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人外討魔伝記  作者: 一ノ瀬カイヒロ
第二章 弾丸の魔女
37/85

第36話 ロッキーマウンテンオイスター

お疲れ様ですよ〜∠(`・ω・´)


今回はバトル無しののほほん回です。

車を走らせておよそ9時間。


あの時の家は引っ越して、今はアイダホ州のツインフォールズに新しく家を立て、私はそこでドムに訓練された。


農業が経済の基盤で、特にジャガイモや乳製品の生産が盛んなところでもある。

ハイキング、釣り、ゴルフなんかのアウトドア活動が楽しめる自然豊かなエリアでもあり、気候は四季がハッキリしていて、夏は温暖、冬は寒冷で、日本に似た気候をしていて個人的には慣れた環境だった。

自然豊かであるために、当然野生動物達も多く生息していて、私とドムとで狩りにも出掛けた。


農村部でもあるため、そこに住んでいた人達とも自然と仲良くなり、たまにだがお裾分けを貰う事もあって、一緒にバーベキューしたりして親睦しんぼくを深めたりした。


そしてこの10年で変化があったと言えば、マリアが妊娠にんしんして子供が産まれた事だろうな。


私がアメリカに渡って1年後に第一子を出産。


翌年には双子が産まれて3人目と、オオカミ由来なのか多産で、今ではもう4人も子供がいた。

私を含めても5人の子供がいたが、マリアは等しく私達に変わらない愛情を注いでくれた。


「今年も産まれたぞ」

「大家族計画だな」

前々(まえまえ)から子供が欲しいとか言ってたが、まさかあそこまで変わるとはなぁ………」


母親らしく変わるんなら喜ばしい限りなんだけど、そこはマリアらしいっちゃぁらしく変わったんだ……。


「ベアードはちょっとハゲたな」

「苦労がうかがえるな」


そう、一番苦労してるのはベアードだった……。

その理由は、家に着いたらわかる。


そして1年ぶりに家に着いた。

また見ない間に増築したなぁ。


車を降りて家に入ろうとすると、後からドドドドドドッと土煙を上げて何かが凄いスピードでやって来た。

既視感きしかんありまくりでやって来たのは、言われるまでもなくマリアだった。


Welcome (おかえり)back (なさい)Setsū!!(セツー!!)


