第40話 受胎
お疲れ様ですよ〜∠(`・ω・´)
ついに来た!!
悪魔を受け継ぐセツ!!
その思いと葛藤をご覧あれ!!(≧▽≦)
それでは、どうぞ!!
………意識が遠くなる………………眼を閉じれば、痛みと共にかつての記憶が鮮明に蘇ってくる。
人ってのはホントに死ぬ直前に自分が辿ってきた人生、走馬灯が巡るってのはホントなんだなぁ。
今思えば、私の人生はホントのドン底からの這い上がるをくり返してきた。
終戦直前に変態どもに攫われて、子どもの産めない身体になって、気が付けばアメリカに渡ってた。たまたまドムとベアードに助けて貰えたから、強く、そして勉強も教えてくれたから22歳まで生きられた。
終戦後の日系人への差別は酷かった。
買い物をするだけでも「レジを通していない」と万引きの濡れ衣を着せられたり、店員が露骨に私を無視したり酷い目にもあった。実際には払った金を店員がネコババしていたんだけど。
他にも難癖をつけられたりはしたけど、その度にドムが私を庇ってくれた。
同じように人種差別をされているのにも関わらず、彼はその大きな背中で私を守ってくれた。特に血縁がある訳でもなく、たまたま仕事で保護しただけの私を、ドムは私を守り続けてくれた。
それと同時に、私が変態神父を殺したことを切っ掛けに銃の扱いを徹底的に仕込まれた。
私があの変態を殺してしまった原因は自分にある。ドムはあの時の事をそう思いながら、私に銃の扱いを教え続けた。
最初半年は銃を撃ったら吐き続けた。
人じゃなかったとはいえ、人だった変態を…人の形をした生き物を殺したことに覚える罪悪感はとんでもないものだった。銃を撃つ度にあの変態神父の気持ち悪い笑みが頭の中で浮かび上がり「また殺すのか?」と問いを投げてくる。その度に、アイツの頭を撃った時の反動が腕に蘇り、迫ってくるあの恐怖が私を襲う。
だがドムは、吐き続けて動けない私を助ける事はしなかった。
ドムは黙って、私が立ち上がってくるのを黙って待っていた。
私に銃を教えるのは、私がこの先、生きていくのに必要な力なんだと、それしか言わずに半年間ずっと待ち続けた。
実際にこの時代でのアメリカで生きていくのにはホントに必要な事だった。自分の身を守るための力。奪った命に向き合う事。食べる為じゃなく、自分の身を守る為に。
力があれば、あの時に死んで逝った和子ちゃん達も……死ぬ事はなかったのか……?
そもそも誘拐される事も無かったんじゃないか?
色んな思いがひしめき合って、私は長い間悩んで、迷いながらだったけど、私はドムに銃を教えてもらい続けた。
撃ち続けて、銃の解体メンテナンスも教えてもらった。
そして私は、ドムの技術をどんどん吸収していき、格闘訓練も追加して身に付けた。そこからはドムの後を追うように、私も暗殺者になっていった。
正規の軍隊のような訓練はしていないから、殆ど我流のようになっていって、走って近付いて撃って殴ってしてたら「死の神風」なんて呼ばれた。
………ホントにロクでもない人生を送ってるよ。
こんな仕事してるからいつか死ぬとは思っていたけど…こんなところでこんな死に方かよ…………………………。
……………………もし、来世ってのがホントにあるんなら……次は………ドムと、みんなと穏やかに生きていきたいなぁ…………………
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…………………………………
……………………
………
『オマエ、力ヲ欲スルカ?』
………セツの目が微かに開く。
心は疲弊して、死の安らぎに身を委ねようとしている時に、闇の中で青い瞳が揺らめき、その青い眼がセツを覗き込む。
その瞳には冷酷さだけでなく、どこか懐かしい光が宿っている。セツの心が一瞬揺らいだ。
力…? もう…いいよ。ドムも死んだ…私も…ここで終わる……
『フフッ…ソウカ。死ニ身ヲ委ネルノカ?
