第60話 鬼神の炎
ここは龍太郎の視点からです。
間に合え龍太郎!!
龍太郎side
「龍太郎、右から来てる!」
「チッ!!」
早く佳鈴が居るであろう学校に行かなきゃならねぇのに、死体達の襲撃頻度が高過ぎてなかなか前に進めない!
腐敗臭を撒き散らしながら不規則な動きでこっちを翻弄してくるうえに、斬れば死霊術を消す事は出来るが、黒く劣化した血液までも撒き散らしてくるから始末に負えない。
どこの誰とも分からない死体なうえ、どんな病気を持ってるかも分からない。
ヤバい奴が用意した死体だ。
爆弾も巻いて妨害にも余念が無いし、何かしらの病気を持ってる死体かもしれない。下手すりゃその病気すらも俺達対策に強化してるかもしれない。血液を媒介にした病気は油断ならないからな。
血が殆ど飛ばないように斬ってはいるが、間に合わなければ体術しかない。感触が気持ち悪いが、迫って来る火の粉を払うのにそんな事言ってられない。
けど…
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、さすがに異常だろコレは………」
数の暴力が全く衰えない。
死角から来るヤツは朱里が対応してくれている。忘れがちだが、コイツは陰陽術に精通しているスペシャリストだ。最近は佳鈴を守る為に結界を張ってたりしていたが、今は死体を浄化して消滅させている。
霊力の込った紫色の火を纏った式神を放って操るが、数に押し切られたら一分も保たない。朱里は残り少なくなる呪符を節約しながら必死になっていた。
「あ〜も〜! 頭がおかしくなりそうよ!!」
まるで作業の様な同じ事の繰り返しに発狂し掛かる朱里。
式神を操るのは、針の穴に糸を通すように繊細で難しい。式神を潰されない様に敵の弾幕を掻い潜る事がどれだけ難しいか。常人なら脳が焼き切れてもおかしくない。
それをやりきる朱里。
普段ポンコツ腹ペコの大食漢なだけに、こういう所は頼もしい。
とはいえ、
「普段アレだけ食ってんだ!
ここで食った分働け!!」
「この鬼〜!!!」
鬼だよ、文句あるか!?
とにかく、この数の暴力を掻い潜らないと学校に近付けない。セツの奴が大半を引き受けてくれているとはいえ、やはり数がヤバい。
際限無く来る上に……
ピッ
対応に遅れて死体に巻かれている爆弾の起爆装置が作動して自爆に巻き込まれる。
俺は爆風で住宅の屋根に叩き付けられ、朱里は片手で簡易的に結界を張って爆風から逃れるが、式神への意識が薄れてしまい、死体共に式神を潰されてしまった。
そしてまた別の角度から死体共が襲いかかってくる!!
「くっ…そがぁっ!!!」
迫りくる死体共を影現で躱し、容赦無く斬る。が、捌ききれない!!
堪らず俺は斬り刻みながら後退してしまう。
佳鈴への焦りに思考が浅くなり、視野も狭くなる。
このままじゃ時間がいくつあっても足りない!
どうしたら良い……どうしたら……!!
戦いながら考えるも、死体共を捌くのに精一杯。虫みたいに殺虫剤撒いてくたばってくれればどれだけ楽か!
そんな余計な事を考えてると、もう目の前まで死体が迫って来てる!
「チッ、人外滅討術」
ギリギリまで引きつけ、再びで影現で死体共を擦り抜けると同時に、鬼の力を込めた胴抜きを叩き込む!!
「影現·斬!」
複数を巻き込んでの胴抜きで一気に数を減らす。少しでも活路を開いていく。
朱里も新たに式神を作るために、形代を手に取って息を吹きかけて呪文を唱える。
「天の清め、地の穢れを焼き尽くせ
月光に宿る魂、紙形に集え
青龍の息、白虎の爪、邪を断つ力を
朱雀の翼、玄武の甲、聖火を灯せ
操られし死魂、清めの炎に帰せ
我が命に従い、浄の焔を放て
天地の理、永遠に穢れを祓う
急急如律令、浄魂の式神、今生まれ!」
片手でそれぞれセーマン(五芒星を指で切る)、ドーマン(格子状に指で9回切る)を刻み、式神がそれぞれ、玄武、朱雀、白虎、青龍の姿を形取り、紫の炎を纏って死体共に突っ込んでいく。
大群に風穴を開けるが、一瞬で数が埋めていく。
きりが無い。
(くそ……っ!)
