第52話 守れなかった誓い
前半は龍太郎の視点からです。
後半はセツからの視点です∠(`・ω・´)
龍太郎side
おばさんの遺体を発見して、俺はすぐに親父に連絡して、気絶した佳鈴を運び出して扉を閉めた。
親父たち警察が来るまで現場保存だ。
莉桜に続いておばさんまで…………
親父も到着して現場を確認すると、家族の様に接していたおばさんの遺体を見て息を飲み、部下の人に現場を任せて佳鈴を病院に送り届けてくれた。
俺は親父に事情を説明しようとしたが、アイツが……セツの奴が親父達の事情聴取に買って出てくれた。
「お前はあの子の側に居てやれ。私が色々言ってくる」
コッチ側の事情は誤魔化しつつ、色々やってくれるらしい。
ありがたい事だが、どうしても一度刀を交えた相手だから、信用するにはまだ危ないと判断している。
だが、アイツの佳鈴に向ける目は優しい。ただ優しいだけじゃない気もするが、邪な気配が無いから、今は様子見をしている。
「……フゥ」
ついついため息が出てしまう。
病院のベッドで意識を失っている佳鈴。
コイツにとって、おばさんの死はあまりにもショックがデカ過ぎる。
親しい人が続けて目の前で死んで、その死を間近で2回も目にしたら、どんな人間でもトラウマを植え付けられる。
いったい佳鈴が………何したってんだよ……………。
「………………うぅ」
「! 佳鈴?」
「莉桜…………ちゃ…………………」
「……………」
うわ言で幼馴染みの名前を言う佳鈴。
いっその事、このまま夢であって欲しいとすら思う………。
普段は色々悟られないように心を無理矢理落ち着かせてはいるが、正直俺だって結構キテる。
けど、俺まで折れたら、誰が佳鈴を支えられるんだよ。
「…………フゥ」
何度目かのため息が出ると、スマホのバイブがしたから開いてみると、見慣れない電話番号からだった。
無視を決め込んでいたが、ひたすらにブルブル震え続けてウザかったから出ることにする。
「…もしもし?」
『よ、あの子は大丈夫か?』
……アイツ、セツからだった。
そういえば、佳鈴を誘拐した時に佳鈴のスマホで俺に電話して来てたな。
電話番号変えようか?
「……今は病院のベッドで寝てる」
『そうか、コッチは警察の事情聴取が終わったから、その連絡だな』
「そうか」
『でだ、お前も見えてただろうが……』
「……あの黒いものの事か?」
『ああ、分かっているだろうが…………』
「………おばさんは、妖魔に殺されたってことだろ?」
『十中八九そうだろうな』
莉桜の家の前で漂っていたあの黒いもの。
アレこそが人外の……妖魔の痕跡だった。
『でだ、今警察の資料を盗み見てるんだが、ちょっと気になるもんを見つけてな』
シレッと何を盗み見てやがるんだアイツ……
『少し調べてみたい事が出来たから、何か分かったらソッチに行く。だからお前は、あの子の側に居てやってくれ』
「言われるまでもなくそうするさ」
『だが気を付けろよ、今回のやり口に見覚えがあってな、もしかしたら私の知っている奴かもしれん』
「なに?」
『確証を得る為にも、警察を一部誘導する必要がある。何かわかったら連絡するから、電話番号変えてくれるなよ?』
考えてた事を読まれ、アイツは電話を切った。
まさか……アイツが知っている妖魔なのか………?
アイツは凄腕だ。そんな奴が知ってるという事は、恐らくその妖魔は奴の手から逃れたことになる。
って事は、その妖魔は相当ヤバい奴だということは容易に想像がつく。
「…………チっ」
堅く拳を握ってしまう………。
小さな寝息を立ててる佳鈴に目を向け、俺は改めて痛感する。
守ると誓いを立てていながら、未だに佳鈴を守れていない。
自分に腹が立つ。
守ると言っておきながら、自分の底知れない鬼の力に恐怖して………佳鈴の身を危険に晒して…………。このままじゃ必ずまた佳鈴を殺してしまう。
もう…あんな思いは二度とごめんだ。
その為に学んでる人外滅討術だっていうのに………
(何も守れてねぇじゃねぇか……)
あの時の事は、佳鈴の記憶からは消えている。
出来ることなら、このまま知らないでいてくれた方が佳鈴の為だと思うが…………もし、妖魔や悪意ある奴等に佳鈴の秘密を知られてしまったら……………。
「う………ぁ……………」
っ!
佳鈴の声が聞こえ視線を移すと、佳鈴が目を覚ました!
