第71話 葬火
3つ目!
さあ、クライマックスだ!!
2年前
俺は妖魔狩りをしながら、ある場所で道満のおっさんに実戦形式の稽古を付けられている時、おっさんは一つ俺に陰陽術を教え込まれた。
『よし、お前にはコレを覚えて貰うで!』
『唐突だな』
『そろそろお前も戦術の幅を広げた方がええやろ?
いつまでも剣術ばっかやってたら、折角の鬼の力が腐ってまうで』
『その剣術稽古でクッタクタの時やらせるのかよ……?』
3つもの流派の剣術稽古の、大の字に倒れてる俺にまだ何かやらされようとしていた……。
子供の頃は竹刀で。
小学生5年生の時には木刀でボッコボコにされて、中学生になったら真剣でガチの斬り合い……死合稽古になっていた……。
いくら鬼でも、剣術の達人3人相手はやり過ぎだ。
『こういう時だからこそやるんやないかw
ほれ、根性見せろや根性!』
………一度言い出したら聞かねぇからなぁ。
ってか、既に死んでる達人を3人、反魂の術で蘇らせて、その上10時間もブッ通しで俺に稽古つけさせておいて何でこのおっさん疲れてねぇんだ……。
『んなもん、俺とお前とじゃ年季が違うんや。
年の功やで、年の功w』
自分で言うな。
俺は、疲れて少しフラフラしながら立ち上がって、道満のおっさんに一礼する。
『よし、ほなやろか』
道満のおっさんが呪符を取り出して、息を吹きかけて呪符を投げると、おっさんの式神…………式神なのか……………?
日曜日の朝にやってる美少女戦士系のアニメキャラを生み出してやがる………。
『………毎度毎度思うけど、何でソレをアンタの式神にしてんだよ』
『そないなこと言うなや?
かわえぇやろ?萌えるやろ!?』
…………ハァ、おっさんの美少女趣味は今に始まったことじゃねえけど、せめて稽古の時くらい、今着てるその痛シャツ着るの止めろよ。
稽古の内容が全然頭に入って来ねぇ……。
『ええか、この術はな、己の霊力をぎょうさん形代に込めて、その込めた霊力で擬似的な魂みたいなもんを作り込む術や。
身代わりに使うてもええけど、コイツが真価を発揮するんは戦闘中やと俺は思ぉとる。
ギリギリにまで敵の攻撃を引き付けて、向こうが勝ったって思わせる戦い方をして相手の油断を誘う。
せやからまずは、式神達と戦って、術を使うタイミングを掴んでもらうで?』
式神が構えを取ってきて、俺も中段の構えを取る。
そしていざ稽古が始まると、アニメの中で強力な力を振るうキャラクターよろしく、凄まじい攻撃力とスピード、そして連携攻撃を仕掛けてきて、なんか俺が敵役の怪人の様な気がしてくる。
『この術が発動すれば、己の霊力によって作られた擬似的な魂が破壊されて身代わりになるついでに、副次効果で使用者の存在を、一時的に極端に薄くさせる。
つまり、敵に己を見失わせて、自分を殺したって思い込ませる事ができるんや』
それが、俺がポル・ポトに対して行なった陰陽術。
「陰陽道 凭代の替魂」
身代わりになった呪符を貫いた農具の上にゆっくりと降り立つ。
ポル・ポトは信じられないような顔をして、口をパクパクさせている。
敵を前にして呆けてる場合か?
俺は身代わりから農具を一つ適当に引っこ抜いて、一目散にポル・ポトの喉に目掛けて農具を突き刺す!
引っこ抜いたのはガーデンフォークか。見事に喉笛に突き刺さり、殺戮の木にも深々と突き刺さる。傷を抉ってから、俺は次々に農具をポル・ポトにブッ刺していく。
四肢全てを農具で固定して、胴体は背骨を貫通させて動けなくしていく。
こうしたのには理由があった。
コイツは、ポル・ポトは1人の魂で呼び戻された存在じゃない。
「お前は…」
固定した四肢に絡みついた殺戮の木の蔓を斬り払っていくと、コイツが俺達敵にバレたくなかった秘密が明らかになった。
「お前達は、5人で1人の存在なんだ」
殺戮の木を近くで見て、そしてその木に自ら縛られに行った奴を近くで見て初めて気付いた。
絡みついた蔓の下から、農具が取り払われたそこからは、四肢の各所、右肩と左手の甲、左胸に左太腿、右足首から下から逆さ十字が、計5つも刻まれた!
