第62話 ダンピール
お疲れ様ですよ〜∠(`・ω・´)
ほな、戦闘開始!
ダンピールとは、東欧やロシアの伝説に登場する、人間と吸血鬼の混血の存在。
外見は普通の人間と変わらないけど、不死とされる吸血鬼を殺す力や、吸血鬼を探知する能力を持つとされている諸説ある人外。
現代では映画やゲームで吸血鬼ハンターとして画かれて、高い人気のあるキャラクター等がいるけど……まさか純也くんがそのダンピールだったなんて夢にも思わなかった。
龍太郎も朱里さんも知ってたようで、2人は純也くんとタッグを組んで妖魔退治に出掛けていたとも教えてくれた。
「最近は佳鈴ちゃんの事もあって出来てなかったけど、龍太郎は以前にバイトに行ってたでしょ?
アレ、妖魔退治のバイト……ってか仕事ね、それを請け負ってたのよ。この街には妖魔退治の元締めがいて、そこから仕事を割り振られてたのを」
今まで純也くんは龍太郎の代わりに仕事を請け負っていて、それで龍太郎はずっと私のそばに居てくれたとも話してくれた。
全然気付かなかった。
普段の2人の事を知っている分衝撃は大きかったけど、龍太郎が信頼を寄せているという事は、純也くんも相応に強いという事になる。
そんな2人を相手にフレネはどうするのか……
だけど、セツさんだけは渋い顔をしながら銃口をフレネに向けつつ警戒していた。朱里さんは2人の実力を知っているから、何か問題が起こらない限りは負けることは無いと思っていた様子だったけど、セツさんは更に警戒したほうが良いと言った。
「前にアイツを殺した時にかなりの被害を出しちまったからな、気をつけないとコッチも危ない」
「……何があったの?」
今から凡そ30年前、アメリカのサンフランシスコで対峙したセツさんとフレネ。
初めはすぐに終わると思っていた暗殺の仕事だったが、この時から強力な妖魔化が進んでいたフレネに苦戦を強いられた。
さっきみたいに銃を撃ってもポルターガイストによって阻まれて、当時の出せる最大の威力の悪魔の力を使ってようやく殺したと言う。
しかし、フレネの反撃は予想外に激しく、更には触媒を使って反魂の術を行使されて、呼び出した死者を妖魔化させるのと同時に受肉させて大きな被害を出したそうだ。
幸いな事に死傷者が出なかったけど、古い下水道管の破損が原因で、幅約60メートルにも及ぶ巨大な陥没穴ができ、2軒の家屋が飲み込まれた…と表向きはそう処理された。
「…何を呼び出したの?」
「ヒトラーだ」
まさかの有名な独裁者だった。
1933年にナチス党指導者として権力を掌握し、ドイツ首相に就任。独裁体制を確立。
人種差別政策を推進して、ユダヤ人やロマ人、障害者などを「劣等人種」として迫害。
ホロコーストで約600万人のユダヤ人を殺害した。
1939年領土拡大を目的とした戦争開始して、ポーランドに侵攻。
第二次世界大戦を引き起こして、ヨーロッパ・アフリカ・ソ連をも巻き込んだ。
他にもアウシュビッツなどの収容所でガス室・強制労働により数百万人が死亡。約5,000万人が死亡したとされる、20世紀最大の犯罪者。
歴史の教科書に出てくるヤバい人物と戦ったことがあるの………? しかも妖魔化させた?
「妖魔化したヒトラーは、額に逆十字を刻んだ影のようなものだった。自身の身体を分裂させて兵士を作り出して来て、しかもその兵士達も兵科が多岐にわたって、時間が経つごとにジリ貧になって………思い出したら腹が立ってきたな」
最終的にはヒトラーの頭を掴んで、額の逆十字にゼロ距離で何百発と大型拳銃の弾を叩き込んでようやく殺しきったと……。
フレネも死霊使いでありなからフィジカルも強く、死霊術を使った接近戦でかなりやられたと言った。
「龍太郎………」
龍太郎は強い。そう知ってはいても、そんな話を聞かされると心配になる。さっきの反魂の術もいつ使ってくるのか分からない。
一応、朱里さんが補足を入れてくれたけど、反魂の術を使うなら、呼び出す者の縁ある物でなければ触媒にはならないと言う。
そもそもそんな触媒になるものなんて滅多に手に入れることなど出来ないらしいけど、万が一もある。何かマズイ状況になったらセツさんも援護に入るとのことだが…………。
(アイツ……絶対何かしてくる)
直接被害を受けた私だから思う事なのかもしれないけど、彼女の醜悪な性質を考えたらそう思わざる負えない。
そんな一抹の不安を胸に抱えながら、龍太郎達の戦いの火蓋が切られた!
