第67話 魂喰い
お疲れ様ですよ〜∠(`・ω・´)
ほな、続きです!
佳鈴目線でいきますよ!
「大丈夫、佳鈴ちゃん?」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、うん、大丈夫……」
息を切らしながら、学校からなるべく遠くへ離れている私について来てくれた朱里さんに、私はなんとか返事をして後ろを振り返った。
なんか物凄い大きな声で誰がアカペラで歌ってるように聞こえるけど、その歌声の中に金属が打つかり合う音が響いてくるし、あの大声に小さく混じって何か変なのも聞こえてくる………
(龍太郎たち……大丈夫かな?)
それにあの農具の塊みたいな姿をした妖魔。
たしかポル・ポトって言ってたよね?
死んだ人間をあんな風にするなんて………。
莉桜ちゃんの姿をした"妖魔フレネ"
彼女のせいで私はかなりのショックを受けていて、正直こうやって龍太郎達の邪魔にならないように逃げる事が辛かった。
かと言って、あの場にいても一般人の私が居ても、何も出来ないのは分かりきっていた………。
(でも……私は、本当に……人間なの……………?)
龍太郎に助けられる前に、フレネから言われた、私の心臓。
たしか稀の心臓とか言ってた……。
「……………」
心臓がイヤな鼓動をする。
勝手に暴走するようにして心臓がドクン……ドクッ……ドクドクッ!ってなって、今すぐ何とかしないとって思うのに、頭が『何を?』ってわかんなくなる……。
「佳鈴ちゃん。不安な気持ちに駆られるのは分かるけど、今はここを切り抜ける事だけを考えてちょうだい」
「!……はい」
私の不安な表情に気が付いた朱里さんが声を掛けてきて、私はなんとかこの不安を胸に押し込めて走っていく。
多分、朱里さんに聞いたら答えてくれるかも知れないけど、私は自分の命を守るために走り続ける。
っと、街の方から大きな音が響き渡る。
たしか、ニュースでギネスに認定されてた…んだっけ?県庁舎が物凄い勢いで崩れていく。
………今この空間って、現実世界と繋がってたんだよね? 建物壊したら、その影響が現実世界でも同じになるって…………。
最悪な想像をしていると、今度は空から大きな爆発が何十発と起きて鼓膜が割れそうになる!
そして更に大きな爆発が起こり、私は爆風に少し飛ばされて身体をアスファルトに打ち付けて、朱里さんも電柱に身体を打ち付けてしまった。身体が小さい分、衝撃も強くなって内臓にもダメージを負ってしまう。
それと同時だった。
私達の目の前に何が飛んできてアスファルトに打ち付けられた。
人の形をした……赤い悪魔みたいなのが落ちてきたと思ったら、身体から悪魔のような部分が剥がれるようになって……表れたのはセツさんだった!!
「え、セツさ……ッッッ!!!」
倒れたセツさんに近寄ろうとして、私は息を飲んだ。
彼女の身体…右足の骨が折れていて、折れた骨が足の筋肉を突き破って外に飛び出て…、開放骨折していた!!
「ちょっと、アンタなんてケガしてんのよ!?」
「なっ!? 佳鈴!? それに朱里まで!?」
逃げてた先にセツさんが墜落した形になって、私達は驚いていた。開放骨折してて重傷を負って、朱里さんが治療に入ろうとしたけど、セツさんはそれを拒否した。
「コッチに来るな!! まだ……っ!!!」
何かに気付いたセツさんが背中を振り返る。
そこには、着ていたセーラー服はボロボロになっていながらも右腕を肩から失い、血塗れになりながら笑っていた………幼馴染みの顔をしたフレネがそこにいた。
「あ、佳鈴ちゃん発見〜!♡」
痛みを感じていないのか、笑顔を崩さずに左手を私に振りながら歩いて来るフレネ。
笑顔と流血で不気味さが増していて、私は自然と身体が震えてきて、セツさんが大型拳銃を構えて、フレネは笑顔を崩さずにゆっくりと歩いてきて、その一歩一歩が進む度に恐怖心が煽られる。
数歩近づき、ある距離になった瞬間、セツさんが折れていない左脚でアスファルトを蹴って一足飛びでフレネの眼前に立ち、左手に持ち替えたソードオフをフレネの腹部に零距離射撃!
フレネのお腹が爆散した……と思ったら、フレネの身体は消えていく!
「ザ〜コ♡」
「っ!?」
フレネの幻影が消えると、本物が幽霊のように現れてセツさんは背後を取られる。事前に渡された式神の力で魔眼の力が通用するようにはなっていたけど、さっきのあの爆発のせいで実は式神が破損していて、効力少し下がってしまっていた。
すかさず右手にソードオフを持ち替えて背面撃ちで対応しようとしたら、フレネが残った左手でソードオフに触れた瞬間腐食し始めて、セツさんはソードオフを投げ捨てた。
腐食は弾丸まで侵食して、中の火薬が反応して暴発してソードオフが爆発する!