ソンナ簡単ニ、オマエハ自分ノ人生ヲ放棄スルノカ? オマエハ知ッテイルダロ。
オマエノ人生ハ、奪ワレ続ケテキタ。
幼イ頃ノ純粋サ、子ヲ産ム身体、ソシテ…ドムトノ穏ヤカナ時間。
ソレラガ、アイツラニ踏ミ躙ラレタ。オマエハソレデ満足ナノカ?』
セツの瞳が震える。悪魔の声には、なぜかドムの面影が重なる。
走馬灯の中で、ドムの姿が鮮明に蘇る。いつも仏頂面で、言葉は少なく、銃の訓練では容赦がなかった。
でもたった一度だけ、セツが標的の真ん中を撃ち抜いた瞬間、彼が見せた微笑……娘を誇る父親のような、温かく穏やかな笑顔。
そして、セツを守ろうと抱き寄せ、背中で銃弾を受け止め、黒い骨で心臓を貫かれたドムの姿がセツの胸を締め付ける。
ドムと…ただ、静かに暮らしたかった。
あの笑顔を…もう一度見たかった…でも、もう…全部終わった…ドムは私を守ろうとして…死んだんだ…
『ソウダ、オマエノ本当ノ願イハ、ソノ一瞬ノ光ダッタ。
ドムノ微笑…アノ男ガタッタ一度、オマエニ見セタ、娘ヲ想ウ父親ノヨウナ笑顔。ワタシハソレヲ知ッテイル。
ドムノ記憶ガ、ワタシノ中ニアルカラダ。
アイツハオマエヲ誇リニ思ッテイタ。オマエガ標的ヲ撃チ抜イタ瞬間、アイツノ心ハ、父親ノヨウニ温カカッタ。
ダガ、ソレヲオマエカラ奪ッタ者タチガイル。
オマエヲ穢シタ者タチ、蔑ンダ者タチ、ソシテオマエヲ抱キ寄セ、背中デ銃弾ヲ受ケ止メヨウトシタ彼ヲ、呪イデ貫イタ者タチ。アイツラガオマエノ光ヲ奪ッタ』
セツの呼吸が乱れる。悪魔の言葉は、ドムの記憶を共有しているかのように具体的で、彼女の心を深く抉る。
幼少期の暗い空間、暴力の音、彼女を壊した男たちの笑い声。差別の言葉を吐いた者たちの冷笑
彼女の拳が震え、爪が掌に血を滲ませる。
なんで…なんで私から全部奪うんだ…! 私の居場所を…! ドムは私を守ろうとしたのに…!
『ソレダ。ソノ怨ミコソ、オマエノ真実。
ドムハ最後ニオマエヲ抱キ寄セ、銃弾ヲ全テ受ケ止メヨウトシタ。
ダガ、アイツハ失敗シタ。
ソノ無念、ソノ痛ミ、ワタシハ感ジテイル。
オマエモ感ジテイルダロ? ソノ怨ミ、怒リ、オマエノ心ハ、マダ燃エテイル』
セツの心が激しく揺れる。悪魔の言葉には、ドムの記憶が宿っているかのような重みがあった。彼女はドムの微笑を思い出す。
あの瞬間、ドムの仏頂面が解け、初めて見せた温かな笑顔。
そして、彼が彼女を守ろうと抱き寄せた背中。
だが、悪魔の甘言は危険だ。魂から出る警告が、恐怖が、彼女を押しとどめる。
黙れ…!! お前なんかに…ドムの記憶を語る資格はない! ドムの想いを…私は汚したくない…!!
『汚ス? セツ、オマエハ誤解シテイル。
ワタシハドムノ一部ヲ宿シテイル。
アイツハオマエヲ守リタカッタ。
ソノ想イハ、ワタシノ中ニモアル。
ダガ、オマエガ死ネバ、ソノ想イハ無駄ニナル。オマエヲ穢シ、蔑ミ、ドムヲ殺シ、笑イ続ケル。
オマエノ苦シミモ、ドムノ犠牲モ知ラズニ済マスノダ。オマエハソレヲ許セルノカ?』
セツの体が震える。悪魔の声には、ドムの記憶が混じることで、彼女の心に深く突き刺さり、セツの胸を締め付ける。
だが、彼女は抵抗する。
悪魔の誘いに乗ることは、ドムの犠牲を裏切るように感じたからだった。
私は…ドムの想いを…裏切りたくない…! お前なんかに…私の心は渡さない…!
『裏切リ? ナゼソレガ裏切リナノカ?
ドムハオマエヲ守リタカッタ。
アイツハオマエガ強クアルコトヲ望ンダ。
ダガ、オマエガ死ネバ、ソノ望ミハ潰エル。
アイツラハオマエノ人生ヲ、ドムヲ、ソノ犠牲ヲ踏ミ潰シタ。
オマエハソレヲ許セルノカ?
ワタシハオマエニ力ヲ与エル。アイツラヲ踏ミ潰シ、ドムノ想イヲ果タス力ヲ!』
セツの心が限界まで揺さぶられた。
彼女を守ろうとしたドム表情を思い出すたび、悪魔の誘いに乗る恐怖と、ドムの想いを守りたいという願いが彼女を縛る。
だが悪魔の言葉は、ドムの記憶を帯びていることで彼女の防壁を徐々に崩していく。
お前は…ドムじゃない! ドムの記憶を…利用するな! 私は…私は…死んでもいい…!
