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人外討魔伝記  作者: 一ノ瀬カイヒロ
第三章 穢れた胎の叫び
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第53話 墓参りと家族の時間

お疲れ様ですよ〜∠(`・ω・´)


まずは龍太郎視点からです。

それではどうぞ!

龍太郎side


佳鈴かりんが退院して3週間が経過し、あれ以降、佳鈴かりんは部屋に引きこもってしまった。


まぁ当然だろう。


佳鈴かりんや俺にも近い存在の莉桜りおとおばさんの両方が亡くなって、普通の精神じゃ到底正気じゃいられなくなる。


病院で処方してもらった向精神薬も飲んではいるし、メシもちゃんと食べてはいるから一先ひとまずは大丈夫なんだが……。


佳鈴かりん、起きてるか?」


ノックをしてから扉を開けて部屋に入る。

カーテンは閉め切っていて、佳鈴かりんは布団の中に閉じこもってて出てこようとしない。


軽くノソっと布団が動くから、起きてはいるんだろう。

枕元に猫のグラピーも一緒になって寝ている。


俺は机の上にあるからの食器を片付けていく。


「これから学校に行ってくる。何かあったらRainレインしてくれ」


それだけ言うと、俺は佳鈴かりんの部屋から出ていく。


引き下げた食器を洗い水に漬けて、先に自分が使った食器を洗っていく。

夏になって制服が半袖だから、腕をまくる必要無いから少し楽だ。


……けど、夏だというのに、俺には水道から出てる水が凄く冷たいように感じる………。



「……………」



いったいどんな奴がこんな事をしたのか………。


俺に出来るのは、刀を振るって、鬼の力で戦う事だけ。

アイツ…セツが調べているらしいが、ここ2週間音沙汰無し。朱里も巻き込んで調べさせているらしいが、どうやら敵は妖魔としての痕跡こんせきを上手く隠すのが得意らしい。


鬼気迫るものを出していたが、過去にアイツを怒らせたのか?



キュっ



洗い終わり、食器立てに使った物を置いて、タオルで手の水分を拭き取って、そのままカバンを手に取って学校に向かう。


外に出ると、朱里がゲッソリした顔で目の前に浮いていた。

ビックリして叩き落とすところだったぞ。


「っ! ……朱里しゅり?」

「りょ〜お〜た〜ろ〜」



ぐう〜〜〜〜〜〜〜〜



力無く浮いていながらお腹の虫がメチャクチャ主張してる………


コイツ帰ってくるなら連絡の一つでも寄越よこせよ。


「ったく、これから学校なのに変なタイミングで帰ってくるなよ」

「ちょっと、それが調査に出てた私へのねぎらいの言葉なの?」

「コッチはメシ食い終わって佳鈴かりんの分しか残ってないぞ」

「そんな〜!!」


帰って食べるのを楽しみにしてたんだろう。

悲壮な顔でシュン太郎になってる。



はぁ、仕方ない。



俺はカバンの中から自分の弁当を取り出して、それを朱里に手渡す。


「今食えるのはそれしか無いから、食ったら休んでくれ」

「うぅ〜〜〜〜………りょ〜だろ〜〜〜!!」


泣くほど嬉しかったのか、コイツの顔がなんか凄くブサイクに見える……。


「ありがと〜」

「いいからサッサと食ってこい」


ベソをかきながらフラフラとリビングに飛んでいく朱里。


アイツにどんだけ連れ回されたんだよ………。


朱里の背中がリビングから消えると、俺は家の扉に鍵をかけてからマンションを出て登校して行った。



行ったが、やっぱり周囲は俺を見るなりヒソヒソしだす。



立て続けに家族ぐるみの付き合いのある莉桜りお一家が死んだ。

たとえ何も無くても良からぬ噂が立っても仕方無いとはいえ、正直気分は良くない。


唯一普段通りに接してくれるの純也じゅんやくらいだ。


飛び付いてきて、頭掴んで(しめ)あげて、弁当を渡して会話して。

普段鬱陶(うっとう)しいが、こういう時は気がまぎれてありがたい。


担任の先生にも事情は話して理解を示しているから、そこにも感謝だ。



で、学校が終わって放課後、俺は佳鈴かりんRainレインを送って少し遅くなる事を告げて、今日は電車に乗って少し遠出した。


5駅先の街から離れた田舎に近い場所で、30分ほど歩いて目的の場所に到着。



そこは俺と佳鈴かりんの母さんが眠ってる墓地だ。



本格的な夏が来る前に一度手を合わせておきたかった俺は、掃除してた住職さんに頭を下げ、おけに水を入れて、柄杓ひしゃくも持って母さんの墓に向かう。


母さんの墓の前まで行くと、墓の前で一人手を合わせていた人物がいた。


親父おやじ


そう声をかけると、俺と佳鈴かりんの父親、栗原 晋也(くりはら しんや)が立ち上がった。


龍太郎りょうたろう……?」


なんでここに俺がいるのかと少し驚いた表情を見せる親父に、俺は持ってた水の入ったおけ柄杓ひしゃくを親父に手渡す。親父はそれを受け取ると、母さんの墓に水をかけ、水差しの器部分に溜まった水を持ってたタオルでかき出し、新たに水を入れて満杯にする。