先に仕掛けたのはフレネ。
ポルターガイストを使って机や椅子をスゴイ勢いで振り回して、龍太郎と純也くん目掛けて飛んでくる!
純也くんは早い動きで軽く避けて、龍太郎は飛んできた机を斬り裂く。
だけど、飛んでくる机や椅子は一つじゃない。
連続して飛んでくるけど、龍太郎と純也くんはそれぞれ別方向に避けて、トップスピードでフレネに急接近する。
龍太郎が先に斬り掛かり、落雷の様な袈裟斬りを叩き込むが、フレネは自身をポルターガイストで浮かせて軽やかに避けた。けどその避けた先には、拳を硬めた純也くんが居た!
「うらあぁぁぁ!!」
渾身の一撃がフレネを襲うが、フレネは得意のポルターガイストで純也くんの拳を受け止めようとしたが、
「!?」
ポルターガイストの念動力を押し返すような強烈な力でゴリ押ししてくる!!
ポルターガイストを破られそうになったフレネは、セツさんを騙したように幽霊の様にスッ姿を消す。
純也くんの背後を取ろうとしたが、後ろ回し蹴りがフレネの死角から飛び込んで来た!!
慌ててポルターガイストで受け止めようとしたが、純也くんのパワーで振り抜かれて吹っ飛ばされた!
凄いパワー………
「さすがは吸血鬼由来のパワーだな」
「吸血鬼のフィジカルの高さは有名だけど、彼のパワーはそこいらの妖魔じゃ手も足も出ないわよ。スピードも折り紙付きだし、下手な小細工が無い分厄介よアレは」
「ちなみに、アレで本気か?」
「まさか。本気になったら、作られたとはいえこんな学校一つ簡単に破壊し尽くすわよ」
え…………純也くんそんな強いの…?
「初めて彼と会った時はそりゃあ酷かったわよ。
2人とも互いを妖魔だと勘違いして周辺を破壊し尽くして、フォローするの大変だったんだから」
…………もしかして、純也くんが初めて家に来た時に、お互い血塗れだったのってソレが原因?
ケンカどころか殺し合いしてたの?
「純也くん、フレネに通じると思う?」
「フィジカルの高さだけでF,Eを圧倒出来てるが、アイツイラついてるからそろそろ厄介なのをやってくるぞ」
大型拳銃を強く握りしめて、魔眼を光らせて戦闘態勢に入るセツさん。
朱里さんも呪符を取り出して新たに式神を作り出して備える。
少し不安に駆られてしまいそうだったけど、私は龍太郎の方へと向き直る。
狭い教室内で龍太郎がフレネを翻弄したり、攻撃を捌いたりして純也くんが攻撃に入ってフレネを圧倒している。
このままやり続ければフレネを倒せるんじゃないかと思うけど、セツさんの読みが当たってしまった。
ケンカ殺法とはいえ、フィジカルで自身を圧倒されたフレネが激昂し始めた。
「あ〜も〜!!離れろこのスケベどもーーーー!!!」
両手を左右に広げて、ポルターガイストによる強烈な衝撃波を発して龍太郎たちを引き剥がすフレネ。
少し距離が出来た瞬間、フレネの周囲にナニかが呼び出される。
4人…人の形をしているけど、黒ずんで汚れた肌が目立つ………ウチの学校の制服を着た者達が龍太郎達に襲いかかった!!
『タス………ケテ………』
『イタイ……イタイ…………』
『ナゼ…ワタシガ…………ナゼ……』
『オレハワルクナイオレハワルクナイオレハワルクナイ』
うわ言のようにそう言いながら、操られるたような動きで殴りにかかる黒いナニか。
数日前に集団自殺したウチの先輩と、その親と取り巻き達だった。
純也くんはパワーで粉砕して、龍太郎は刀で斬り裂く。だけど、斬っても砕いても黒いナニかはフレネの周囲に即座に召喚され直し、また直ぐに2人に襲い掛かる!
「ハっ!アンタが死んで清々したとは思ってたけど、こんな形での再会だと憐れだな先輩!?」
どうやら純也くんの知り合いみたいだった。
純也くんは容赦無く殴り、また黒いナニかを砕いていくが、何度目か砕いた時に、フレネが龍太郎と純也くんに向けて、黒い球体のようなモノを向けていた!!