そしてお互いが頭を突き出して頭突きが炸裂して、ゴツンっ!!とスゴイ音が響き渡って、2人は頭の皮膚が破れて額から血を流す。
反動で反り返った2人は踏ん張ってもう一度頭突きを繰り出すと、同時に両者が頭に追撃を仕掛ける!
フレネは左手で呪詛を込めたパンチを、セツさんは左手に持ち替えた大型拳銃の銃口でフレネの頭を殴ると同時に弾丸を撃ち込む!
フレネのパンチはコメカミに直撃して、セツさんの弾丸はフレネの脳幹を貫く!
セツさんは脳を揺らされながらも、歯を食いしばって折れた足に力を入れて鉄山靠を放ってフレネの接近を吹き飛ばそうとするが、フレネはセツさんの折れた足を蹴りつけた!!
痛みと衝撃で右足の力が抜けたセツさんが崩れ落ちると、フレネはセツさんの顔面に飛び膝蹴りクリーンヒットさせる!!
「セツさん!!」
「このーー!!」
朱里さんが印を結んで霊符を1枚取り出して「オン!」と叫ぶと、霊符から鳥の形をした式神が現れてフレネに暴風を浴びせて足止めをした。私はその隙にセツさん倒れたセツさんに駆け寄って、彼女を引き摺りながら朱里さんの所まで運ぶ。
なんとか運び終えると、朱里さんは更に御札を取り出して、それを折れて開放骨折してる右足と蹴り抜かれた顔面に貼り付けた。
さっきの飛び膝蹴りはセツさんの脳に直接ダメージが入って、彼女は急性脳内出血を起こしていた!!
「荒療治なるけど我慢してよ!」
臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前、と九字を切る。
「鬼脈開け 魔血逆流 肉は悪魔の炉となれ!
骨砕け 肉裂け されど死するな 再生せよ!
オン・バサラ・ギャギャ・ウン・ハッタ!
ノウマク・サラバ・タタギャタ・バサラ・ギャギャ・エイッ!!」
ドクンッ
鼓動の音が響き渡ると、セツさんが声にならない声を張り上げた!!
途方もない痛みが右足と頭を襲うけど、右足が逆再生したかのように骨折が治っていき、同じ様に頭も汗が蒸発していくように煙を上げながら傷や脳の出血が治っていってる。
けどその時だった。
朱里さんの頭から突然血が噴き出して、白目を剥いて意識を失ってしまった!
「朱里さ……っ!!」
朱里さんの名前を叫んだ直後、目の前を何かが通り過ぎた。
朱里さんが足止めに放った式神が投げ飛ばされて、振り返るとそこにフレネが笑って立っていた………!
式神が破壊されて、その反動で朱里さんは意識を失ってしまっていた!
「アッハ、あんなので足止めになると思ってたのかな?」
「クッ………ソがぁ……!」
最悪の展開だった………。
セツさんは荒療治でギリギリ足の治療は間に合ったものの、脳内出血の方はまだ完治していなくて、フレネに向けて銃口を向けるも視界がボヤケて照準が定まらなかった。
セツさんは何とかして上体を起こすも、うまく身体を動かせずにいた。
いくら身体が頑丈な人外だとしても、脳内出血を起こしてしまえば出血した血液が脳を圧迫することによって様々な症状が出てしまう。セツさんの場合は視覚の異常と、手足が動かし難くなっていて、持っている大型拳銃の引き金を引けるかも怪しい状態だった。
(マズイ……このままじゃ………!)
セツさんも内心焦っていた。
魔人化して、エレボス・ニュートリノを使って右腕は奪ったものの、たいしたダメージになっていない。それどころか30年前より明らかに強くなっている。
いくら魂が妖魔化していても、人間の魂に寄生して生まれ変わっていても、17年生きてただけでどうやったらここまで強くなれたのか理解が出来なかった。
でもフレネはセツさんの表情を見て笑うと、彼女はセツさんの考えていることを分かったかのように喋りだした。
「アタシがなんで強くなってるか、理解出来てない顔ね、ブレッドウィッチ?」
「…………」
「フフっ、じゃあ気分も良いし、ちょっとだけ教えてあげよっか?」
私達の眼前までゆっくり歩いてくると、フレネは身体をポルターガイストで浮かせて、足を組んで座る仕草をして語り始めた。
「答えは簡単w
魂喰いの禁術をこの身体に施しただけよ」
「な……」
セツさんは驚いた表情をして言葉を失った。
「さすがにブレッドウィッチは知ってたみたいね?
アンタの中に居る悪魔にでも聞いたことあるの?」
「………なるほど、たしかにソレを施していたら強いのも納得するが……正気を疑う所業だって事を理解しててやってるのか!?」
「当たり前じゃないw
でなきゃオモシロくないでしょw」
激昂するセツさんに笑い返して、フレネはケラケラ笑い始めた。
正気を疑う所業って………いったい……なにをして………
「……なるほど、たしかに…正気を疑うわね」
反動で意識を失っていた朱里さんが目を覚ました!
