第48話 筧の家
さて、そろそろ本編を書きましょか!
では、どうぞ( ^^) _U~~
翌週、また私は頭から白煙を上げていた………。
やっと………やっと中間テストが終わった…………。
頭の中がグルグルしててヤバい……
「佳鈴ちゃん………大丈夫…?」
「あ……うん………」
「全然大丈夫じゃないなコリャ」
「数学以外ならそれなりに出来たんだろ?」
「ア………ウン、多分」
「なら赤点は回避出来てるだろ」
「え、そうなの?」
「いつも通りならな」
そう言うと龍太郎は手にしてたペットボトルのジュースを私の机の上に置いて、それを私は何も考えずに開けて飲んだ。
少し生き返る。
「ゴクっゴクっ……ぷはぁ~」
風呂上がりのおっさんのような感じに、純也くんは苦笑いして、龍太郎は窓の外を見ていた。
グランドで部活を始める人が多く、色々と掛け声を上げ始め、生徒の声が響いてくる。
私も何か部活に入ってれば良かったかなぁ?
「ありがと龍太郎」
少し頭も落ち着いて来たから、そろそろ帰る準備をしないと。
今日はコレから純也くんのところでイベントあるし。
前々から純也くんから打診があって、彼の所で晩御飯を作って一緒に食べようという事になっていた。
純也くんなりの気遣いで、私も行くことに抵抗はない。
っというか既に何回かお邪魔させてもらっている。
孤児院で暮らしているとはいえ、純也くんも龍太郎と一緒にバイトをして、稼いだお金を貯金と施設運営に回しているって前に聞いたことあるし。
「みんなどうしてる?」
「ヤンチャになってるよw
もう毎日がてんてこ舞いだよw」
孤児院じゃあ純也くんは年長者で他は確か小・中学生と年少さんは3歳児までいる。
みんな様々な理由で来た子達だから、私も龍太郎も……莉桜ちゃんとも一緒に遊んだりして交流していた。
「オルカも元気してるぜ」
「オルくんにも会えるの楽しみだなぁ」
期待に胸を膨らませながら、私達食材と福来軒でお菓子を買って、両手いっぱいに買い込んで行く。
この間の事で気にはしていたけど、秀蘭さんはいつものように笑って「大丈夫だよ」と言っていた。
「またいつでも寄ってくれよ!
アンタ達に来てくれることが、アタシにとっては一番なんだからね!」
そこまで言われたら、また次も寄ろうっと☆
次は金柑の蜜漬け羊羹頼もう!
でも、ちょっと買い過ぎたかな?
「いや、これくらいなら持って3日くらいじゃねぇか?
育ち盛りが今5人もいるし」
今で確か18人の子供たちがいる純也くんところの孤児院は、職員さんも含めて24人。
今日は私も下拵えを手伝うつもりではいるけど………
「佳鈴は子供たちの世話の手伝いを頼む」
「そうそう!佳鈴ちゃんはチビ達の面倒をたのむよ」
なんか毎回こういう風に断られてる………。
なんでだろ?
(佳鈴に料理をさせるわけにはいかない。なんせ……)
(佳鈴ちゃんに料理をさせるわけにはいかない!だって……)
((危険過ぎる!!))
龍太郎と純也くんがそう思うのも無理はなかった。
私が中学生の時、選択授業の調理実習でお味噌汁を作った。
味も見た目も普通………なのに、当時家庭科の先生に味を見てもらったんだけど…………。
『う……』
私のお味噌汁を一口した途端、先生は意識を失った。
しかも先生は妊娠中で、救急車で病院に運ばれてお腹のお子さんを早産してしまった………。
お医者さんも原因不明と特定出来なかった。
他にも私の作ったお味噌汁を飲んだ人は居て、それぞれ違う症状が出ていた。
・飲んだ当日は普通に過ごしていたが、翌日になったらその日の記憶が無くなっていた。
・家に帰ってから1時間に1回の割合でトイレの住人になった。
・肌荒れが改善した。
・寝たはずなのに徹夜したかのように頭ガンガン痛い。
龍太郎この時に別の選択授業に出ていて、私が調理実習をしていた事を知らず、それを知った時に彼の顔から血の気が引いていたのは今でも覚えてる。
それ以降、龍太郎が私に料理をしない様に別の方向へと誘導していって、私の料理スキルはあまり高くない。
どうしてそうなるのかなぁ…?