「破壊光線!」
黒い光が2人に向かって放たれ、射線上のものを全て飲み込んでいく!!
呪いの込められた光線の通ったあとには、炭のように炭化した机や椅子、壁、そして召喚されてた黒いナニかがボロボロと崩れていった……。
味方ごと巻き込むなんて………!
射線上にいた龍太郎達は大丈夫なのかと心配したけど、それは杞憂だった。
召喚されてた黒ナニかを盾にして被害を免れた純也くん。
龍太郎はその光線ごと叩き斬っていて無傷だった。
龍太郎達が無事でホッと瞬間だった。
セツさんが私の頭上に向けて大型拳銃を連射した!!
上を見上げると、小肥りの黒いナニかが天井に張り付いていて、銃弾で穴だらけにされて目の前に落下してきた。
「滅!!」
その隙に、朱里さんが式神で浄化していく。
「油断も隙もねぇな」
「佳鈴ちゃん、動いちゃダメよ?」
神経を張っていた2人に殲滅される黒いナニか…。
光線の発する光を目眩ましにして………そういえばフレネの姿が無い!!
いったい何処に!?
朱里さんも気付いた様子で、直ぐ様探知をしようと術式を組み上げようとした瞬間だった。
頭に衝撃が走って、朱里さんが壁に叩き付けられて、カランッと何か鈍く乾いた音が響く。
落ちてきたのはチョークの欠片で、そのチョークが朱里さんの頭に直撃した!
しかも、コレはただのチョークじゃなかった。
普通チョークは炭酸カルシウムと少量の粘土を混ぜて固めたられたもので、密度は1.8g/cm³。
でもこのチョークはポルターガイストで圧縮されたもので、密度は6.25g/cm³
これは鉄の密度の7.8g/cm³と近いもので、そんな物を当てられた朱里さんの頭は割られて、血を撒き散らして意識が飛んでしまった!
そして気付いた時には、セツさんの眼に粉々にされたチョークの粉を投げ付けられて、ソレをモロに受けてしまって、眼に激痛が走った!
「ッッッ!!」
「セツさ……っ!!」
朱里さんの意識が飛んでしまった事で結界が解かれてしまい、フレネが操る死霊に足を掴まれた!!
更には魔法陣が浮かび上がり、私の身体が魔法陣の中に引きずられて行かれそうになる!
龍太郎と純也くんとの2対1での戦闘で不利と判断して、私を連れてこの場を引こうとした。けど、またフレネに誤算が生じる。
「オルカーーー!!来ーーーーーーーい!!!」
純也くんが叫ぶと、彼の影揺らめいた。
その瞬間、純也くんの影から何が飛び出してきて、魔法陣を殴り付けた!!
バキッ…!!
全体重を乗せた一撃は魔法陣を割ってみせて、私の足を掴んでいた死霊に噛み付くと、死霊が悲鳴を上げて消滅する!
私は呆気にとられて呆然としてしまった……。
だって……純也くんの影から飛び出してきたのが、ついこの間、筧の家に行って撫でさせてもらった、秋田犬のオルカくんだった……!
「ハッハッハッ」
ウソ……え、まさか、オルカくんまで!?
「ふ〜、間に合ったぁ、エライぞオルカ!」
「ワン!」
魔法陣を割って私を助けたことを褒めて、オルカくんの頭を撫でてあげる純也くんと、私に駆け寄って安否確認する龍太郎。
同じタイミングで朱里さんの意識も戻って、少しフラつきながら立ち上がってきた。
「朱里さん、大丈夫?」
「いっつ〜、また頭割られた〜……」
「お前油断してんじゃねぇよ」
「油断なんかしてないわよ、感知が間に合わなかっただけよ」
少し言い訳めいてたけど、軽く頭の血を止めて、私にケガが無いか確認してからセツさんの眼に治療術を施した。
「すまない、良いとこ無しだな」
普段はずっと千里眼に頼って戦っていたセツさんだけど、目潰しで私を危険に晒したことを悔やんでいた。警戒していたが、魔眼が使えないだけでこんな簡単に追い込まれるとは微塵にも思っていなかった。
(こりゃ出し惜しみしてる状況じゃねぇな)
すぐに治療は終わって視力が回復した時だった、ペタンっという音を立てて、姿を消していたフレネが教卓に台バンして怒りの感情を剥き出しにしていた。
「ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく!!