5つ逆さ十字の一つ、左胸の逆さ十字はおそらくポル・ポト本人のもの。
そして他の四肢に刻まれた逆さ十字は、ポル・ポトに心酔した4人の側近だった。
ヌオン・チア
ポル・ポト政権の「ナンバー2」と見なされ、党の最高幹部会議長を務めた。
クメール・ルージュの主要な冷徹な観念論者であり、人道に対する罪とジェノサイドで終身刑判決を受けた人物。
キュー・サンファン
政権の国家幹部会議長、国家元首に相当する地位を務め、奴もまた人道に対する罪とジェノサイドで終身刑判決を受けた。
カン・ケ・イウ
通称「ドゥク」または「ドッチ」。
悪名高いトゥール・スレン政治犯収容所の所長。
奴は収容所における残虐行為の直接的な責任者で、戦争犯罪と人道に対する罪で終身刑判決が確定。
イエン・サリ
副首相兼外務大臣を務め、政権の外交面を担った人物が。
拘留中に病死したから判決は下されなかったが、コイツもまたクメール・ルージュの為に活動し、直接的にジェノサイドに加担しなかったものの、その支援をした。
どいつもこいつもロクでもない奴等を蘇らせやがって…………。
俺はポル・ポトの頭上に跳び上がって、殺戮の木の幹に飛び移る。ここからなら、俺とポル・ポトは一直線上。
幹を蹴って、垂直にポル・ポトに迫る!!
「人外滅討術」
腰に差した刀を鞘ごと抜いて左手に持ち、奴等の逆さ十字を破壊する為に鬼の力を込め、俺の脚力と垂直落下の勢いで、擦れ違いざまに刀を抜く!!
「逆手居合 双界断ち」
奴等の逆さ十字全てを斬り、着地と同時に刀を鞘に納めると、ポル・ポトが潰された声帯を無理やり震わせて悲鳴を上げる。その悲鳴は5重に重なり、他の側近達の声も混じって木霊する。
殺戮の木にも異変が起こり、幹の犠牲者達の顔が苦しみだし、俺が斬ってきた枝葉から赤い血が動脈を切ったかのように噴き出し、生えていた農具がボトボト落ちていく。
純也が足止めしていた亡者達も一斉に苦しみだし、救いを求めるように純也の所に這い寄ろうとする。
「やったか、龍太郎!」
まだこれからだ。
ポル・ポトの力が著しく弱っていくのが顕著に表れて、俺はもう一度ポル・ポトの前まで跳び上がって、トドメを刺しに行く!!
『ッッッ!!』
「これで最後だ」
既に刀を抜いていた俺が目の前に現れて、ポル・ポトの顔が怯えと屈辱的な表情をした。
これだけの犠牲者を出しといて何でそんな表情をしてんだ………?
コイツの死には諸説あるが、奴は死ぬ半年前、唯一インタビューを受けた事がある。
ネイト・セイヤーというアメリカのフリーランス・ジャーナリストが、ファー・イースタン・エコノミック・レビューという媒体で、ポル・ポトの最後の言葉をこう綴った。
『私の良心は潔白だ』
自身の政策によって何百万人もの命が失われたことに対し、反省の弁を述べることは無かった。
「テメェがそんな顔をする資格はねぇんだよ」
俺は鬼だ。
だから、お前を苛責する!!!
刀が、ポル・ポトの心臓を深々と貫き、殺戮の木の幹にも届いた!
「羅刹紅蓮 葬火!!」
建物やグラウンドは現実世界とリンクしている。壊せばここで部活している他の生徒達に被害が及ぶ。
この炎の力は強大だ。下手に使えない。
なら、内側ならどうだ?
ポル・ポトの体内を、殺戮の木の中ごと羅刹紅蓮の炎で燃やし尽くしてやる!!!
『ーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!』
「があああぁぁぁぁーーーーーーーーーっっ!!!」
ポル・ポトが苦悶の悲鳴を上げる。
俺が斬った傷、目や口鼻、耳の穴から、俺の羅刹紅蓮の炎が漏れ出る!
殺戮の木にも羅刹紅蓮の炎が燃え移り、木に囚われいる亡者達も激しい苦悶の声を上げ、枝葉が暴れ回る。
俺にもその枝葉に打たれ、コメカミから血が流れ、ポル・ポトが最後の抵抗で、枝葉から農具を生み出して、俺に向かって振り上げる!!
だが、ソレが俺に届く事が無かった。
シパンッッッ!!
『!?』
純也の鞭が、ポル・ポトの最後の抵抗を邪魔する。
「邪魔させねぇよ!」
ウインクしてポル・ポトを挑発するようにキメ顔を決める純也に、ポル・ポトは怒髪天を突くような表情になるが、目の前の、俺の紅く光る眼が視界に入って恐怖する。
何でそんな顔をする……?
私は、何も間違えてない!!
まるでそんな風に言ってるような顔をするポル・ポト。
「お前は間違えたんだ」
『ッッッ!!』
「だから蘇らされた」
でなきゃお前はここに居ない。
何も悪くないなら、ここまで亡者を抱えたりはしない!
罪から逃げたその罪過は、死んでも付きまとう!
だからいい加減に、その責任を果たせっ!!
「黄泉に還れッ!!
羅刹紅蓮ッッ!!!」
火力を一気に上げ、さらにポル・ポトから炎が吹き漏れる。
殺戮の木の枝葉が、幹がボロボロと崩れ落ち、ポル・ポトの身体も形を保てずにボロボロと崩れ落ちていく。
限界を迎えた奴は悲鳴を上げながら、ついに塵も灰も残さずに燃え尽きた。
ポル・ポト、討伐完了!
では、今回は以上です。
良いクリスマスをお過ごし下さいね∠(`・ω・´)




