第43話 80年越しの再会
お疲れ様ですよ〜∠(`・ω・´)
ほな、セツの目線からどうぞ〜!
パチパチ……パチ………
あれから1週間が過ぎ、私は誰も居ない公園で1人プカプカ紫煙を燻らせながら、暇を持て余していた。
怪我も治り、体力も回復したからソッと彼等の前から姿を消し、適当にホテルで部屋を取って改めて休息を取ることにした。
んで、まぁ何もする気が起きず、只々金と時間とタバコだけを消費し続けた。
龍太郎と戦って以来、そして佳鈴って子に助けてもらって以来、私は久し振りの日本を歩き回って、自分が知ってた日本と今の日本とを見比べていた。
街並みは様変わりしていのは勿論だが根本は変わってない。
変わったとしたら外国人が多く住むようになった事だろうか?
あと食べ物が美味い。
数々の国の料理が日本に入ってくる度に魔改造を施されて独自発展していく。
同じ日本人と言えど、私は少し驚きながらハンバーガーを食べ、そして冒頭に至る。
こんなにゆっくりとした時間を過ごすのはホントに久し振りで、少し微睡んでしまいそうになった…時だった。
「おい、アンタ」
突然声を掛けられて、青い目を声の聞こえた方に向けると、多分病院から許可でも得たのだろうか、車椅子に乗って首から外出許可証を提げた爺さんがいた。
「……なんだジイさん?」
「この公園は禁煙なんだよ、悪いがタバコなら吸える所で吸ってくれないか?」
そう言うと爺さんは公園に設置してあった案内板を指差し、公園内での喫煙はご遠慮くださいという文言がある事を私に教えた。
ホントに喫煙者にとって住みづらい。
だが、己の不注意だから文句も言えない。
「……すまない、見えてなかった」
注意力散漫だった事を謝り、タバコを携帯灰皿に仕舞っていると、ふと目の前の爺さんは驚いたかのような顔をして私を見ていた。
「なんだ?」
「ん?あぁ、最近はアンタみたいな外国人は珍しいと思ってな」
「珍しい?」
「近頃の外国人は日本のルールを無視して、あまつさえ自分の国ではとか言って正当化してきて街を汚していってな。だからアンタみたいに自分の非を認める外国人は珍しいと思ってな」
「…………」
この爺さんの言う事も分からなくはない。
ここ近々の日本はリベラル化やグローバル化の影響か、訪日してくる外国人は多くなった。
ただ、お金を使ってくれる分には構わないが、自分たちの国の常識を世界の常識のように言い訳してくるアホは確かに存在する。
日本以外の一部の国では「自分の非を認める」ことは「弱みを見せる」というの愚行として認識されている事があり、その為に頑なに謝らないことが是とされていたりもするが、それに限らず日本の低姿勢な対応は己に自信が無いと見られて舐められたりしているのも事実だからなぁ。
だが一部とはいえ、私が育ったアメリカと比べたら、それは価値観とアプローチが異なるだけの話。
アメリカは個人主義的文化が強く、個人の責任や自律性が重視される。
非を認めることは、自分が明確に間違っていた場合に、誠実さや正直さを示すため行われる。
でもだからといって、自分の国の常識で訪れた国に迷惑をかけてしまうことは別問題だ。
「ここは日本だろ、私の住んでる国じゃない。
訪れた場所の習慣や文化に従うべきだって諺くらい、私の国でもあるさ」
When in Rome, do as the Romans do.
