第三話 怪異
ここからスプラッタ表現入ります。
レベル1
夕日で紅く染まった学校は不気味だった……。
校門前まで戻って来ると、ちょっと中に入るのに躊躇してしまいそうになる。
莉桜ちゃんも同じ事を思った様子で、私達はお互いの目を合わせた。
「手つなごっか?」
「うん……」
少しでも不安を和らげる為に、私と莉桜ちゃんは手を繋いで校舎へと向かう。
校内はもう5月だというのに、何故か肌寒く感じる。
恐る恐る中に入るとさらに不気味に感じた。
人の気配が無かった。
さっきまで居てたはずの先生や部活の生徒、果ては用務員さんの姿までもが何処にも見えない…。
莉桜ちゃんが不安気な声を漏らすが、私は「大丈夫だよ」と声をかける。
「きっと別館の戸締まりしてるんだよ。ほら、アッチは渡り廊下の先にあるし」
「うん、そう…だよね?」
「そうだよ!だから、気のせい気のせい♪」
「うん、そうだね!」
「よし、それじゃ、パッと行ってパッと帰ろう!」
「おー!」
元気を取り戻した莉桜ちゃんと一緒に本館の5階へと階段を登って行く。
図書室は5階の右端にあって、ちょっと遠く感じる。
ちなみに移動教室の全てが本館にある。
早いこと莉桜ちゃんの忘れ物を取りに戻らないとと思っていると、ふと私は、莉桜ちゃんが何を忘れたのか分からなくなってた。
そういえば莉桜ちゃんは…何を忘れたんだろう……?アレ?
聞いていたはずなのに、何故か思い出せない。
思い出そうとするとノイズのようなモノが聴こえてくる…。
(なんで……?たしかに私…………)
「佳鈴ちゃん……?」
急に立ち止まってしまった私に、莉桜ちゃんが声をかけた。
「あ、ごめんね!」
「ううん。良いんだけど…どうしたの?」
「え?」
「なんかすごく驚いてたような顔してたから…」
「あ…うん。実はね」
莉桜ちゃんが何を取りに戻るのか忘れたと言おうとした時だった。
突然狂ったかのように吠える犬の鳴き声が校内に大きく響き渡ってきた。
耳を劈くような鳴き声に私達は両耳を押さえた。
いったいどこからと、鳴き声の方向に目をやると、それは図書室の方から聞こえてきていた。
(なんで図書室に犬がいるの!?)
学校の謎の怪現象を目の当たりにした次の瞬間
「ギャンっ!!」
「「!?」」
犬が突然悲鳴をあげた。
さっきまで響いていた嘘のように鎮まり、私達はまたお互いの目を合わせた。
「「……………………」」
まるでパニック映画のような状況に思えた。
もうこのまま引き返した方が良い状況だけど、そう思っても……そう思えなかった。
「………行く?」
「……うん」
私達は意を決して図書室へと向かう。
一歩、また一歩踏み出すたびに空気が重たくなる。
図書室の扉の前だと、そこに空気が冷たくなるような感じもする。
私達は一緒に図書室の扉をゆっくりと開けた。
ガラガラと音を立てて図書室に入ると、そこは帰る前の時と同じ光景の………夕日に染まっていた。
周囲を見渡しても、とくに何か変な事にはなっていない。
犬が居た跡も…………と思ったが、床をよく見てみると犬の抜け毛が見つかった。
ここに犬が居たのは確かなようだった。
なら、一体どこに?
二人がそう疑問を口にした……その時だった。
ボリッと、何かが砕けるような音が響き渡った。
その後も、ボリッ、ゴリッと何かを砕く嫌な音が響いた。
「ヒッ!」
「!?」
莉桜ちゃんが何かに気付いた。
「あ………あれ……………」
彼女が震えて向ける指先の方を見て、私も息を飲んだ。
「!!!!?」
ありえないくらい大きく、パッと見では気付かないレベルの擬態。
日本では幸運をもたらす存在として、拝み虫と呼ばれる神の使い。
ギリシャでは【預言者】という意味でマンティスと呼ばれる。
図書室の天井の色に姿を変え、中型犬の身体と千切れた頭をその鋭く尖った鎌で押さえて、大きな顎で犬の肉や骨を音を立てて食べていたのは……。
「カマキリ……!?」