第49話 子ども食堂の温もり
では佳鈴の視点からどうぞ∠(`・ω・´)
龍太郎からRain連絡が来た。
『準備が出来たから来てくれ』
ぶっきらぼうな文面が龍太郎らしくてクスッしながら、京子さんに準備が出来た伝えると、私達はみんなで筧庵へと行く。
っと、その前に用意してあったオルカくんのご飯を出した。
とろみ系のウェットとドッグフードを混ぜてオルカくんに出すと、尻尾を勢い良くブンブン振りながら食べ始める。
アッという間に食べ終わると、私達がご飯を食べに行くのを分かっている様子で玄関までお見送りしにくるオルカくん。
手を振って行くと、オルカくんは「ここで待ってるよ〜」と言っているかの様におすわりしてから、私達が見えなくなると伏せて鼻息をフンっと鳴らしてから眠り始めた。
で、私達は店内に入り、子供達専用の二階に移動。
子ども達が元気良く上がっていき、各々好きな所に座り、ご飯が来るのを待っていた。
「今日なんだろね?」
「ハンバーグがいい!」
今か今かと待っていると、ご近所さんと、子ども食堂を利用している親御さん達も集まってきた。
子ども達はみんな知り合いだから気兼ね無く話しかけて行き、京子さんも親御さん達に挨拶をして行く。
初めてここに来た時は、まさかここまで多くの人が食べるのに苦労してるだなんてビックリしたし、知りもしなかった。
そしてついに子ども達の待ちに待ったご飯が出てきた。
「よっ!待たせたな!」
大皿にど迫力に盛られたモノを見て、子ども達はみんな目をキラキラさせた。
チーズinじゃがいももちの和風あんかけがドカッと置かれると、子ども達はチーズのいい香りに口の中にヨダレが溜まっていく。
そして次に置かれたのは肉料理。
·紫蘇巻きハンバーグの和風照り焼きソース
「わぁ〜!!」
「おいしそう!」
ハンバーグが出て来てテンションが上がる子ども達の前に野菜料理も運ばれてくる。
紫蘇の葉で巻きやすいように細長くなってるからハンバーグと言っていいのか分からないけど。
·なすと大根の味噌チーズ焼き
·キンピラ春巻き
そして汁物が入った寸胴が運ばれる。
·れんこんと豆腐の鶏むねとろみ梅スープ
「あら、美味しそう」
京子さんが好きな梅の香りが、私達のお腹をさらに空かせてくる。
「さ、みんな配るから器を持って並びな!」
筧さんの声に子ども達は「ハーイ!」と声を上げると、みんな順番に並び始め、人数も多いから私も職員さん達の中に入ってる子ども達にご飯を配っていき、全員に行き渡ると、
「それじゃあみんな、手を合わせて、いただきます」
「「「「「いただきます!」」」」」
京子さんの合掌で食べ始める。
私も手を合わせて、まずはれんこんと豆腐の鶏むねとろみ梅スープに手を付けた。
「!」
スープをすくうと、まず昆布とかつお出汁の優しいうまみの香りが鼻をくすぐる。
そこに梅干しのほのかな酸っぱさと、ごま油の香ばしいニュアンスが混ざって食欲をそそる。
ゆずの皮のような爽やかさはないけど、梅の柔らかな酸味が温かいスープにどこか懐かしくも新鮮な風味を吹き込む。
そしてスープを口に運ぶと、とろみのあるスープが舌を滑らかに包み込む。
片栗粉のとろみがまるで温かい毛布のように口の中で広がり、小さな子でも飲みやすくてまろやか。