自分の事だけど、自覚が無かったから尚の事質が悪い。
そんなこんなで喋りながら歩いていると見えてきた。
買食い商店街の少し外れの住宅街に近い所にある目的地に着いた。
『児童養護施設 筧の家』
純也くんがお世話になってる所だけど、ここに入る前に真向かいの定食屋さん『筧庵』に私達は入る。
いらっしゃいませ!っと活気の良さが飛び交い、会社帰りのサラリーマン達や部活帰りの学生達がモリモリご飯を食べていた。
いつも通りの盛況っぷり。
「おう純也!帰ってきたのか!?」
「おう!今日は龍太郎達も一緒だぜ!」
「お邪魔します」
「お邪魔しま〜す」
威勢の良い声が店内に響いた。
この定食屋さんのオーナーであり、筧の家の責任者でもある筧 芳実さん。
料理頭巾で頭をスッポリと覆い、トンカツを揚げながら私達に目を向けると、私達の買ってきた食材を店員さんに受け取ってもらって、龍太郎は何も言わずに厨房へと向かう。
龍太郎の料理の腕を知っている筧さんは厨房に入った龍太郎に指示をすると、龍太郎は手早く調理に入った。
龍太郎を知ってる常連さんもいて、店内も少し盛り上がり、私と純也くんは龍太郎に一声かけて筧の家へと向かう。
すると玄関前で寝ていた一匹の大型犬がノソっと起き上がり、ピーンの伸びてから私達を視認すると尻尾をフリフリして私達に向かって歩き出した。
純也くんがお世話してる秋田犬のオルカくんだ!
「久しぶりだねオルカくん!
元気にしてた?」
オルカくんは私達の前までノソノソ歩いてくると、私の匂いをクンクン嗅いで私の顔をペロペロ舐めて愛情表現。
私も頭を撫でるとさらに嬉しくなってきたのか、オルカくんは前足を上げて私にのしかかって来たw
「ク〜ン」
「やん、もう〜w」
尻もちを着いても顔をペロペロ舐めて愛情表現してくるオルカくんに、私は笑いながら撫でくり回す。
ひとしきり舐めて満足したのか、オルカくんはおすわりして私が立ち上がるのを待つと、筧の家の玄関を器用に前足で開けて中に入る……前に、置いてあった濡れ雑巾を器用に使って肉球を拭いて行った。
ホントに賢い子だなぁ。
ドタドタっ!!
「あっ!かりんおねぇちゃんだ!!」
「ひさしぶり〜!!」
「うん!久しぶりだね!」
オルカくんが呼んできた子供たちが走って私に抱き着いてきた。
ちょっと見ないうちにホントに成長してるなぁ。
「いらっしゃい佳鈴ちゃん」
「お世話になります、京子さん」
奥から子供たちに混じって、芳実さんの奥さんの京子さんが柔和な笑顔で迎えてくれた。
玄関から居間に行くと、広いリビングで子供たちが遊んでいるか宿題をしているかのどちらかで、私に気付くと笑顔で駆け寄ってくる。
「おねえちゃん、りょうたろうにいちゃんは?」
「龍太郎はお店のお手伝いしてから来るよ」
「ほんと!?えへへ~♡」
1人女の子が龍太郎が来ている事に満面の笑顔になる。
龍太郎、モテてるよ〜w
「ねぇ!それなに?」
「ご飯食べ終わったあとのデザートだぞ〜!」
「わ〜い!!」
子供達の歓喜の声が上り、家の中はてんやわんやw
ここは賑やかで良いなぁ。
少しの時間、子供たちと一緒に遊んでいたらいい匂いがしてくる。
シソの香りと、それにチーズの匂いもする。
お肉を焼く匂いもしてきた。
龍太郎がここで料理をする時は、決まって定食屋で出せるかもしれないという新作料理を出す。
それを筧さんが品評して、新たな一品として出すか決めていた。
今のところ勝率は2割。
味、風味、食感、見栄えに関しては容赦が無い。
料理に関しては滅茶苦茶ストイックなのよあの人。
龍太郎も同じような気質だからだろうか、筧さんとは結構仲が良い。
メニューを知らない私は、「今日はどんなのかな〜っと」っとのんびり子供たちと一緒に待っていた。
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龍太郎side
「天ぷら揚がりました!」
「3番テーブル片付け入ります!」
「お待たせしました!生ビールです!」
筧庵の中はピークで、さらなる賑わいの声で溢れてた。
