第69話 剣術
お疲れ様ですよ〜∠(`・ω・´)
それでは、ここは龍太郎視点で書いていきます!
~龍太郎Side~
ポル・ポトによって生み出された犠牲者達が涙を流して、嘆きと悲鳴を上げながら俺達に大挙として押し寄せてくる!
何もしなければコッチがやられてしまうが、どいつもこいつも心情的に斬りにくい。
農具で殺されてるせいか、亡者達の身体に死因となった致命傷がハッキリ分かる。こんな事で、また同じような死に方をさせなければいけないと思うとキツい。
そして亡者達を斬る度に、コイツ等の思念が頭の中に入ってくる。
なんでこんな事に……。
たすけてパパ……
俺が何をしたってんだ!?
どうして……
もうこんな事したくない!!
痛いーー!!熱いーーー!!!
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
もうやめてくれーーーーーーー!!!
ウボエェェェェ…
もう許して……神様ぁ…………
拷問を受けた者、その拷問を行なった者。
そして殺戮の森で死んでいった者や、殺した者達の懺悔と嗚咽。
その思念が、ポル・ポトの歌っている革命歌によって、より思念の強さが増幅されて、俺は心が疲弊していく。
何食って何考えれば、こんな惨いことが出来るんだよ…。
校庭のど真ん中に『殺戮の森』の木を生やして、その中の1本の木にポル・ポトは自らツタで縛られて、その状態から次々と犠牲者や部下の亡者達を生み出し続けている。
殺戮の森って比喩表現じゃなかったのかよ!?
そう呼ばれたのは、旧日本軍がフィリピン戦線……特にルソン島で1944年末~1945年にかけて行った、民間人・捕虜に対する組織的・無差別的大量殺害を、戦後GHQが付けた呼称だった。
授業で習った時は「太平洋戦争末期の日本軍による民間人殺害」として、注釈レベルで触れる程度だった。
その後予習復習で検索かけて、たまたまポル・ポトの事も見た程度だったのを今思い出したけど、まさかここまで酷いもんだったとは想像もつかなかった。
ホントに……妖魔が絡むとロクな事にならねぇ。
とはいえ、このままだとジリ貧だ。
幸い生み出される亡者達はそれ程強く無いが、やはり数が問題だ。俺達が亡者達を倒していっても、ポル・ポトから生み出される亡者達の方が速い。
本丸のポル・ポトを叩くには、この生み出され続けてる亡者達をかい潜るしかない。
俺と純也は互いに目配せをする。
純也の顔が笑い、俺に笑顔を向けてくる。
「なんだよ?」
「いや、いつもならお前の動きに合わせるのに、こうやって頼ってくれるのは嬉しいもんだな」
「本当なら俺一人でもやれなくはない」
「そうだなw でも、頼ってくれることが嬉しいんだよ。オマエ普段から抱え込み過ぎてるしな」
………ホントに、コイツはよく見てるよ。
筧の家で子供達の年長者だからなのか、それとも地頭の良さからなのか知らねぇが、コイツの観察眼は本当にバカに出来ない。分かってても聞いてこない事も、俺にとってはありがたいことだが、今は頼らせてもらうぞ。
俺は抜いていた刀を鞘に収めて、片手を柄に軽く添える。
「お、ソレでいくのか?」
「奴を斬れば、それで終わるはずだからな」
俺は人外滅討術を扱う際に、幾つかの剣術を子供の頃に叩き込まれた。
子供相手に木刀でどれだけ殴られて技を叩き込まれたことか………だが、そのお陰で動きは身に染み付いた。
俺と純也は互い反対方向へと駆け出す!
俺はポル・ポトの方へ、純也は俺の後ろから襲おうとする亡者達の方へ。
「近寄らせねぇぜ!!」
鞭を振るって、亡者達を弾き飛ばす。
が、やはり数が多い。
弾き飛ばされた亡者達を踏みつけて、新たな亡者達が俺の方へと駆け出すが、純也のアホみたいなスピードの乗った鞭の打撃が、亡者達を次々と吹っ飛ばしていく。
そしてある程度敵を減らすと、今度は敵陣の中に突撃して行き、敵だらけの中で急停止。
鞭を地面すれすれに超高速で連続水平回転させ、攻撃範囲内の全ての敵の足首・脛・膝の肉を同時に打ち抉った!!
「串刺の車輪!!」
下半身をやられた亡者達は泣き叫びながら、尚も純也に襲い掛かろうとするが、腕の力だけで純也相手に追い付くことが出来ずに、しかし倒された訳じゃないからポル・ポトからまた生み出されることも無い。
ただ、生前に受けたような痛みに再び晒されて、亡者達は純也に怨みのこもった視線を向けた。
「悪ぃな、コレはオマエ達を救う為の仕方ないことなんだよ……」
亡者達を救うにも、救われたい思いで動いている亡者達に邪魔されるわけにはいかない。
亡者にはそこまで考える余裕もないからな。
後ろで純也が足止めしている間、俺は前を見据えて走る。
ポル・ポトから生み出された亡者達が、農具を手に取って襲い掛かってくる。
四方八方を囲んで農具を振るってくるが、俺は亡者達達の攻撃を一つ一つ引き付けて、見切り、躱していく。
腰少し落として亡者達の攻撃が頭を掠めると同時に、亡者の影の方向にスライドして走り抜け、次の亡者がクワを振るってくる。
同じ様に引き付けて見切り、膝を大きく曲げて腰を地面スレスレにまで低くして地を蹴り、亡者の真横をすり抜ける。
剣術を習得するには、まず最初に叩き込まれるのが歩法。人が築き上げた剣術には独自の歩法がある。
この剣術は、人相手ならたった30Cmズレるだけで見失わせ、気付けば背後に回られて命脈を絶たれるもの。
立身流
創設者の立身 三京によって作られ、送り足や継ぎ足、抜き足を多用して編み出され、人間の体の構造と運動の法則を極限まで突き詰めた理詰めの武術。
人間でこの武術を極めた者は指で数える程度しかいないが、鬼の俺なら人間以上の真価を発揮する。
だが、俺はまだまだ未熟。
せめてあの酒カスババァに切り傷の一つでも着けれねぇと、おそらくあのクソ野郎とは渡り合えない。
こんな奴に苦戦してるようじゃダメなんだが……邪魔だ!!