おけ柄杓ひしゃくを置くと、再び墓の前で手を合わし、しゃがんでから両手を合わせ、小声で般若心経はんにゃしんぎょうを唱え始めた。俺も親父の隣で手を合わせた。


3回ほど般若心経はんにゃしんぎょうとなえると、最後に南無釈迦牟尼仏なむしゃかむにむぶつと3回となえ、ようやく立ち上がった。


「お前も来てたんだな」

「そろそろ親父が手を合わせに来ると思ってたからな」


親父のカバンに手を入れて、入ってた線香に火を着けて墓前に供える。


俺のカバンからは、母さんが好きだった松前漬けのフタを開けて、おはしと一緒にそなえてからもう一度手を合わせる。


「……………」

「かなりやつれたな、親父」

「…………ここ最近寝れなくてな」


多分、メシもそんなに取れてないな……。


莉桜りおに続いておばさんまで死んで、その上おばさんの状態がかなり異常だった事が仕事をとどこおらせているんだろう。


「さすがに働き過ぎだって言われてな、明日だけ有給取って休む事にした」

「そうか………」


目のクマも大分ヤバいからな………


佳鈴かりんはどうしてる?」

「部屋に引きこもってる」

「そうか………」


親父はそれ以上聞いてこなかった。


母さんが死んだ時も引きこもってしまった経験がある。あの時は小さかった分、親父がなんとか言い聞かせて佳鈴かりんの側に居たから、俺も佳鈴かりんも健全に成長出来た。


「メシは食べれてるから、とりあえずは大丈夫だ」

「そうか、少し安心した」


食べる事は、生きる事を諦めていない証だ。


「時間は掛かるだろうけど、しっかり支えて行くから安心しててくれ、親父」

「ああ……」


少し力無い返事だったが、親父は再び墓前の前に向き合い、再び手を合わせる。

母さんと何か話し合ってるんだろな。



「……………」



数分の沈黙


柔らかい風の音と、少し早いセミの声が遠くから聞こえてくる。


まるで夫婦の貴重な時間だった。



「…………そろそろ帰るか」


そう言うと親父は、母さんの墓前を優しく見つめながら離れていく。

俺も供えた松前漬けを下げてカバンに仕舞い、親父の後をついて行った。


=======================================


「ただいま」

「ただいま」


二人で戻って扉を開けると、佳鈴かりんの部屋の扉からグラピーが俺達を迎えにきた……が、親父の姿を見ると毛が逆立ってシャーした。


親父がちょっとショックを受けてる………。


初めてじゃないんだけど、長い事会ってなかったから、顔も匂いも忘れちまったようだ。


「大丈夫だ。俺の親父だよ」


グラピーを抱き上げると、グラピーは俺の胸元に顔を埋めてスリスリし、前足で踏み始める。


「また後で撫でてやるからな」


そう言うと俺は親父にグラピーを預けて、自分の部屋にカバンを放り投げてキッチンへ。


突然親父に抱かれたグラピーは目をキョトンとして、俺を目で追いかけた後、抱かれている親父に視線を移す。


抱きかかえている親父もグラピーと目を合わせて、2人してどうしよう?と頭の中で困惑していた。


「に……にゃ〜………?」


どうしたら良いか分からず、とりあえずグラピーに向けて鳴いてみる親父……。

そんな親父にグラピーは「何言ってんだコイツ?」といったような顔をして親父をジッと見て、親父から逃げて佳鈴かりんの部屋へと逃げていった。


逃げてったグラピーにちょっとショックを受けた親父は、とりあえず手でも洗おうと洗面所の扉を開けたが、風呂上がりのバスタオルで身体を拭いている佳鈴かりん遭遇そうぐう


互いに「あ……」と声が漏れると同時に少し沈黙……。




「〜〜〜〜〜っ!!!」


バッチーーンっ!