梅干しの酸味がピリッと効いて、子どもたちの顔が一瞬「すっぱ!」と驚くが、すぐに「でもおいしい!」と笑顔に変わる。
醤油とみりんの甘じょっぱさが、梅の酸味を優しく引き立て、だし汁の深いコクが全体を調和させる。
れんこんのシャキシャキとした歯ごたえが、子どもたちに小さな口の中で楽しい音を奏でる。
薄く切られたれんこんは、噛むたびに軽快な「シャクッ」という音を立て、スープの柔らかなとろみと対比をなし、絹ごし豆腐は簡単に崩れ、口の中でふわっと溶けるように広がる。
3歳児の小さな口でも安心して食べられる。
飲み進めるうちに、梅干しの酸味が最初の一瞬から、じんわりと心を温めるような懐かしさに変わる。
鶏ひき肉の控えめなうまみがスープに奥行きを加え、まるで家庭で母ちゃんが作ってくれたような安心感を子どもたちに与える。
ごま油のほのかな香ばしさが後味に残り、次のひと口を誘う。
スープを飲み込むと、梅の爽やかな酸味が口の中にほのかに残り、さっぱりとした余韻を残し、子どもたちは「もう一杯!」とおかわりをねだりだした。
筧さんが「ほらほら、梅の力で明日も元気だぞ〜!」と笑いながら鍋を運ぶ。
スープの温かさが子どもたちの胃袋を満たし、食堂全体を包む温もりとともに、心までじんわりと温める。隣の3歳の子が私の裾を引っ張って「すっぱいけど好き!」と無邪気に笑った。
「これもおいしいよ!」
笑顔で小さなフォークに刺したものを私の口に持ってくる3歳の子。
刺さってるのは紫蘇巻きハンバーグの和風照り焼きソース。
「食べて良いの?」
「うん!!」
私はその子に勧められたハンバーグを口に入れる。
紫蘇のシャキッとした食感とハンバーグの柔らかな肉汁が弾ける。
照り焼きソースは甘さと醤油の塩気が絶妙に絡み合い、子どもたちの舌に、いつものハンバーグのくらべてちょっとした特別を与える。
紫蘇のほのかな苦みと爽やかな風味が、ソースの濃厚さを軽やかに引き、紫蘇の葉はシャキシャキと軽快な歯ごたえで、まるで新鮮なレタスのよう。
食べ進めるたびに、紫蘇の清涼感がハンバーグの肉のうまみと調和し、照り焼きソースの甘じょっぱさがほのかな安心感を呼び起こす。
生姜のピリッとした風味がアクセントとなり、味に奥行きを加えて、飲み込むと紫蘇の爽やかな香りと照り焼きソースの甘い余韻が口に残る。
「うん、ご飯が欲しくなるね」
「うん!」
白いご飯と交互に食べて、口にハンバーグの油で口元がテカテカになる子どもの口をティッシュで軽く拭いてあげると「えへへ」っと嬉しそうに笑う。
そして次にお箸で摘んだのは、チーズinじゃがいももちの和風あんかけ。
お腹に溜まりそうで腹持ちも良さそう。
私はそれを口に運ぶ。
噛むと、表面のカリッとした焼き目が軽い音を立て、すぐに中のもちもちした食感が現れる。
チーズがとろりと溶け出し、チーズの濃厚なコクがじゃがいもの素朴な甘さと溶け合い
、和風あんかけは、だし汁のまろやかなうまみと醤油のほのかな塩気が舌を包つ。
食べ進めるうちに、チーズの濃厚なうまみがじゃがいもの素朴な甘さを引き立て、和風あんかけの優しいだし風味が全体を調和させる。
なすと大根の味噌チーズ焼きも、きんぴら春巻きもご飯が進む!
ってか味噌とチーズって合うんだ!?