悪態をつく暇もなく、死体共がまた突っ込んでくる!!
だが今度は朱里を無視して、俺に一直線にやって来る!!
すぐに回避しようとしたが、左足に鋭い痛みが走った。さっき胴抜きで横一文字に斬り飛ばした死体共の数体が噛み付いていた!!
(何匹か仕留め損ねたか!?)
直ぐ様刀で薙ぎ払って除去したが、それがロスタイムを生んでしまった!
「ッッッ!!」
回避に間に合わず、俺は死体の群れに圧し潰され、そして………
ピッ
死体に巻かれた爆弾が一斉に爆発した。
「龍太郎ーーー!!」
朱里の声が遠くに感じる………。
咄嗟に鬼の力を身体に覆って命に届かないとはいえ、衝撃や熱波は俺の身体にダメージを負わせる。
おまけに死体に噛まれた時に、この死体共がやった所業の一部を幻影で見せられた。
殺人、強盗、恐喝、窃盗、詐欺、婦女暴行、放火、密輸。それらを笑ってやってきていた。
どいつもこいつもロクでもない事をやらかしていた、言わば犯罪者と呼ばれる人種。
死霊使いだからだろうか、死んだ後こうやってF,Eとかいう奴に働かされている。
ふざけんなマジでクソが!
こんな連中に、佳鈴を助けるのに邪魔されて………。
自分自身に怒りを覚える。
鵺を倒したあと、あの時の火を生み出した時を思い出しながら、佳鈴が寝静まったあと、人気の無い所で鍛錬していた。
だが、あの時みたいに、俺は火を生み出せなかった。
火種が必要なのかと思って色々試したが、あの時みたいに出来なかった。
多分、アレは俺が元から持ってる力だ。
なんで……手が届かないんだよ
力を渇望して、自然と手を伸ばしてしまう。
そうだ………オレは、鬼なんダ
力が無キャ、誰モ、何モ護レハシナイ
佳鈴モ………喪っテしまう
力ヲ、
チカラヲ!!
モット
チカラヲ!!!
自分の身体が、変化していく様だった。
敵を倒すという思いだけが強くなり、何を守るのか……忘れ欠る。
だが、俺の伸ばした手を、誰かが握りしめて引っ張ろうとする感覚が伝わった。
『…………!!』
声が聞こえる
けど、誰の声だ??
『……し………くん…!!』
細い…か細い手が、力いっぱいに俺を引き上げる。
ゆっくりと死体の中から抜け出した俺は、細い手の持ち主の姿を見て目を見開いた。
死んだはずの幼馴染みの莉桜だった。
『おね……い、佳鈴ちゃ……を………』
よく聞こえない。何を言って……
『お願い、佳鈴ちゃんを助けて!!』
!!!!
莉桜が抱き着いてきた。
必死の顔で、涙をいっぱいにして
『龍太郎くん、お願い!龍太郎くんの力で、佳鈴ちゃんを助けて!!!』
莉桜が………光になって消えていった……。
ドクンッ
莉桜の思いが、染み込んでくる。
自分のせいで、佳鈴が傷付いた。
だから、佳鈴を助けて。
……一番傷付いてるのは、お前じゃねぇか莉桜。
自分じゃどうしようもなくて、今、自分の姿をした妖魔に佳鈴が襲われようとしてる。
分かったよ。
佳鈴は助ける。
そして、莉桜も助ける。
だから莉桜、俺に…力を貸してくれ!!