「人外滅討術」
大多数で迫りくる亡者達の一番先頭を走ってくるや奴に狙いを定めて、立ち止まる。
相手が踏み込んでくるのと同時に、膝をわずかに曲げる。その微沈みの反動だけで、右腰を後ろに引いて刀を抜く。
抜いた刀は刃を真下に向けたまま、地面スレスレの位置を完全に水平に、音もなく真横に滑らせる。
軌道は相手の両足アキレス腱の丁度を通る。
相手は「何か冷たいものが足を掠めた」と思って次の歩を踏み出そうとする。
ズルっ
両アキレス腱が同時に切断され、膝から前のめりに崩れ落ちる。
抜刀音すらほぼしない。納刀音すらも無い。
相手は自分が斬られたことに1〜2秒気付かなかった。
純也ほどのスピードは無いが、俺の持てる最高速度で斬り抜く!!
「居合・伏せ落とし」
そして次に紅い眼を向けて
「繋ぎ」
次々と亡者達のアキレス腱を斬っていく。
亡者達は次々にバランスを崩して倒れていき、俺は亡者の防衛線を突破!
ついにポル・ポトに接近した!!
「黄泉に還れ外道!!」
過去にあるまじき所業をして、罪も償わず死んで、黄泉がえりされたとはいえ殺していった人間まで巻き込んで………俺はコイツを、ポル・ポトを妖魔だと認識を改めて刀を振るおうとする。
だが、
「っ!!?」
もう数メートル、懐に入れば斬れる距離だった。
けど、奴が自ら縛られにいった木を間近で見て、俺は足を止めてしまった。
(コレは………!!)
生えてきた木。
それは、パルミラヤシと呼ばれるカンボジアを代表する木だった。
カンボジアの国章にも描かれていて、田舎の風景といえば、というほどに身近な木。
葉は家の屋根材、幹は建築材、果実や樹液は砂糖やヤシ酒の原料として生活に欠かせないもの。
カンボジア人が「我々の木」と言えば99%これを指すだろう。
そんな木の皮が人の顔で形成されていた。枝は細かく枝分かれした黒く変色した人骨で形成され、葉は緑色の人肉で血液を巡らせて普通の樹木に偽装していた。
そして納得がいった。
ポル・ポトがどうして自らをこの木に縛り上げたのかを。
クメール・ルージュ時代、奴は多くの犠牲者をパルミラヤシの木に吊るして殺して、その血を吸わせて、肉や骨を肥やしにした。
ポル・ポトの死後、政権崩壊から数十年経った現在、殺戮の森の木々は伐採されることなく、むしろ歴史を記憶するためのモニュメントとして、また平和を願う象徴としてその姿をとどめているが、この木はポル・ポトが殺した犠牲者達の呪詛が莫大な程に込められている。
ポル・ポトと因縁深いこの木は、奴の体を介して亡者を生み出し続けていることから、ポル・ポトは死後、この木の呪詛によって魂を縛られていると考えられる。
つまりこの木自体も、ポル・ポトの本体だったんだ!!
「っ!!!」
足を止めたのはマズかった。
殺戮の木の枝葉がしなり、直接俺に攻撃を始めて来た!!
抜刀術で一気に枝葉を斬り払って、直ぐ様後退しようとしたが、左肩に痛みが走った。
(な、カマ!?)
少し大きめの草刈り鎌が深々と刺さって、刃が貫通していた!
鎌を引き抜いて目を向けると、俺が斬った枝葉の断面から血塗れの農具が生えてきて、無事な枝葉はポル・ポトの身体から農具を引き抜き、ポル・ポトは依然として革命歌を歌い続けて、犠牲者達が一同に声を上げて泣いて俺に殺意を放ってくる。
ポル・ポトの被っていた麦わら帽子が振り上げた枝葉に引っ掛かって、グラウンドに舞い落ちる。ポル・ポトを縛り付けている枝葉がさらに強く締め付けられて、奴の首の骨が折れて、さらに180度反転して、樹皮に直接革命歌を至近距離で歌わせた。
「!!」
そして、奴の後頭部から逆さ十字が刻まれていた!
アレが、ポル・ポトをここに顕現させているフレネが施した呪いの源!!
「アレを叩き斬れってことか……ん?」
俺の言葉が聴こえたようで、ポル・ポトの頭を枝葉がペチペチ叩いて、『やれるものならやってみろ』といった感じで挑発してきた。
どうやら独裁者ってのは、人をコケにするのが好きらしいな?
「後悔するなよ?」
その挑発、あえて乗ってやるよ。
刀を鞘に収めたまま、俺はポル・ポトに紅く光る眼を向けて集中する。
「地獄に送り返してやるよ、キモジジィ!」
左手を刀に添えて、俺は再びポル・ポトに向かって走り出した。
人外滅討術は鬼が人に伝えた退魔法。
人外滅討術は武術ではないが、人が編み出した武術と一緒に扱うことで真価を発揮します∠(`・ω・´)




