第65話 殺戮の森
お疲れ様ですよ〜∠(`・ω・´)
ここからは第三者視点でお送りします∠(`・ω・´)
魔人化したセツが空を飛んでフレネに迫り、地上では瓦礫から這い出たポル・ポトがクワをスパイク代わりにして、龍太郎と純也に襲い掛かる!
ポル・ポトが奇声を上げて両手からシャベルを生やして、突いて殴りに掛かり、龍太郎は乱雑に振るわれるシャベルを刀でいなして斬り結んでいく。
撫で払い、撫で切り、撫で上げ下げしてポル・ポトの攻撃を捌いていき、学校の土地に傷を付けない様にして、真紅に光る瞳でポル・ポトの隙を見逃さず、四肢に傷を入れていく。
純也は持ち前のスピードで、ポル・ポトの攻撃を見てから躱していき、隙を見て鞭の一撃を叩き込んでいく。
しかもその一撃は、ポル・ポトの身体に刺さりまくってる農具の僅かな隙間、農具の鎧の弱いと思われる部分、もしくはポル・ポトの肉体に刺さっている農具に鞭の血の頭を入れていく。
そしてその有効打を見極めるのは、合体している秋田犬、オルカの嗅覚だった。
犬の嗅覚は人間の100万倍から1億倍にまで良く、ポル・ポトの身体の刺さっている農具から漏れる僅かな血の臭いを割り出して、そこに衝撃を与えるように鞭を振るっていく。
確実にダメージを負っていき、ポル・ポトはまたシャベルを大砲の様に撃ち出すが、一度見たら予測は出来る。
2人は撃ち出されたシャベルを回避すると同時に、シャベルの柄を掴んで同時に投げ返した!!
1本は鳩尾に、もう1本は頭に目掛けて突き刺さり、ポル・ポトは悲鳴を上げる。
「人外滅討術」
龍太郎は刀に鬼の力を込め、純也は鞭を強く振るう!
「影現・斬!!」
「串刺し雷鳴!!」
龍太郎の斬撃が農具ごとポル・ポトの身体を傷を付ける。純也の振るった一撃は、鞭を高速で振り抜き、音速を超えるクラック音で衝撃波を放つ技。
吸血鬼の再生を一瞬止めるほどの打撃+耳を潰す破壊音波攻撃で、その音波は細胞結合を内側から崩壊させる程。
ポル・ポトは斬られた痛みと、内臓からの痛み尚更大きな悲鳴をあげた。
「へっ、どうよオレの力わよ?」
「毎度思うが、どこからそんな技のレパートリー生み出せるんだよ」
「なんだよ、オレは才能の有る男、稲波 純也様だぜ? 知識さえあれば、あとはそこから独自発展させて魅せるさ!」
「言ってろ」
自画自賛する純也に塩対応の龍太郎。
でも内心、龍太郎は純也の事を認めていた。
今の技も、実際にあるオーストラリアン・ストックホイップという牛追い鞭の技で、世界最長のクラックと呼び名の高いもの。それを純也は自身のモノにして、鞭を振るう時の一番の技にしている。
見た目はチャラいが、努力家である。
しかし、そのチャラい見た目に努力家であることと、知識という言葉を吐いたことで、ポル・ポトの逆鱗に触れた。
『知識ハ……敵』
蹲って動かないポル・ポト。
そんなポル・ポトが口にした言葉に、龍太郎と純也の両名は最大限の警戒をした。
『労働コソ、真実』
この言葉はかつて、生きていたポル・ポトが口癖のように自国民に言っていた言葉だった。
何をどう思ってこんな思考になっていったのかは今現在でも分からず、日記や資料などは見つかっていない。
しかし、ポル・ポト自身も知識人であった事だったり、もしくは劣等感からそんな思考に至ったとあるが、真相は未だに分からない。
分かっているのは、彼がやった所業だけ。
『殺戮の森』
かつて、殺戮の森で行われた処刑。
「銃弾は国家の財産だから無駄にするな」と、ポル・ポトは直々の指示を出していた為、銃殺は幹部・重罪人のみに限定され、一般囚人……国民はほぼ全員が非銃殺で殺された。
