第57話 本物の叫び
さあ続きです!
こっからホラー色です∠(`・ω・´)
ヒタ、ヒタ
教卓から降りて、ゆっくりとした歩調で私に歩み寄ってくる莉桜ちゃん。
「ねぇ、グラピーは元気?」
いつも見ていたあの柔らかい笑顔なのに、今の莉桜ちゃんは私の首を絞めてくるような息苦しさがあり、頭痛が激しくなる。
喉が詰まり、言葉が出ない。
トラウマが蘇る。
あの時、莉桜ちゃんが妖魔に喰べられた瞬間を。
肉が裂け、骨が砕け、血が飛び散った。あの緑色の眼が、グリンと白目をむいて……
「佳鈴ちゃん、覚えてる?」
「え………?」
なに……を……?
笑顔の莉桜ちゃんは舌舐めずりをしながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。
「 あの時、私が死んだ時のこと」
莉桜ちゃんが一歩近づく。
私は息が止まり、頭痛がピークに達する。
キーンという耳鳴りの中、フラッシュバックが襲う。
「なんであの時、助けてくれなかったの?」
っ!!
心臓が跳ね上がった。
「私ね、あの時いっぱい手を伸ばしたよね?」
妖魔に襲われて、生きたまま食べられたその時の痛みを、生々しいく、私の耳元で囁くように、楽しそうに言う。
「逆さの重力で血が喉に逆流して、息が詰まってね、牙が鎖骨に食い込んだんだ〜♫
皮膚が破れて、私の骨をゴリゴリ〜って感触が頭から足先まで響いたんだよw
んで、バリバリって骨が砕ける音が鼓膜に響いて、牙で削がれてくの♫
身体の肉のが引きちぎれる振動が、逆さまの体を震わせてね、血が顔に降り注いで、目に入って焼けるように痛かったなぁ。
心臓の血が、頭を押し上げるような感覚が昇ってきて、食べられる時の音が耳元で鳴り続けるのw
まだ息をしているのにね、血やなんやらが吸い出されるようなねっとりした感覚が、永遠の拷問のように続いてくようだったんだよぉ♪」
まるで他人事のように、悍ましい事を嬉々として語る莉桜ちゃん。
「助けて欲しかったなぁw」
一言一言が胸に深く突き刺さってくる……。
心臓がずっと跳ね上がり続けて痛い。
私の中にあった、莉桜ちゃんへの罪悪感が膨れ上がっていく。
「莉桜……ちゃん…………」
「ん〜?」
「ごめん……なさい…………」
泣きながら、私は莉桜ちゃんに謝った。
あの時、手を伸ばしていれば……もしかしたら、大怪我はしてたかもしれないけど、助けられたかもしれない。近くに消化器もあったから、それを噴射してたら……。そしたらビックリして莉桜ちゃんを離したかもしれない。
「私……ずっと後悔してたの」
あの時、私は莉桜ちゃんを見捨てて逃げてしまった。
けど、私は我が身可愛さと恐怖に負けてに逃げ出した。
どれだけ後悔しても、悔やんでも悔やみきれない。
このネコのピアスだって、あんな形で私のもとに来なかったかもしれない。
私の大切な………大切な友達だった。
「嬉しいなぁ、私、佳鈴ちゃんにこんなにも思ってもらえてたなんて」
夕陽が差す中、莉桜ちゃんが私の頭を優しく撫でてくれた。
「イイよ、ユルしてあげる♪」
そして私を優しく抱きしめて、頭をポンポンした。
いい子いい子、よしよしよし( T_T)\(^-^ )と
はたから見れば、わだかまりが解けて泣いている私を莉桜ちゃんが慰めてくれているようにみえてる。
「ユルしてあげるからね〜。だから佳鈴ちゃん」
莉桜ちゃんが、私と目を合わせて……
「私の為に、死んでくれる?」
ドクンっと、心臓がこれまで以上に跳ね上がって、息が苦しくなる。
いま……なんて言って………?
「ほら、上見て?」
莉桜ちゃんが天井に指をさして、私は見上げる。
そこには…………天井から吊り下げられた、人の頭がスッポリと入る輪の形に結ばれた縄があった。
「うん、莉桜ちゃんがそう言うなら、私、喜んで死んであげるね」
………え?
なんで……私、今なんて??
「フフ、嬉しいなぁ♪
私の為に、自ら進んで死んでくれるなんて、幼馴染み冥利に尽きるよ♫」
莉桜ちゃんは余程嬉しいのか、屈託の無い笑顔を私に向けた。
何言ってるの私………私はただ、莉桜ちゃんに謝りたくて………それで…………………
「そうかな?私も、莉桜ちゃんのために死ねるなら本望だよ」
勝手に言葉が出てくる。
違う、私………死にたくなんか………!!
震える私の声で、私じゃない何かが喋ってるような感じがして気持ち悪い!
「じゃあ、ちゃんと死ねるようにお手伝いしてあげるね!」
莉桜ちゃんは、座り込んでる私の上履きを脱がし、私を無理矢理立たせてから、机を横に一つ並べて、まるで介錯人のように私を縄に誘っていく。
一緒に椅子の上に立って、そして机の上に立つ。
不思議と机はまるで何かに固定されているかのようにビクともしなくて、バランスを崩さずに莉桜ちゃんは私の首に縄をかけていく。
「さ、準備出来たよ♡」
縄が抜けないように首元までギュッと絞めて、首の圧迫感が恐怖を駆り立てて来る!