「おかわり!」
「俺も!!」
「ぼくも!」
「わたしもおかわり!」
みんな各々おわかりをして、筧さんも龍太郎も手早く盛り付けていく。
そしてアッという間に作ってくれた料理は、子ども達と私達のお腹の中に綺麗に収まった。
「それじゃあみんな、ごちそうさまでした」
「「「「「ごちそうさまでした!!」」」」」
そしていつもの様に、食べ終わった食器は自分達で階段下の返却口まで持っていく。
持てない子どもの分は私や京子さん、年長組の子ども達が代わりに持っていく決まりになっていて、一人づつ、厨房の人達に「ごちそうさまでした」と言ってから筧の家へと戻っていく。
子ども食堂を利用した親御さん達も筧さんたち調理スナッフさん達に頭を下げてお礼を言い、子どもと一緒に帰って行った。
「じゃあ龍太郎、あとでね!」
「ああ」
私も子ども達と一緒に戻る。
玄関を開けるとオルカくんが尻尾を振りながらおすわりして待っていて、純也くんが頭を撫でると嬉しそうに目を細める。
続いて子ども達もオルカくんを撫でたり抱き着いたりして愛情表現をしていき、オルカくんは嬉しそうな顔をして子ども達の顔を舐めていく。
京子さんと純也くんは2人で給湯室に行くと、子ども達の人数分のコップをトレイに乗っけて、冷蔵庫の中になるお茶を入れていって私達の元に持ってくる。
私もお茶を受け取って飲む。
食べた後でもサラッと飲めるお茶の爽やかな香りと、ほのかな甘みが満腹のお腹でもスッと染みわたる。
年少組の子ども達はウトウトと船を漕ぎ始め、職員さん達が洗面所に連れて行って歯磨きをしに行き、純也くんは勉強をしている子たちにわかる範囲でお手伝い。
さすがに成績優秀なだけあって、解らない所をわかりやすく教えていってる。
で、私は喋りたい子達が集まってきておしゃべりしていた。
今日なにがあったのか、どんなことをしたのか、こうしたらああなったとか、子ども達はしゃべりたい事をしゃべり、私は一つ一つ聞きながら相槌を打ったり話を続けたりして子ども達と笑い合った。
「佳鈴ちゃん、今日はありがとうね」
「いえいえ、こっちこそお呼ばれさせてもらいました」
「フフ、少しは元気になった?」
京子さんが声をかけてきた。
今日の私の様子を見ての気遣い。
莉桜ちゃんを喪った心の傷を心配してなのはすぐに分かった。
一ヶ月前、莉桜ちゃんの葬式で泣き続けた私のを、京子さんが見ていたからだ。
「はい、今日はありがとうございます」
いつまでもクヨクヨしてたら莉桜ちゃんに合わせる顔がないもん……。
でも、京子さんは見透かしたように寄り添ってきて、私の頭を撫でながら手を優しく握ってきてくれた。
「でも、無理はしちゃダメよ。
自分が思ってる以上に、心っていうのは繊細だからね?」
少しシワのある優しい手が、これから私が背負うであろうものを少し和らげるかのように。
「………はい、ありがとうございます」
胸の奥底がポカポカする。
こう言ったら失礼なのかもしれないけど、これが年の功っていうものなのかな?
毛布で包んでくれるような暖かさのある言葉に、私は感謝した。
そしてふと見上げると、室内にあった時計はもう21時を回っていた。
そろそろ帰る準備しないと。
龍太郎もそろそろ片付けも終わるだろうし。
私は立ち上がろうとするけど、子ども達はまだ構って欲しい様子で、純也くんから強奪したスマホでYouTubeeを開いて「これがおもしろい」と、とあるVTubeeさんのチャンネルを見せてきた。
登録者8万人で結構人気みたいね。
勝手にメンバーシップにも加入されてるみたい。
可哀想にと思いつつ、私は子どもから手渡されたそのVTubeeさんの画面を見てみて、後悔した。
「ブーーーッ!!」
視た瞬間吹いた。
『オハピョンピョ〜ン!リアル系VTubeeのシュリちゃんねるの時間だよ〜♡』
…………ほぼ素顔のままでウサギ耳と尻尾を着けた3Dアバター風に加工しているみたいだけど、その顔と声は完全に朱里さんだった。
何してんのこの人?
『今日はシュリサーさんが提案してくれてた企画の、《ふんどしテーブルクロス引き》にチャレンジしていきたいと思いま〜す!』
イェーイ♪ドンドンパフパフ〜♪
そしていつもの巫女服っぽい服装なんだけど、企画で下半身を脱いでフンドシ姿を晒している………。
下に見せパンみたいなのを着ているわけでなく、ホントに下半身はフンドシ一丁の姿。
センシティブ判定受けないのかな?
映像の中で映るのは、ふんどしのヒラヒラの部分を机の上に乗せて、その上に焼いたお肉の塊を乗せたお皿を置くと、それをテーブルクロス引きの様に引っこ抜くという。
ただし、使うのは腰の引く力だけ。
手を使うのはなし。
『ちなみにこのお肉は何のお肉なの〜?』
テロップ:100グラム1万円する超高級肉500グラムです。
『ウソ!? 食べたい!!』
テロップ:テーブルクロス引き成功したら食べられます。失敗したらスタッフが美味しくいただきます。
『え〜!? それは負けられないわ! 絶対に食べる!!』
しかも結構なお金かけてる……。
どんなブランド肉なのよそれ?
