を突き抜け、亡者達の魂がそこに吸い寄せられるように昇っていく。

ここはフレネの野郎が、学校を中心に霊脈から強力な霊磁場れいじばを発生させて作り出した。なら、その霊磁場れいじばを利用させてもらう。


霊磁場れいじばがあれば、成仏させるのに無駄な手順を踏まずに済む。


亡者達の魂は、穏やかな気持ちで天へと昇っていった。



「これで、少しは報われるといいが……」



つい心に思った事が漏れた。

今度は、平穏で長生き出来る人生を歩んでくれ。


そう思いながら、俺は刀をおさめてから手を合わせた。



毛沢東に影響を受けて、ポル・ポトのように国民に地獄を見せた国は他にもあります。


ナイジェリア、ペルー、モンゴルなどです。


今回ポル・ポトを選んだのは、犠牲になった人達の数がケタ違いに多かったからです。


この歴史は、決して忘れてはなりません。

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