ローマにいるときは、ローマ人のようになす。
あんまり知られてないけど、ちゃんとこういう言葉はあるんだよ。
「……そうか、それはワシも知らんかったな」
「人生勉強っていうだろ?どれだけ歳を重ねようが、いくつになっても知らない事の方が多いさ」
だからその都度勉強していけば良い。
私は目の前のジイさんの眼を見ながら言い、少し微笑んだ。
ジイさんの方も微笑みながらセツに向けて少し申し訳なさそうにしながら頬をポリポリ掻いた。
「じゃあな、悪かったなジイさん」
買ってきたものが入った袋を手にして、私は去ろうと出口に向かって歩き始めた時だった。
ガシャンという音と共にジイさんの悲鳴が聞こえ、驚いて振り返ってみると、ジイさんが白人と黒人の2人組の外国人に車椅子をひっくり返されて倒れていた。
この2人見たことあるぞ。
たしか迷惑配信で有名なThe Wrecking Renegadesとかいう連中だ。
マルコムとオリバーとかいう二人組で、パリのルーブル美術館前で許可なく巨大なスピーカーで音楽を流して観光客の写真撮影を邪魔し、警備員が来るとマルコムが叫びながら逃げ、オリバーがドローンで追跡シーンを撮影してアップロードして大炎上したことで界隈で有名になったバカ。
その動画を皮切りに、世界中に行っては迷惑の限りを尽くして炎上と通報を繰り返し、既に西側諸国のほとんどを入国禁止にされている。
それで今やっているのは『世界のやっちゃイケないことやってみたw』とかいうフザケた企画。
非常識な事や無礼の限りをやって怪我人まで出ていて、それでもサイトの運営が杜撰で収益を取り上げていないから、コイツらのようなバカがつけ上がる。
それに………
『イヤッホー!いつもながら良いキレしてるぜ相棒!混乱は俺達の金であり、ヘイターはただ影響力を増すだけだぜベイベー!』
『何かを壊さなければ、ストリーミングする価値はねえんだよ、なぁ友よ!w』
車椅子からひっくり返されて痛がるジイさんをバカにしたように英語で捲し立てて、スマホカメラに向かって決めゼリフを言って悦に浸るクソ共。
奴等の配信画面のコメント欄は大いに荒れていた。
「さすがにやり過ぎだ」というコメントが流れる中、その多くは煽って「もっとやれ!」「ジジイのを踏んづけてやれ!」だのさらに過激なコメントが多く流れてくる。
………人が折角気持ち良く去ろうとしてたのに、気分が台無しじゃねぇか。
『日本のジジイなんかが俺達に説教臭くなんか言ってんじゃねぇよ!』
『そうだそうだ!敗戦国の負け犬がよw 』
さらにはとんでもない侮辱まで………
おそらくさっきの私と爺さんとのやり取りを見て、何らかの勘違いでもしてるんだろうが………噂以上に害悪だな。
かつて私も散々言われ続けてきたが、今の時代にまで言う言葉じゃねぇんだよ!!
私は奴等との距離を一瞬で潰し、1人の顔面を蹴り抜いた。
普段は履かないヒールブーツでの蹴りは、鼻骨を砕き、前歯を飛ばしながら公園のフェンスに顔の肉を食い込ませて、1人は痛みのあまりに悶絶して転げ回った。
相方がとんでもない目に遭ったのを目の当たりにしたもう1人は何が起きたのか理解出来ず、目の前の私に気が付くと慌てふためき、なんか言い訳を言ってくる。
『おいなんだよ!?アンタあのジジイに絡まれただろ!
せっかく俺達が成敗してやったのに……!』
あ……?
コツイらの言い訳が私の逆鱗に触れる。
知ってるか?オマエ等のそういう行動ってのをな……
「You're doing me a favor I didn't ask for!!」
つい力の入った足刀蹴りがアホの顔面に入り、仰け反ってバランスを崩したタイミングで追い討ちに、流れるような動作で体を旋回させ、左足の後ろ飛び回し蹴りがアホの鳩尾に突き刺さる!