「佳鈴…!」
「ぁ………りょう…たろう…………?」
少し寝惚け眼で焦点が定まってない。
「あた……し……………ぁ……あぁ……あぁぁ……っ!!」
脳が覚醒しかけた時、佳鈴は自分が気を失う原因となった光景を思い出してきた。
身体が震えだし、歯をカタカタさせながら頭を抱える。
「イヤ………イヤぁ…………!」
「っ!」
フラッシュバックしたか!?
莉桜の死に様を見て以降、佳鈴は死というものに明確な恐怖を抱いている。
誰でも死は怖いもんだが、佳鈴の場合は自分にとって親しい人間が目の前で死んでいる。
心に負うダメージは計り知れない。
「落ち着け佳鈴!」
「龍太郎っ……りょうたろうっ……!」
俺は佳鈴を抱きしめて、頭を優しく撫でながら優しく「大丈夫だ」と言い続けた。
佳鈴と俺以外誰も居ない病室の中、佳鈴の嗚咽とすすり泣く声だけが部屋の中で響き渡る。
なんで?どうして?
おばさんが、莉桜が死んだ
イヤだ
何度も何度もそんな思考が佳鈴の頭の中で巡り、俺は佳鈴が落ち着くまで彼女の頭を撫で続けた。
佳鈴から零れる心の吐露にも応え続け、彼女が泣き疲れるまで続けた。
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セツside
遺体を見つけてから数日が経ち、私は夜の街をバイクで駆けて、聴取を受けた警察署が一望出来る少し高いビルの屋上に不法侵入していた。
タバコに火を着けて、パチパチと音が少しだけ響いたあと、私は警察署の方へと眼を向ける。
千里眼で彼らの動きと捜査資料を覗き見して、欲しい情報が無いかを確認。
読唇術で彼等の言葉を読み取って情報収集しながら、精神的に参ってる一人の警察官が居た。
佳鈴と龍太郎の父親だ。
彼の周りだけエナジードリンクの瓶が転がって、睡眠も取れていない………いや、アレは寝ようとしても寝れない、っといった感じだな。
考えてみればそうだろう。
家族ぐるみの付き合いのある一家が立て続けに死んでいるんだ。
こんな異常事態に、たとえ警察の職に就いていて立派な人物でも堪えるに決まってる。
部下からも彼を心配する声が上がるが、事件の真相を解き明かそうと必死に捜査資料とにらめっこをしている。そして1人の部下が、捜査資料を持ってきた。
「警部、被害者の司法解剖の結果が出ました」
「そうか、死因は?」
「はい、死因はショック死だそうです」
「ショック死?ショック死の原因は?」
「はい……それが……………」
部下の口が口籠る。
言い難い事があるらしい。
「どうした?」
「その……警部、この被害者の遺体なのですが、検死官曰く、かなり不可解な遺体だそうです」
「不可解?」
「はい。まず、この被害者なんですが………」
意を決した部下が報告する。
「どうやら、被害者は赤ん坊を出産した事によって死亡したようです」
警部さんが目を見開く。
間抜けな声で「は?」が漏れ、一瞬思考が停止する。
「ま…まて、彼女…妊娠してなかったぞ!?」
彼の記憶では、彼女と最後に会ったのは凡そ2ヶ月前。娘である莉桜の葬式に参列した時だ。
もし彼女が妊娠していたらそれ相応にお腹が大きく膨らんでいただろう。
だが彼女は妊娠していたような様子など微塵も無かった。取り乱して大声を上げてしまい、周りからの視線を浴びて冷静になり、再び部下からの報告を聞く。
「すまない、続けてくれ」
「は、はい。えっと、被害者の下腹部にあった肉片は、どうやらへその緒と胎盤だったらしく、産道を赤ん坊が通った形跡もあったので、現場である自宅で出産したのは間違いないとのことでしたが……」
口淀む部下。
どうやらここからが言い難いことらしい。
「被害者の体内が……おかしいんです………」
「おかしい?」
「はい。被害者の体内の……臓器の大半が、無くなっていました」
「なんだって?」
「さらにおかしいのは、臓器が無いのに、それを摘出した痕跡が一切見当たらなかった事です」
つまりは、臓器を抜くのにお腹にメスを入れた形跡が無いという事だ。
「それだけでなく、骨密度も著しく低下していました」
「…………どいうことなんだ?」
遺体の状態があまりにもおかしく、検死官はショック死としか書けなかった。
そりゃそうだろうな。
あんな遺体の状況、過去に遡っても指で数えるくらいしかないだろう。
もっとも、あったとしてもその記録は消失しているだろうが………。
「……ちょっと待て、彼女が出産していたのなら、産んだ子どもはどうした?」
もっともな疑問だろう。
だが……
「それが、現場周辺及び屋内に子どもの姿はありませんでした」