顔を真っ赤にした佳鈴かりんに顔面を引っ叩かられて洗面所から締め出され、急いで寝間着に着替えた佳鈴かりんは部屋へと戻っていく。


親父はさらなるショックを受けた。

親父と一緒に帰ってくるってRainレイン入れておけば良かったな。


見事に頬に紅葉が出来てヒリヒリしてそうだ。

とりあえず先に風呂に入っててもらう。



んじゃ、親父が風呂に入ってる間にとりあえずつまみでも作るか。


俺は冷蔵庫からいつ帰ってきても大丈夫なように冷蔵庫にビールを入れていたのを確認して、親父が長年愛用してるビールジョッキを用意する。


今あるのは確か下処理したイカが冷凍庫に2杯と、トンカツ用の豚肉と皮付きの鶏モモ肉が3つ。

野菜はほうれん草だけか。


有り合わせで適当に作ってくか。


まずは解凍した鶏モモ肉から鶏皮を引き剥がして、それを熱したフライパンで焼く。

皮だから熱せば油、鶏油チーユが取れるから、それでそのまま油を絞り揚げるように皮を揚げ焼いていく。肉の方は適当な大きさに切って軽く醤油と塩、生姜ショウガとニンニクを少々、軽く揉んで少し時間を置く。


あとは焼き揚がった鶏皮を塩コショウを軽く振って皿に乗せれば、簡単に鶏皮せんべいの完成だ。


合間に耐熱皿に千切ったほうれん草と水を少し入れて、ラップしてレンチンしてる間にツナ缶と軽く醤油と麺つゆ、砂糖を少し混ぜる。レンチンが出来たらしんなりしたほうれん草を混ぜてもう一品。


次に揉んで漬け置いておいた鶏肉に片栗粉を混ぜてころもにして、鶏皮で取った鶏油チーユを使って揚げ焼きにしていく。

ニンニクの良い香りがリビングに広がり、キツネ色をした竜田揚げが出来上がった。


丁度良いタイミングで親父が風呂から上がってくる。


「お、いい匂いだな」

「有り合わせでわりぃがな」

「いや、充分だ」


バスタオルを洗濯機に放り込んで、ゆっくりと椅子に座った親父の前に冷えた500ミリのビールと、有り合わせのツナほうれん草と、鶏皮せんべいに竜田揚げを並べる。


あとは御下おさがりの松前漬けだ。


「ありがと」


親父がビールのプルタブを開けると、プシュッ!という音が響く。

最初の一杯でビールをグビグビあおり、ツナほうれん草と竜田揚げ、鶏皮せんべい、松前漬けをさかなにしてビールを3本空けた。


「………ありがとな、龍太郎りょうたろう


黙って食べて飲んでた親父が急に…なんだ?


「なんだよ急に?」

「お前には、お前達にはいつも苦労を背負わせて、ホントにすまない」


いきなり俺に頭を下げはじめる親父に面食らう。

仕事で家を空けがちだからか、俺と佳鈴かりんが苦労してるって思ってんだろう。

更にはおばさんの件だ、俺達の心的ショックを気にしての事だろう。


「その為に親父が頑張ってんだろ。だったら俺は、俺の出来ることしていくだけだよ。だから心配すんなよ親父」

龍太郎りょうたろう………」

「こっちは問題無いから、今は何も考えずにゆっくりしてくれ」


俺達よりも自分の事を心配してくれよ。


「親だからとか、子供の為にとか、そういうの抜きにして、親父は自分をいたわってくれ」


空になったビール缶を片付けて、もう一本ビールを出してから、俺は自分の分を食べ始める。

おつまみ用に味を濃くしてあるから、ご飯に丁度いい。


「…………ありがとな、龍太郎りょうたろう


それだけ言うと親父はビールをあおって、竜田揚げを口に運ぶ。


バラエティー番組の笑い声が響く中で食べていると、リビングの扉が開いく音がした。

眼を向けると、そこにはグラピーを抱きかかえた佳鈴かりんが居た。


「……お父さん」

「!」


そっぽを向きつつ、佳鈴かりんは親父の側に歩み寄る。


「その………さっきは…ごめんなさい」

「ん?あぁ、俺こそな」


洗面所での引っ叩いたことを謝ってきた。

自分の娘といえど父親だろうと、まぁあんな事があったら気不味いもんだよな。


少し沈黙したが、俺は佳鈴かりんのご飯を用意する。


「もう大丈夫なのか?」

「……………」


まだ少しダメっぽいな。

でも、3週間ぶりに姿を見せてくれたからホッとする。


俺は佳鈴かりんの席に料理を持ってくる。


「グラピーもメシにするか」


一部取り置いていた味付けをしてない、レンチンした鶏肉を包丁で粗く叩いてフードに混ぜて猫皿に盛り付ける。

佳鈴かりんから降りたグラピーはにおいを嗅いでから食べ始めた。食欲はホントにすごいなぁ。


龍太郎りょうたろう


自分の席に戻ると、不意に声を掛けられる。


「なんだ?」

「その……いつも、ありがとね」


それだけ言うと、手を合わせて「いただきます」と言って食べ始めた。


他の家庭はどうかは知らないが、不器用ながらも俺達家族は一時の団らんの時間を過ごして行った。


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