モロに入ってアホは後ろに吹っ飛び、植え込みの木に背中を打ち付け、カメラが地面に叩きつけられ、レンズに付着した鼻血が画面を汚す。
アホは地面に倒れ込み、胃が締め付けられる感覚に耐えきれず、昼飯に食べたであろうラーメンを盛大に吐き出す。その汚物がカメラにドロリと流れ込み、配信画面は鼻血と嘔吐物でグチャグチャに……。
視聴者はパニック状態でコメント欄が炎上。
罵詈雑言と悲鳴の文字が飛び交い、煽ってた奴等も「Oh my god!!」「NOーーー!!」「Jesus!!」と地獄へと化していた。
後々、この動画は一気に拡散されてSNSでさらに大炎上し、この痴態を晒したThe Wrecking Renegadesの2人は強烈なデジタルタトゥーを残してしまい、二度と動画配信は行わなくなったとか。
まぁそんなアホ共は放って置いて、私は転がされたジイさんの元に駆け寄り、声を掛けながらコカされた車椅子を元に戻し、爺さんを車椅子に座らせた。
頭を打った様子だったから、爺さんの首から提げていた外出許可証を見て爺さんが何処の病院の患者なのか見てみたが、どうやら老人ホームの入居者だったようだ。
念の為裏面を見て爺さんの名前やなんやらを確認してみたのだが………
「え………」
そこで私は一瞬思考が停止した。
爺さんの名前に驚いたんだ。
『生島 重正』
私の……………80年前に、生き別れた弟と同じ名前。
偶然なのかもしれない………。
だけど……もしかしたら……………という思いが過ぎり、私は茫然としてしまった。
だがその時、
「おじいちゃん!」
後ろから聞こえてきた声にさらに目を見開いて驚いてしまった。
この爺さんの見た目通りの年齢なら孫がいてもおかしくない。
おかしくないが、その孫が、まさかつい先日私が誘拐した少女、『栗原 佳鈴』だなんて誰が想像出来んだよ。
「え……アナタは……!!」
「………………」
お互いに目が合って2人とも黙り込んでしまった。
怪我も怪我だったし、佳鈴には黙って出て行ったし、正直面と向かい辛いが、そんな事も言ってられない。
「このジイさんの孫だったのかよ、アンタ」
「え、あ、はい!えっと……」
「ちょっとトラブルがあって、このジイさん頭を打ったんだ。道案内してくれ」
佳鈴は青ざめて爺さんに駆け寄るが、爺さんの方は孫の前だからか気丈に振る舞う。だが、高齢で頭を打ってるんだから万が一のことある。
私は佳鈴に案内を頼みつつ、脳出血を意識して車椅子に振動が伝わらないようにゆっくりと、それでいて早く爺さんの老人ホームへと歩いて行った。
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2時間後
頭を打ったのと事で爺さんは精密検査を受ける事になった。
入居していた老人ホーム『りんどう』は、社会福祉法人ということで医療施設も併設されていて、検査の結果、脳出血の兆候は無いという診断を受け、爺さんは自室のベッドで寝息を立てて眠っていた。
その横で爺さんを心配そうにして座る佳鈴。
彼女は週に2、3日ほど爺さんの見舞いに来ていて、今日はたまたまこの爺さんが1人で外出していたと語る。
通常なら介護士さんや家族の付き添いが同行するが、この爺さんが1人で外出する時は、必ずあの公園に行くと。
で、あの公園に寄ってみればあんな状況。
なんか……私はこの子にトラブルの原因を作ってばっかりだな…………。
「………すまないな、またお前に迷惑をかけちまって」
「え…?」
「この前の事といい、今回といい、お前さんにはまた迷惑をかけた。本当にすまない」
私は彼女に頭を下げる。
佳鈴は私の謝罪に驚いてはいたが、同時に助けてもくれたとフォローをされ、だからお互い様だよと言ってくれた。
「………」
寝ている爺さんの傍らに置いてある写真に目が行く。
家族写真、佳鈴や龍太郎の子供の頃の写真の隣にモノクロの写真があった。
召集令状で戦争に駆り出されるお父さんとの最後の時を残すために、叔父さんに連れられて家族4人で撮ったやつだ。
まさか…こんな所でこの写真を見る事になるなんてなぁ。
あれからもう80年。
弟は……重正は、いったいどんな人生を送ってきたのだろうか…………。
目の前に老いた弟を目の当たりにして、私は胸が苦しくなった。
私と同じ様に………いや、それ以上の人生を歩んだんだろうか………。
私は自然と弟の頭を撫でていた。
突然の私の行動に佳鈴は困惑したが、私は弟の頭を撫でながら佳鈴の顔をジッと見た。
目元や特徴は弟によく似ている。
そっか……あの時から…………懸命に生きてきたんだな………………。
「あの………」
「あぁ、すまなかったな」