「大通連」
チリ…
「羅刹紅蓮」
死体共に圧し潰さた俺は、その死体共を弾き裂いた。腐肉や黒く劣化した血が雨のように降りそそぐが、オレは空気の膜で自身を覆って血の雨を防ぐ。
「ッッッ!! 龍太郎!?」
死体が爆ぜ、その中に異常な鬼の力を放つ俺が佇むんでいてた。
紅い眼がさらに紅く、禍々しく煌めき、全体の雰囲気も禍々しさを垂れ流していた。
朱里は俺の力が暴走でもしたのかと思ったが、俺がそれを否定した。
「大丈夫ダ、頭ハハッキリシテイル」
これは少し、慣れるまでに苦労しそうだな。
まさか、俺の鬼の力がここまでとは思ってなかった。
見上げると、空を覆う死体共が一斉に俺に向かってくる。
だが、問題無い。
「邪魔ダ」
刀を上段に構え、鬼の力を刀に込める。
鵺と戦ったあの時、俺は刀に火を纏わせた。
だが、この刀には火を生み出す力は無い。
この刀は、風を、空気を自在に操れる力を持っている。
あの時、俺は刀に鬼の力を過剰に流し込んで、僅かながらこの刀の力を引き出し、周囲の火を巻き込んで刀の力を使う事が出来た。
あの偶然で、俺はこの刀の事を勘違いしてしまっていたんだ。
そして少し思い出した。
俺の、鬼の力の事を。
「人外滅討術」
俺の鬼の力、日本最古の鬼神の力。
「羅刹紅蓮·千鬼一閃」
刀身から羅刹紅蓮が噴き出す。
それを、振り降ろす。
風によって勢いを増した真紅の炎が、俺の視界内の死体を全て消し飛ばし、真紅の炎によって焼き消されていく。
(コレは………!!)
朱里が目を見開いて驚いていた。
俺は構わずに走り出す。
そしてまた迫りくる死体を一振り、二振りし、1000、2000の死体を滅却する。
死体共の群れに大きな風穴を開けまくり、この鬼の力…羅刹紅蓮の使い方も分かってきて、昂っていた気が徐々に落ち着いてきた。
このまま滅却しながら…っと行きたい所だが、まだまだ向こうの群れの方が多い。
もう一度、羅刹紅蓮を振り降ろそうとしたが、後ろからバイクの音が猛スピードで近付いてくる。
セツが追い付いてきた!!
「とんでもない力を使ってるな!?
とりあえず乗れ!!」
バイクもセツ自身も死体の血を浴びに浴びまくって真っ黒だった。少し乗るのに躊躇してしまったが、一刻も速く佳鈴の元に行くために、俺はセツの後に乗り込んだ。
身体強化して走ってはいたが、大分死体共に手こずってしまったな。
バイクに乗ればやはり速いが、それでも死体共は執拗に襲いかかってくる。
運転の邪魔だ!!
俺はバイクシートから立ち上がり、羅刹紅蓮をの一撃を振るってまた風穴を開ける。セツも左手の大型拳銃で弾幕を張って足止めをして死体をバイクで轢いて行く。
そしてようやく学校が見えてきたが、ここで隣を飛んでた朱里が学校周辺の異変に気付いた。
「うそ…アレって………!!」
「どうした!?」
「学校の周りだけ、霊脈の力が著しく弱くなってる!なんて器用なことを……!」
この空間は、F,Eが霊磁場を利用して緻密に作り上げた擬似魔界。
簡単に言ってしまえば、ここは俺達の普段いる現実世界とは切り離されていて、通常ならこんなもの作れば現実世界に干渉する事は出来ない。
2次元が3次元に干渉する事が出来ないのと同じだ。
だがF,Eは、この擬似魔界を作る前に霊脈に死霊を使って干渉して、そのまま死霊をバイパスに利用して霊脈の力を引っ張って、その力で霊脈結界を構築。それと同時に、さっきから俺達に突っ込んでくる死体共の死体を霊脈の力で精製して死霊を宿らせて放つ、言わば死体の無限湧きスポットを作っていた!
どうりで潰しても潰しても出てくる訳だよ!!
「あの霊脈結界を破るには、霊脈の力を流してる死霊を潰す必要があるわ!! セツ、手伝って!」
「了解!」
「龍太郎は私達が死霊を潰したら、結界を全力で破壊して!」
「ああ!!」
セツがバイクのアクセルをさらに開いて、ギアを最大にまで開き、さらにスピードを挙げて向かってくる死体の大群に突撃する!!
「飛ぶぞ!朱里、お前に合わせるからタイミングは任せるぞ!」
「ええ!アンタもポカしないでよ!」
「龍太郎は道を作ってくれ!」
「ああ!」
そして、猛スピードで突っ込むバイクは前輪を上げ、ニトロを起動して爆発的に飛び上がり、死体の群れが目前に迫った!