「なんだと?」
「懸命に探しましたし、鑑識にも徹底的に調べてもらいましたが、調べれば調べる程に不可解な点が更に出て来まして……」
そう言って部下はタブレットの画面を警部に見せる。
そこに映し出されていたのは、いくつもの不可解な点。
まずへその緒と胎盤を調べたのだが、乾燥具合と科捜研での検査によると、出産したのは凡そ1週間から2週間前。
コレは彼女の死亡推定時刻とほぼ同じだった。
周辺を調べると、今度はまだお墓に入れてなかった娘、莉桜の骨壺の中身が無くなっていた。
更にはその遺骨の成分が、被害者の口の中から微量に検出され、龍太郎と佳鈴と私以外の足跡痕がもう一つあった事だが……
「彼女の羊水と血液成分の着いた裸足の足跡…?」
「はい、まるで出産の現場に居たかのような足跡の着き方で………足紋(足の指紋)も調べてみましたが、前科者リストに該当するものはありませんでした」
調べれば調べる程に不可解。
しかも出てきた結果が、さらに謎を呼んだ。
まず事故なのか、単独犯なのか、組織的犯行なのか、という所で行き詰まっている。
2ヶ月前に会った時点で彼女に妊娠の兆候が全くなかった。事故としての出産死なら、妊娠の兆候(お腹の膨らみや健康状態の変化)が明らかであるはずだが、それが一切ないため、事故説は否定される。
単独犯ならば、臓器消失や骨密度低下、臓器を摘出した痕跡がないため、単独犯が外科的手法で臓器を摘出した可能性は排除される。
殺人なら刃物や薬物の痕跡、索条痕、指紋、DNAなどが残るはずだが、捜査資料に何の痕跡もないと示唆されている為にこの線も薄い。
そして何よりも、彼女が妊娠していた事実が2ヶ月前の時点で確認されていない為に、単独犯が短期間で妊娠を偽装し、出産を模倣するのは非現実的。
そして組織的犯行の場合だったとしても、カルトや犯罪組織と関わるような背景がない。彼女の生活や交友関係を調べても、組織的な標的になる理由が見つからない。
仮にカルトによる儀式殺人なら、儀式の痕跡、祭壇、記号、血痕などが現場に残るはずだが、そのような証拠がない。
そして産んだ子どもの行方だ。
「……………頭が痛くなってきた」
警部は頭を抱えて、それでもやらなければと一つ一つ可能性を潰していく事にし、部下に次の指示をしていった。
「警察じゃあ、調べられてここまでか………」
仕方ないとはいえ、あの警部さんには悪いが、そのまま行き詰まってくれていた方が私としては助かる。
ここから先は人外の領域だ。
パチパチっ
夜の静寂の中、タバコの弾ける音だけが響くと、私の上で旅客機が通り過ぎる。
飛行機のキイィィンっという音が聞こえると、その音に隠れて暗い影が私に襲い掛かる。
ドドドドウンッッッ!!
迫って来た影に向けて大型拳銃が火を吹く。
飛行機が通り過ぎ、月の光で周囲が明るくなると、私の足元には人の形をしたモノが転がっていた。
「カダウェル・モートゥスか…………こりゃいよいよ隠す気はないらしいな」
私が撃ったモノには、撃った弾痕の他に、古い傷があった。
だが、どれも生前に付けられた傷だ。
死体に死霊を取り憑かせて操る死霊術の一つ。ラテン語で死操術…カダウェル・モートゥスと呼ばれる禁忌術だ。
「今のは挨拶代わりってところか?」
聞こえるように言ってみるが、返事はない。
「そうか、なら、また殺してやるよ」
もう30年前だったか?
娘を殺された親から依頼を受けて、行ったらまさかの死霊術を使う、魂が妖魔化していた人間を相手にするとは思わなかったな。
『殺しても無駄さ!! 何度でも蘇って、ワタシはワタシの目的を叶えてやる!!』
パチ、パチパチ
咥えていたタバコを一吸いして紫煙を吐き出すと、音も無くもう一体の死体が背後から私に襲い掛かる。
が、視えてるんだよ。
ドウンッ!
カダウェル・モートゥスは、死体に死霊を取り憑かせる。
死霊術は死霊の魂を縛り、使役する術。
なら、その死霊を縛るモノを破壊すれば良い。
私の魔力の込もった弾丸なら簡単に撃ち壊せる。
「今度はどれだけの数を揃えているかは知らねぇが………」
動かない死体の頭を踏みつけると、死体は灰と化し、アッという間に姿形が無くなっていった。
ちょっとブチ切れそうだ………
「私の姪孫に手を出した事、必ず後悔させてやるぞ、F,E!」
姪孫とは、自分の兄弟の孫の事を言います。
セツの弟の孫である佳鈴はそれに当たりますね(≧▽≦)
少しだけ戦闘シーンも書けた!
そしてそろそろ第一戦闘配備!
今回は以上です∠(`・ω・´)