銃弾節約の為に、クワや斧、ナタなどの農具で後頭部を一撃で割られたり、何度も頭を執拗に殴って絶命させ、子供に至っては木に逆さ吊りにされ、その状態のまま木に頭を打つけて殺された。
ここで犠牲になった子供には、ポル・ポトが挙げていたプロパガンダ「革命は誰でも医師になれる」で仕立て上げられた子供医師も含んでいる。
理由はもちろん、医療ミスでの患者が死亡した事の責任転嫁。もしくは「敵の陰謀」と思われただけで処刑された。
他にも思想的なもので、「革命の肥料にする」という名目で、罪も無い国民が喉笛を切られて、その血を木々に捧げられたこともある。
他にも生き埋め、タイヤネックレス、窒息と上げればキリが無いが、最も恐ろしい記録として現存しているものは、生きたまま肝臓や胆嚢を摘出して、その場で塩焼きにして兵士に食べさせた事だろう。
そしてその犠牲になった死体は、全て畑や田んぼの肥料にされた。
『グオアアアアアァァァァァーーーーーーーーーーーー!!!!』
蹲っていたポル・ポトが悲鳴をあげた。
直後、ポル・ポトの身体から細い血塗れの細い腕が生えてきた!
細い腕はポル・ポトの身体に刺さっている農具を手に取り、それを引き抜くと、引き抜いた場所から痩せ細った人と思しき何か……亡者が立ち上がった。
そしてどんどんポル・ポトの身体から亡者達が生み出され、それと同時にポル・ポトの影から骸骨たちがカタカタ歯を鳴らしながら、ポル・ポトの農具を手に取って立ち上がる。
「チッ、また数を相手にしないとかよ」
「オイオイオイオイ、コレってまさか、みんなコイツの犠牲者達か!?」
亡者や骸骨が次々に現れ、ポル・ポトの背後に悍ましい木の幻影が現れ、ポル・ポトがその木に張り付けにされる。
そしてポル・ポトから生み出されたそれらは、龍太郎達を見つけると、一斉に襲い掛かってきた!!
だが、亡者や骸骨達は動きが遅く、龍太郎達は難なく亡者達を葬っていく……が、ここでポル・ポトが耳を劈く大声量で歌い出した!!
『真紅の血が
我らの街と平野に飛び散った
高貴な革命軍の血だ
民主主義と自由主義の奴隷だった
我が同胞の肉体に飛び散ったああ、この真紅の血よ
我らを目覚めさせ
怒りを燃やし
闘争を決意させた
真紅の血は、永遠に輝く!』
この歌は、クメール・ルージュ時代に歌われた革命歌、『真紅の血/赤い血』だ。
この曲は、当時殺戮の森で処刑されていた国民達の悲鳴をかき消す為に大音量で流されていた。
しかもこれを、日本で言う所のラジオ体操感覚で、毎日朝5時と夜8時に全国放送していた。
現地の人はいまだにこのメロディーが聞こえるだけで震えるそうで、「革命の歌」ではなく「死の歌」として記憶されている曲。
こんなものをこの場にいる亡者や骸骨達が聞けばどうなるか?
亡者や骸骨達は頭を抱えて震えだし、掠れた声で悲鳴を上げる。たが革命歌の歌でその悲鳴はかき消されて、斬られた亡者と骸骨の身体はもとに戻り、亡者達は涙を流しながら龍太郎達に襲い掛かる。
「チッ、胸糞悪ぃな!!」
「こりゃマジで…コイツ等が可哀想すぎるぞ!?」
大声量で歌われる歌で三半規管にダメージを受けつつ、龍太郎と純也は武器を握る力が強くなる。
やるせない想いが二人の中に込み上げてくる。
どうにかしてこの亡者達が安らかに眠れる様に、ポル・ポトに攻撃を仕掛けて行った。
ここに書いたのは全て歴史に刻まれた悪意の結晶です。
この記録は、絶対に忘れてはならないものなのです。