イヤ………なんで……なんで………!?
「佳鈴ちゃん安心してね。
アナタの命は、無駄にしないよ♡」
「うん、莉桜ちゃんだから、心配してないよ」
何が心配してないよ!?
私は………ただ…………莉桜ちゃんに、謝りたかっただけなのに……!!
首に巻かれた太い縄が、肌をざらざらと擦り、冷たい汗で湿っていた。
私の瞳は恐怖に大きく見開かれ、涙が頰を伝う。
心臓が激しく鳴り、ドクドクという音が耳元で爆発しそうだった。
イヤだ…死にたくない……!
心の底でそう叫ぶが、喉まで出かかるのに詰まってしまう。
「さ、逝ってらっしゃい♡」
けど、体は勝手に動く。
机を蹴る。ゆっくり、じわじわと。
何かの意志が、急がないよう命じている。
死を味わわせようと、恐怖を最大限に引き出す為のように。
ヤダ………ヤダヤダヤダヤダ!!!
足が床から離れ、つま先がわずかに浮く。ロープが首に食い込み、皮膚が引きつる。まだ息はできる。浅い息。
肺に空気が入るが、すでに圧迫感が喉を締めつける。
(止めて……止まってっ……!)
心が叫ぶ。手がロープに伸びるが、何かの力で引き戻される。
指先が痙攣し、爪が掌に食い込む。
体重が徐々に移る。
膝を曲げ、つま先を浮かせ、ロープが本格的に締まり、気管が狭まる。
「がっ!!………か……かヒュ………!!」
息を吸おうとするが、ゴロゴロという湿った音しか出ない。
咳き込みたくなるけど、顔が熱くなり、血が頭に上る。目が充血し、視界が赤くぼやける。
過去の記憶がフラッシュバックする。
莉桜ちゃんの笑顔、私と龍太郎、莉桜ちゃんとの3人で花火を見た夜や、川辺での約束。
『ずっと友達だよ』
罪悪感と後悔が、酸素不足の痛みを増幅させる。
死にたくないのに、体が死を求めている矛盾が、精神を蝕む!
「ぐ……………ぁぁ………!!」
縄の繊維が首の皮膚を抉り、鋭い痛みが走る。
血が滲み、温かい滴が首筋を伝う。
頸動脈が圧迫され、血が滞る。
「……っ!!
くひゅ……ぁ…………ァ……!」
頭痛が激しくなり、こめかみが脈打つ。
耳鳴りが響き、部屋が回転し始め、体が本能的に暴れる。
脚が空中でバタバタと蹴り、靴が床を叩く音が響く。
酸素飢餓が体を蝕み、胸郭が痙攣する。
「ひゅ…っっ……!!
…!!!………!!!」
汗が全身を覆い、制服が肌に張り付く。
涙が止まらない
視界がトンネル状に狭まり、黒い点が浮かんでくる。
(り……お…………ちゃ……………りょ…たろ………たす………け……………)
痙攣が激しくなる。
筋肉が収縮と弛緩を繰り返して、腕がと垂れ下がる。
舌が腫れ上がって、口から泡と血が溢れる。
歯が食いしばられ、その拍子に唇が裂ける。
首の骨が軋み、脊髄に電流のような痛みが走る。
心臓の鼓動が不規則になる。
意識が………遠退いていく………
なんで………わたし………………くび………い…た……………
『………!』
………なにか…………きこえる………?
『…………!!』
だれか………わたしに……?
『………メっ!!』
近付いてくる……なに………?
わたしに……?
『死んじゃダメっ!!』
…………!!
莉桜………ちゃ………?
『死んじゃダメ佳鈴ちゃんっ!!
目を覚ましてっ!!』
ハッキリ聞こえる………莉桜ちゃ……私……あなたに……
『ダメ!ダメダメ!!
佳鈴ちゃん………!!』
すごく悲しそうな表情で、私の首にかかった縄の結び目を解こうとする莉桜ちゃんが、私の目の前に……
『お願い佳鈴ちゃん、死なないで!』
どうして、莉桜ちゃんが悲しそうな顔してるの?
私は……あなたを見捨てて………
『違うっ!!』
!?
『私、佳鈴ちゃんに何も返せてなかったの………だから、死んでほしくなかったの!!』
でも……私は…………
『けど……私じゃどうしようもなかったの………だけどそれが、佳鈴ちゃんをここまで追い込んでたなんて思ってもみなかった!!』
…………
『私の方こそ、ごめんなさいなんだよ佳鈴ちゃん…………私のせいで、こんなにも佳鈴ちゃんを傷付けた!
傷付けたくなんかなかったのに!!』
莉桜ちゃん……泣かないで………
『……だったらお願い、私の為にも、生きて!
生きて、私から逃げて!!』
っ!!
『私の為を思うなら、生きて佳鈴ちゃん!!』
莉桜ちゃんが叫ぶと、耳に着けたネコのピアスが少し暖かく感じた。
ピアスから、莉桜ちゃんの想いというものが痛いほどに感じ取れた。
そして、私の首ににかかっていた縄が、音を立ててブチブチと千切れていった!
「……チッ、ホントにしつこいわね」
高校時代に、リアルガチに首を絞められたことを思い出しながら書いたけど、今でもゾッとする。
とりあえず、今回は以上です∠(`・ω・´)