子供たちに出す料理の仕込みを終えて、筧さんと目配せをしながら、俺は受けた注文の唐揚げを油から上げて手早く盛り付けをしてお客に出していく。
運ばれたソレらを肴に大人達は酒やビールを仰ぎ、ご飯を頬張る。
別に賃金が出ている訳じゃない。
あくまでもボランティアだ。
バイトは別でやってるし。
この場所がこれだけ賑わっているのは、筧さんの人柄と努力と心情の賜物だ。
次々と入る注文を捌いていると、ここでは聞き慣れた声の人達がやってきた。
この街の区役所の連中だ。
「……またお前等か」
「すみません、筧部長」
「おい、いつまでも俺はお前達の上司じゃないんだぞ?」
「それは……重々承知しています。
………ですが」
筧さんは元々、この街の区役所で福祉支援課で部長をしていた。
この人は定年退職した後、今までの知識と実情を知っている身としてこの街への献身で福祉に関わる事を信条とし、夫婦で児童養護施設『筧の家』を作ってこの街に貢献して来た。
だが、年々増えていく食べることの出来ない家庭が増えて来て、筧さんは独自にこの店を始めて、子ども食堂としてのサイクルを創り上げた経緯がある。
歯切れの悪い区役所の元部下達の様子に、筧さんはハァっとため息を付くと、右手を差し出した。
「どうせまた持ってきたんだろ」
「…………すみません」
申し訳無さそうな顔をしながら役所の人は懐からあるステッカーを差し出す。
『子ども支援庁認定』とデカデカとアピールするようなステッカー。それを受け取ると、筧さんはすぐにゴミ箱に棄てる。
「ったく、国のアホ共が」
「……本当に、毎回申し訳ありません」
役人達は筧さんに頭を下げ続けた。
もうコレで4度目だ。
子ども支援庁と呼ばれる庁が出来てもう2年。
子どもの権利を守り、子育て支援を強化するため、これまで各省庁に分散されていた子どもに関する政策を一元化するという名目で設立された子ども支援庁だが、やってる事は税金の無駄遣いばかりで、子育て支援を強化するどころか出生率をこの2年で大きく下げ、子育てしにくい環境にしてきた。
ただでさえここ数年増税しまくって買い物するのも財布に痛手なんだが、子ども支援庁が出来てから拍車が掛かったように生きづらい世帯が増えた。
筧さんのようにボランティアで子ども食堂をやる所が増えて来て、それを子ども支援庁はあたかも自分の政策のようにしようとしてこのステッカーを全国の子ども食堂をしている民間に配り続けている。
「国がアホ過ぎて、子どもや大人ですら食べていくのに必死だってのに、まだこんな事続けてるなんてな……」
民間の善意を、国が己の功績作りに利用しようとしている事に呆れ返り、本来なら子ども食堂が無くても国民全員が食べていけるようにしていかないと意味が無いとブチ切れている。
ニュースでもSNSでも10億円もの予算が有りながら、やっている事がステッカー作成と広告を出して庁益を作ることだけでかなり批判されまくってたな。
役所関係者も呆れていたが、役所のトップが国である以上、従わなければならなかった。
「………過ぎたこと言っても仕方ない。お前達もなんか食べていくだろ?
注文していけ」
「いつも本当に恐縮です」
「とりあえず試作の新商品がある。サービスしてやるから食べていけ」
俺に目配せする筧さん。
俺は仕込んだものを仕上げにかかり、出来上がったものを出した。
目で楽しんで貰うために、一品出来上がったもの出す。
その見栄えに役人達も「ホ〜」っと口から漏れ、口の中に唾液が溜まっていく。
1人が口に運び、ビールを飲んで「美味い!」と口にしたら、あとはあれよあれよと料理とビールを消費していった。
ってか、このままじゃ子供達が食べる分がアッという間に無くなるな。
俺は新たに子供達が食べる分をかなり多めに仕込み始める。簡単だからそんなに難しくはない。
筧さんも出した一品を口に運ぶと、うんっと首を縦に振って、今後のおしながきの一つに追加してもらった。
さて、子供達を呼ぶか。
俺はRainで佳鈴達を呼び出した。
最近食ってばっかの描写が多いけど、まいっか!
(⌒▽⌒)