『セツ、ワタシハドムデハナイ。
ダガ、アイツノ記憶ハワタシノ中ニアル。
アイツハオマエガ死ヌコトヲ望マナカッタ。
アイツハオマエヲ信ジタ。オマエヲ守ロウト抱キ寄セ、銃弾ヲ受ケ止メヨウトシタ時、アイツハオマエガ生キルコトヲ願ッタ。
ソノ想イヲ、オマエハ無駄ニスルノカ?
アイツラガオマエノ人生ヲ奪イ、ドムヲ殺シタ。
ソノ怨ミヲ、オマエハ捨テレルノカ?
ワタシハオマエノ未練ヲ、ソノ怨ミヲ、力ニ変エル事ガ出来ル。
アイツラの血デ償ワセル力ヲ与エル』
セツの体が震え、鳩尾の妖傷が疼く。
だがそれでもセツは抵抗し続けたが、彼女の心が焼き尽くされるように黒く渦巻いていく。
セツは己の死を受け入れようとしたが、悪魔の言葉……ドムの記憶を帯びたその声が、彼女の未練と怨みを抉り続ける。
ドムの想いを無駄にしたくないという願いと、アイツらを許せないという怒りが、彼女の心を二つに引き裂く。
ドム…私は…お前の想いを…守りたい…。
でも…アイツらを…許せない…! お前の背中を…奪ったアイツらを…!
『ソレダ。オマエノ心ハ、マダ生キタイト叫ンデイル!
ドムヲ、ソノ犠牲ヲ、守リタカッタダロ? ワタシハソノ想イヲ知ッテイル!
アイツハオマエガ強クアルコトヲ望ンダ。オマエガ死ネバ、アイツラハオマエノ苦シミヲ、ドムノ死ヲ嘲笑ウ。
ワタシ達ノ力デ、アイツラヲ踏ミ潰セ!
ドムノ想イヲ、オマエノ手デ取り戻セ!
サア、選ベセツ!!
死ニ飲マレルカ、怨ミト未練ヲ力ニ変エルカ!!!』
セツの心が限界まで追い詰められた。
彼女は抵抗し続けたが、ドムの微笑、彼女を守ろうとした背中、呪いの黒い骨で貫かれた痛み、そして奪われた穏やかな未来への未練が、彼女の最後の防壁を崩した。
彼女の唇が震え、ついに言葉が零れる。
…いい! お前を…受け入れる!
私の怒り、怨み、全部使って…アイツらを……焼き尽くしてやる!
殺してやる!殺してやる!!コロシテヤル!!!
ミンナ……ミンナ、コロシテヤルーーーーーーーッッッ!!!!
『サア、立チ上ガレッ!!
オマエハモウ、奪ワレル側デハナイ。
ワタシ達ノ力デ、ソノ怨ミヲ、ソノ未練ヲ、ドムノ想イヲ、奴ラ二刻ミ込メ!!』
呪いの黒い骨を伝ってドムの中の悪魔達が、闇がセツを飲み込み、彼女の体に黒い炎が宿りだす。ドムの流れた血を吸い尽くすかの如く、セツの髪が紅く染まっていく。
鳩尾を貫いた呪いの傷、妖傷が疼き始め、彼女の瞳が青く輝き、傷だらけの体が動き出した。
銃を握りしめ、彼女は目の前の壁を蹴り破り、立ち上がる!
その目にはもはや諦めはなく、ドムを奪った者たちへの怒りの炎と、そしてあの穏やかな光を取り戻したいという未練と願いが宿っていた………。
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一番最初に異変を感じ取ったのは人喰い……名をジョンジェーン、通称JJだった。
マーキングとして自身の呪いの骨を突き刺しただけなのに、その呪いの反応が突如として消えた。
あの呪いは聖水やそんなものを使ったところで焼け石に水で、仮にその様な事をしたら呪いが侵食してきて逆に危ない強力な呪い。
そんな自身の呪いの存在が肌で感じられなくなった。
コレはJJが生きていて初めてのことだった。
助手席に座ってるJJの珍しい反応を見た車を運転している男は茶化しながら尋ねたが、JJの反応は薄い。元々そんな感情が表情に出ないのもあり、すぐに興味を無くして運転に戻る。
「………………ま、いいか」
JJも特に気にしなくなり、彼は窓の外を見ながら退屈な時間を車の中で過ごして行った。
「お腹空いたな〜」
呑気にそんな事を考えながら。
だがこの時、早々に悪魔を受け継いだセツを排除しておけばと、そう思うのは、これより70年後の事だった。
次回、悪魔無双!
今回は以上です∠(`・ω・´)