「シッ!」
俺は、バイクシートに落ちないように立ち上がり、羅刹紅蓮の炎を纏わせた居合いを放つ!
真一文字に斬り裂かれた死体共。
その死体達の上を、バイクで走る!
そして一直線に学校へと突き進み、ついに学校を目前にした!!
そして、例の霊脈結界も!
結界を視認したセツと朱里は、目標とした死霊のバイパスに向けて準備を始めた!
「天清く地浄めよ、死魂の穢れを焔に還せ
青龍の息、朱雀の火、式神に特攻の命を与え
白虎の爪、玄武の甲、死霊へ突き進め
操られし亡者、聖火の爆る力で包め
我が意に従い、自爆の光を放ち浄めよ
魂の鎖を断ち、炎の輪に沈め
天地の理、永遠に穢れを焼き尽せ
急急如律令、浄魂の式神、今爆よ!」
「闇の門開け、深淵の渦、死霊を喰い尽くせ
黒炎の呪、この弾丸に深き刻印を宿せ
奈落の鎖、縛られた魂を底なき闇へ引け
憤怒の咆哮、亡者を無限の虚空へ投げ込め
我が血と硫黄により、この世より永劫追放せよ
我が声は法、我が印は鍵、魔界の門を閉ざせ
深淵の理、永遠に現世から断てよ
成れ、成れ、成れ! 深淵送弾、今放ち喰え!」
互いがそれぞれ呪文を唱え、禍々しい力と清い力が集まる。
朱里は精製した4体の式神に、セツは左手の大型拳銃に力を込め、目標へと狙いを定める。
「今よ!!」
朱里が合図を出し、グラウンドのある一箇所に向けて銃弾と式神が飛んでいく!
セツの魔術が込められた銃弾が直撃すると、魔術が展開されて、死霊達がえげつない速度で存在崩壊を起こし、朱里の式神が自爆して浄化の力で死霊を消し去っていく!
パキっ!
霊脈結界に早速ヒビが入った!!
俺は透かさずバイクシートを蹴り、ヒビに向かって跳ぶ!
「人外滅討術」
今持てる全力の力で、俺は刀を振り降ろした!!
「九字切り羅刹紅蓮!!」
真紅の炎で九字を切り、結界が音を立てて砕け散る!!
「!!!」
そして、結界の先に、シャツを開けさせて机に固定されている佳鈴を見つけた!
それと同時に、動けない佳鈴に手を伸ばす純也………アイツ、何やってんだ!!!
俺は勢いのまま教室のガラスを蹴り破ると同時に、純也の頭を思いっ切り蹴り抜いた!!
ボキッ!!!
蹴り飛ばされて、反対側のガラスを破って廊下の壁に首が変な方向に曲がりながらメリ込む純也。
そして少し遅れてバイクごと別の窓ガラスを突き破って入ってきたセツたが、バイクごと入ってきた余波で幾つか机と椅子を弾き飛ばし、それが壁にメリ込んだ純也を追撃した。
そんな純也を、ちょっと驚いた顔をした……莉桜の顔をした妖魔が呟いた。
「あらら、可哀想」
呑気に足をプラプラさせて机の上に乗って純也の惨状を呟くと、奴に向けてセツが銃弾を連射する!
だが銃弾は何かに阻まれて弾頭が潰れ、弾丸は床に落ちていく。
俺は佳鈴の体を固定している死霊を斬り裂き、佳鈴を抱き抱えて後方に跳んで妖魔から少しでも距離を取る。
「佳鈴っ!大丈夫か!?」
「りょ…たろう………?」
一瞬の出来事に涙目でポカンとした佳鈴だったが、自分が安全なんだ、助かったと認識した途端、ボロボロのグシャグシャな表情で俺に抱き着いてきた。
「りょうだろう…! りょうだろうぅ〜〜っ!」
心の枷が外れたようにワンワンと泣きじゃくる佳鈴。
いったい………どれだけ怖い思いをしたんだ…………!!!
俺は、今だに余裕の表情でコッチを見ている幼馴染みの姿をした妖魔を睨み付ける。
絶対に……叩き斬ってやるっ!!!
間に合った!!
ちょっとだけ龍太郎の力のネタバラシ(⌒▽⌒)
知ってる人はいるかな?
今回は以上です∠(`・ω・´)