途中から聞いていたのか、ゆっくりと立ち上がりながら私の肩に飛び乗って、フレネを睨みつけた。
そして、その魂喰いの禁術を私に教えてくれた。
「魂喰い。それはね、別名"胎児喰い"って呼ばれる狂気の禁術よ」
「え………」
胎児……喰い………?
「コイツは、自分の身体で孕んだお腹の子供を、自分で腹を裂いて取り出して食べたのよ」
「ッッッ!!??」
「自分の身体を使って命を作り出して、その作り出した命を自分で食べる禁術。無垢で純真たる胎児を食べて、その純真無垢を穢すことで、暴虐の呪いの王たる邪神の力を得るとされるものよ」
なに……それ…………
聞いていて悍まし過ぎて……自然と身体が震えてくる。
けどフレネは私の様子を気にもせずに、ケラケラしながらその時の事を喋ってきた。
「生まれ変わったし、身体も作り直したから、せっかくだからやってみようって気になってねw
パパ活マッチングアプリで適当に男を捕まえて、孕ませてもらったと同時にその男も殺して死霊にしてやって、やってみたら驚くくらいに強くなっちゃったんだ〜♡
下半身でしかモノを考えられないバカも同時に釣れて、まさにイッセキニチョウってねw」
嬉々として喋るフレネに嫌悪感が強くなってくる………。
私の………私の大切な幼馴染みを殺しただけでなくて…………その家族も、尊厳も、何もかもメチャクチャ穢して……………!!!!
「アンタは………」
「ん?」
「アンタは……どこまで莉桜ちゃんを冒涜すれば気が済むのよ!!!」
あまりの所業に、私は感情が爆発して、涙を流しながら声を張り上げて叫んだ!
そんな私の顔を見ても、フレネはなお笑い続けて嘲笑してきた。
「アッハハハハハ!
なにそんな事で怒ってんの?w
アタシの身体なんだし、アタシの顔で、アタシのモノなんだから、あんな子供と一緒にしないで、よw」
嘲笑したと同時に、フレネが指先を振ると圧が放たれ、赤ちゃんの泣き声が鼓膜に直接響いてくる。
私は胸の底から気分が悪くなって吐き気を催して、セツさんと朱里さんは怪我や反動で体を上手く動かせない。
フレネが放つ圧は、邪神の力。
その邪神の名前は、シュブ=ニグラス。
クトゥルフ神話の外なる神の一柱で、「千匹の仔を孕みし森の黒山羊」の異名を持っている。無数の怪物的な子を産み落とし、腐敗した豊穣と生命の狂気を司る存在で、無垢な命を穢す「母なる呪い」の象徴とされる邪神。
そしてフレネが得た力は、『千匹の仔』。
腹の中に千匹の邪神の胎児達が蠢き、フレネの中で殺されていき、邪神の禍逆魂を手に入れられる危険な力だった。
そしてその禍逆魂から作られる破壊の光。
「ここで佳鈴ちゃんが死んだら、龍太郎くんはどんな顔するかな?w」
ちょっと試してみようみたいな表情で、私達に破壊光線を向けてくる。
朱里さんが気力を振り絞って、根性で結界を張る!
「ムダムダw この破壊光線は邪神の禍逆魂で作られた強化版。言ってみれば、禍孕ノ破壊光線。
産まれてくるはずだった我が子の無垢なる呪いと無念が込められたもの。
人間から生み出された恨み辛みなんかとはケタ違いに強い純粋な悪意の力♡
当たれば存在ごと消し去るから、そんな結界なんか役に立たないよ♫」
そんな事は朱里さんも百の承知だった。
けど、何もしないよりはマシだと思いながら、今貼れる最高硬度の結界を張った。
セツさんもどうにかしようと、痺れる右手に魔力を込めて、フレネが禍孕ノ破壊光線を撃つ瞬間を狙って軌道を逸らそうと考えるが、成功する確率はとても低い。
そんな事は分かっていても、やるしかなかった。
私達の焦燥を嘲笑うように、フレネは禍孕ノ破壊光線を撃つタイミングを焦らしてくる。
緊張感が高まり続けて、ついにフレネが禍孕ノ破壊光線を撃とうとした……その瞬間だった!
「はい、そこまで〜♫」
気の抜けた感じで、フレネの禍孕ノ破壊光線を握り潰しながら一人の男が割って入ってきた。
「な…!?」
「っ!?」
「え……この人!?」
みんな……その男に見覚えがあった。
以前、私がセツさんに誘拐されて、埠頭で龍太郎とセツさんが戦った後、その場をメチャクチャにして、埠頭を火の海にした男!!
「なに?なんでアンタが入ってきてんのよ?」
「いや〜、オマエ暴走しやすいからさw
もしかしたら佳鈴ちゃんを殺しちゃうんじゃないか〜、って思って来てみたら案の定じゃんw」
フレネの禍孕ノ破壊光線を潰して、私達を助けたのは、まさかのナナシだった。