なんなの純也くん!? ワタシが動物嫌いなの知っててイヌ召喚してきたの!?」
魔法陣を割られた反動で、頭から血を流してキレ散らかすフレネ。
昔から犬や猫の居る家には霊は寄り付かないとされているから、死霊使いのフレネにとっては犬猫は魔除けとして認識していた。
しかもその犬は、普段純也くんが飼ってると思ってたオルカくん。つまりは純也くんの眷属として召喚されたと言う事だった。
そしてさらに驚かされる事になる。
「ハっ、どうやらオマエとオレとじゃあ相性最悪らしいな。龍太郎、ここはオレに任せてくれるか?」
「お前まさか………」
純也くんが何をしようとした察した龍太郎は、私を抱えて教室の窓から飛び降りだした!!
ちょ、いきなり!?
「うわああぁぁぁぁ!!」
綺麗に着地はした。
衝撃は来なかったけど心臓に悪い!!
「ちょっと、せめて一言言ってよ……」
「すまん」
そして同じようにセツさんも飛び降りてきて、朱里さんは少し焦ったように飛んできた。
いったい何を焦って………と、思った瞬間だった。
バッリーーーーーーンっ!!!
学校の全ての窓ガラスが一斉に割れて、破片が下にいる私達に降り注いでくる!!
「チッ、あのボケナス!!」
「合体するのになんでいちいち爆発すんのよーーー!!」
物凄い数のガラスの破片が降ってきて、龍太郎は私を抱えたままで、みんな全速力で走ってガラス片を回避してまわった。
って、合体って何!?
理解が追い付かない!
セツさんなんかちょっと死んだような目になりながら、ガラス片を回避しててちょっと怖いんだけど!?
千里眼で何が見えてるの!?
グラウンドの中程まで来てようやくガラス片から抜け出せた。校舎の方に振り向くと、バンっ!!ガンッ!!ガシャンっ!!ってスゴイ音が鳴り響いてる…。
「おい……アレって………」
「何が見えてるのかは良くわかるわ。その通りよ」
「……今までいろんな奴を見てきたが、あんな個性が渋滞してる奴は初めて見たぞ?」
「まぁ強いから別に良いんだけど、もうちょっと冷静さがあったらねぇ…」
セツさんと朱里さんの会話からどんな事になってるのか読み取れない……。
個性が渋滞してるって………
困惑していると、さらに大きな爆発が起きて、煙の中から何かが飛んできた。飛んできた何かは人の形をしていて、ソレはヒーローのようにクルクル回ってから豪快に着地する。
「え…………」
つい言葉が漏れる。
服装から純也くんなのは間違いない。
けど………まず黒髪が赤褐色の色に変化している。筋肉も少し隆起していて、少しマッシブになってた。
そして最大の特徴があって、朱里さんの言ってた「合体」の言葉の意味を理解した。
たしかに合体してた。
オルカくんの大きな犬耳と犬尻尾……日本犬特有の犬耳と犬尻尾が純也くんから生えていた!
「なんだよw 本気出せばヤリ合えるじゃねぇか!」
そして普段のチャラついた顔が闘争心剥き出しで、明らかに人格変わってると思う様な顔付きになってる。
そして純也くんの手には、禍々しい赤い柄のようなモノを握っていた。
アレなに……?
「アルカード」
セツさんがそう呟いた。
「存在してるは知ってたが、まさかこんな奴が持ってたとはな……」
「どういう巡り合わせなのかなぁ…まぁ悪意持った者の手に渡るよりは全然良いけど……」
かつて、串刺し公と呼ばれたヴラド3世というワラキア貴族が居た。
彼は敵の心を折るために、捕虜となった兵士達を皆串刺し刑にしていって、数多の血を大量に流させた。
ヴラド3世死後、彼が数多の流した血が怨念を蓄積して、領地は凄まじい呪いの地となり、彼の遺骸を吸血鬼の王へと変質させてしまい、その後各地で吸血鬼伝説が広まっていった。
だが、ある一人の眷属がヴラドを裏切り、偶発的にアルカードを作り出した。
それは人々を救う退魔の力にもなり、人の血を飲み干す召魔の力にもなる両極端な力を持つ危険なものだった。ヴラドを討ち、その後眷属は静かに人の前から姿を消したとされたが、純也くんはその眷属の血を引いているというらしい。
「両魔血鞭アルカード。奴にも効くのか見させてもらうか」
悪魔の力を解放させる準備をしながら、セツさんはそう呟いた。
飲み屋のお姉ちゃんに純也の設定言うたら「個性が渋滞してるw」って言ってたからそのまま使わせてもろたわ〜ヽ(=´▽`=)ノ
もうちょい個性追加して更に大渋滞起こそうかな?w