私は弟の頭から手を離す。
戦争の最中、重正の笑顔に私やお母さんも助けられてきた。
心が折れそうな時、私とお母さんの負担にならない様に一緒に働いて、挫けそうになった時も、弟の屈託のない笑顔に心救われた。
今更になって、私は弟に…………重正に何一つ返せていない。
だけど、私はもう悪魔だ。
今更、「お前の姉だ」とは口が裂けても言えない。
私は弟の頭から手を離すと、介護士さんが1人部屋にやってきた。
どうやらそろそろ面会時間も終わりらしい。
私達がソッと弟の部屋から出てこうとした時、重正が目を覚ました。
「おじいちゃん!大丈夫?」
佳鈴が駆け寄り、弟の顔をのぞき込む。
弟の眼には一筋の涙が流れていた。
どこか痛いのかと佳鈴は声を掛けるが、重正は首を横に振って否定し、懐かしい夢を見たんだと言った。
「子供の頃に戻って、姉さんが頭を撫でてくれたんだ。懐かしい夢だったなぁ」
重正は既に暗くなった窓の外を見ながら感傷に浸り、また一筋涙を零した。
「会いたいよ、姉さん」
胸が締めつけられる。
目の前に、お前の姉が居るのに………面と向かって名乗れない。
だけど………
「きっと…どこかで、今のアンタを見て誇りに思ってるだろうさ」
私が言い出した言葉に、弟………ジイさんは、ゆっくりとコッチに目を向ける。
公園で会って少し話しただけど、ジイさんは私がいる事に少し驚いた表情をしなから「アンタは…」と言葉を零した。
「どんな遠くにいたって、アンタが懸命に生きて、こんなにも良い家族を持ったことを誇りに思ってるだろうさ。
…だから、寂しがるなよ。
お前の側には、こんな可愛い孫も居るじゃねぇか」
ジイさんの目を見ながら、私の……『生島 節子』という人物だった者の思いを言い、佳鈴の頭に手を添える。
お前の姉はもういない。
だから、お前が歩んで築き上げた家族を大切にしろ。
それが、私の……『生島 節子』としての願いなんだ。
80年の空白は埋められない。
けど、私は………。
心の中でにそう言い、私は佳鈴と重正、2人の手を見つめる。
シワクチャな手と若々しく柔らかい手だ。
人を思いやれる者同士の優しい手。
私のように血塗れじゃない。
私の中である覚悟が決まった。
とその時、佳鈴から連絡を受けた龍太郎が部屋に入ってきた。
私がいる事に驚き、睨みを効かせるような殺気を込めた視線を私に向けるが、佳鈴が事情を説明して、龍太郎は殺気を収める。
龍太郎の対応に爺さんは怪訝そう表情を浮かべるが、私は笑って「なんでもないよ」と告げてその場を去った。
『りんどう』を出て、再び弟……重正がいるであろう部屋の明かりに目を向ける。
「生きててくれてありがとな、シゲちゃん」
弟が生きていてくれた。
さらには子を成し、孫へと繋いでくれていた。
本当に、人生ってのは分からないもんだ。
少し感傷に浸りながら、私はあの公園の近くにある駐輪場へと歩いて行き、停めてあった私のバイクのエンジンをかけて、夜の街へと走り去ったてホテルに戻った。
軽くシャワーを浴びて身綺麗にし、スマホで電話を掛け始めた。
『ようセツ、こんな朝からどうしたんだよ』
電話に出たのはベアードとマリアの孫。
パティの子供で、祖父であるベアードの名前を継いで私の仕事を手伝ってくれるドワーフの先祖返り『ポール』だ。
色々あって報告が遅れたが、私は彼に事の顛末を報告する。
話を聞いてベアード二世の声色が変わっていき、聞き終えると真剣な顔で今後の行動について話をする。
『母さんの言ってたドムおじさんの仇の名前はジョンジェーンか……』
「まだ名前だけだが、追えるところまで追ってくれれば良い。頼めるか?」
『あまり期待しないでくれよ、名前だけで追えるなんてたかが知れてる』
「それでも構わない」
『あいよ、んで、アンタはどうするんだ?』
今後の私の行動を話すと、ベアード二世は了承し、何かあったら連絡すると言って電話を切った。
「ふぅ……」
軽くため息を零す。
今日は色々あったなぁ…
だが、予定は決まった。
私は明日に備えて、バスローブを脱いでベッドに身を包んだ。
佳鈴、龍太郎との出会いは、私にとって大きな転機になった。
これから長い付き合いになってく事になるのと、これから迎える困難に、私達は立ち向かう事になる。
それを知らない今の私は、深い眠りについた。
第二章 完!
約半月書き続けられました!
コレもひとえに皆様に読んでくれているいるからでございます∠(`・ω・´)
これからも頑張らせていただきますので、今後もご贔屓によろしくお願いいたします!
書いていくうちに話しの辻褄が合わなくなったので、第27話を少し改変しましたm(_ _)m