そして開始されるチャレンジ。
『せ〜の、ホッ!!』
ふんどしと共に引っ張られたお肉のお皿は床に落ちた。
チャレンジ失敗。
一応床にはブルーシートを張ってあるから、多分……衛生面では大丈夫かとおもう……。
『うが〜!! 失敗した〜〜!!』
悔しがる朱里さんの目の前で顔にモザイクのかかった赤い髪のロングヘアーのスタッフさんがお肉を食べる………ってこの赤い髪………まさか………。
顔が引きつる感覚が自分でもわかる。
『次こそは!』
で、何回かの挑戦の末にお肉にありつけた朱里さん。
幸せそうに食べてて美味しいと分かるけど、朱里さんついこの間まであの人の事、嫌ってなかったっけ?
『美味〜い!! 美味しいお肉ってホント最っ高ーーー!!』
「……………」
知人の予想だにしてなかった意外すぎる活動を知って中腰の姿勢で固まっていると、そこにイタズラを仕掛けようと様子を見ていた子どもに私は狙われていた。
多分、男の子なら誰もが通った道だと思う。
やった側は面白くても、やられた側は尋常じゃない痛みに襲われるアレ。
キランっ!!
子どもの目がウケ狙いの光を宿した。
「カンチョーーー!!」
ズビッッッ!!!
「んぎっっっ!!?」
「わぁっ!?」
「ふえぇっ!?」
突然のお尻の衝撃に悲鳴を上げ、その悲鳴に近くの子ども達もビックリしてしまう。
しかも、子どもの一人が私のスカートを思いっきり握ったままビックリしてしまった為に力が入り、スカートのホックがプチっと音を立て…………
ガンっ!!
「ブッ!!」
顔面を床に勢い良くブツけながらスカートが脱げ、パンツ丸出しのお尻を突きだした状態になった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」
顔面とお尻の両方の痛みに悶絶して転げ回る私。
「お、おねえちゃん!? 大丈夫!?」
「プハハハハハ! スゲー!!w」
「こら!アナタ達何してるの!?」
そしてそんな私を見て爆笑してる子と、痛そうにしてる私を心配した子。イタズラして来た子を叱る京子さん。
騒ぎを聞きつけた純也くんも来てさらにカオスになる。
「おいおいナニやってんだよ?」
「今のスゲーおもしろい! SNSに上げたらバズるかも!」
「止めないか! そんなもんデジタルタトゥーになるぞ!ってかそれオレのスマホだぞ!」
「じゃあ友だちにRainで共有させて! それなら良いでしょ?」
「もっとヤッちゃいけない事だよそれ!?」
私の醜態を純也くんのSNSにアップしようたり、友だちに共有しようとしする子を必死で止めてた。
オルカくんも心配してきてくれた……と思うんだけど、オルカくんは犬らしく私の臭いを嗅いでからペロペロ舐め始めた。
私のお尻を………。
そこにさらに筧庵で片付けを終わらせてきた龍太郎までやって来た。
「お〜い佳鈴、そろそろ帰る…ぞ…………」
龍太郎が現状の惨状に固まった。
子ども達を叱る京子さん。
子どもの暴走を止めようとする純也くん。
子どもにカンチョーされ、スカートが脱げてパンモロで顔とお尻を押さえて悶絶する私。
私を心配してお尻を舐めるオルカくん。
「……なんだこの状況」
半ば呆れた様子の龍太郎は頭を掻きながら、とりあえず子ども達を叱ってた京子さんに事情を聞き、彼は私のお尻を見た。
お願い、恥ずかしいから見ないで……………。
「……家にボ◯ギノールあったかな?」
フンドシテーブルクロス引きはとあるVTuberさんから使っても良いと許可を得ました(✯ᴗ✯)
大切に使わせて貰いましたよ!
今回は以上です∠(`・ω・´)