キラッキラの笑顔で、子供を産んでさらに大きくなったおっぱいをバインっ!バインっ!に揺らしてコッチに突っ込んで飛び掛かってくる泥だらけのマリア。


私はマリアのおっぱいダイブを受け止め、反動を逃がしながらマリアを地面に立たせた。


「セ〜ツ〜♡♡♡」

「相変わらずだな、マリア」


オオカミのはずなのに、ホントこの犬みたいな所は変わってない。

変わってないけど………どうして私のおっぱいはマリアみたいに大きくならなかったのか………。


マリアにハグしながらそんな事を思ってると、家のドアが開いて子供達が押し寄せてきた。


「おねぇちゃんおかえり〜!」

「セツねえちゃんだ〜!!」

「わ〜い!!」


マリアとベアードの子供、パトリシア(パティ)マイケル(マイク)ロバート(ボブ)年長組が私に後から抱き着く。

1年も会ってなかったからすっかり成長してるな。


「パティ、マイク、ボブ、3人ともデカくなったな」


年長組3人の頭を優しくでてやると、3人とも「えへへ〜」といった満面の笑顔で笑う。こういう所はマリアそっくりだなw


「ブ〜!子供達(みんな)だけ頭でてもらってズルい~!セツ〜アタシも〜!」

「ハイハイったくw」


親子して頭でて貰って笑顔になる。


ホントに親子たなw


「荷物はコレだけか?」

「ああ、あとでベアードに報告するから地下に持って行ってくれ」


ドムは私の持ってた荷物を背負うと、彼は黙って荷物持っていき、サッサと家に入ろうとする。その後を、パティが興味深そうについて行った。


「ねえ!おじさんそれなに?」

「あ?子供は触ったらダメなやつだ」

「え〜?お土産じゃないの〜?」

土産みやげならセツが持ってる」

「ホント!?なになに!?」

「あとでセツに貰ってこい」

「うん!ありがとおじさん!」


パティはドムに物怖ものおじしない性格で、なんだかドムに気があるようだ。

ドムも2人の子供だから無碍むげにもしてないし、実はまんざらでもないんじゃないか?って思う。


「セツねえちゃん!ぼくがっこうのテストで100点いっぱいとったんだよ!」

「ぼくだっていっぱいとったんだよ!ほらみてよコレ!!」

「分かった分かった、分かったからあとで順番に見せてくれ」


マイクとボブの双子ふたごは小学校の勉強べんきょうに力を入れている。多分、前に一度2人が遊んでばっかりで学校の勉強に身が入らないと相談された時に、2人の前で「私は頭の良い人が好きだな」ってつぶやいたら、2人とも猛勉強しだした。


多分憧れか何かだと思うけど、2人とも私が居るときは勉強教えてとせがんで来るから、つい可愛く思える。


この頭の良さはベアード譲りだろうな。


「え〜?セツ〜、今見てあげてもイイじゃ〜ん?」


真っ正面から抱き着いたまま、離れないこの母親マリアはそう言うが、とりあえず私はシャワーが浴びたかった。


ここに帰って来る途中の休憩所(トラックストップ)でシャワーを借りたが、今度はマリアのせいで服が泥だらけになっている。多分、近所の牧場の手伝いにでも行って泥…………と言うなの堆肥たいひまみれで抱き着いてきてる……はず。


まぁアレでなければとりあえずは……


「ママ、きょうはどんなおしごとしたの?」

「ん〜?今日はね、ウシさんのウ◯コちゃんを集めるお仕事したんだよ〜♫」


…………………………結局クソまみれかよ。


マリアのこういう所はれてるとはいえ、流石さすが勘弁かんべんして欲しい。


「じゃあママ、ウ◯コまみれだ!にげろ〜w」

「待て待て〜!みんなウ◯コまみれにしてやる〜!♫」


そして子供と一緒になって牛のアレのなすりつけ合い……。本人達は楽しんでいるようで良いのだが、お願いだから他人ひとにはしないでくれよマリア?



「あ?ついこの間、牧場のジイさんと一緒になって酔ってソリで滑ってクッション代わりにダイブしてクソまみれで楽しんでたぞ」


すでに遅かったか…………。


======================================


「ふぅ…」


あのあと、着ていた服は洗濯機に入れて回して、その間にシャワーをパティと一緒に浴びて身体の汚れを落として、自室にてベッドの上でようやくゆっくり出来た。


マイクとボブは母親マリアと一緒のシャワーでブーブー文句を言っていたが、さすがにマセガキと一緒に入る訳にはいかない。


それに2人とも私の尻ばっかり見てるし……。


子供の成長は速い。


「セツ、いるか?」

「ベアードか?ああ、いいぞ」


ドアがノックされて開くと、そこには少しやつれた顔のベアードが立っていた。


無精ぶしょうひげがほほおおい、もみあげの薄くなった髪に白髪がちらほら光ってる。1歳のメアリー(メア)を片手で抱き、もう片方の手でナンシー(アン)バシネットゆりかごを握っていた。

柳編みのバシネットは縁の布が少しほつれ、赤ちゃんのアンをぎゅっと包んでいた。


ベアードはメアがぐずらないよう肩を揺らし、アンが起きないよう息を殺してバシネットを私のベッドにそっと置いた。


にしてもこの1年で白髪増えすぎてないか?


「見ないでくれ頼む」

「あぁすまん」


そりゃまぁ家事も仕事も両立してやってるからそりゃそうなるな……。

それに今年産まれたアンの夜泣きがひどいせいか寝れてもないみたいだな。


今夜、私がアンを預かろうか?と聞くと、疲れ切った感じで「あぁ、頼む…」と言って椅子の上で一息ついて、彼からメアを受け取って抱いた。

メアはどこか不思議そうな顔をしながら私と目を合わせると、視線を私から外さずにジッとコッチを見続ける。

なんか不思議なもんでも見えてるのか?


「とりあえず、今日までご苦労様セツ」

「仕事だからな」


今回、私は仕事で去年からインドネシアに行っていた。


仕事の内容は、インドネシア共産党(PKI)の妨害活動を裏から止めるのと情報収集。


1954年、当時インドネシアは初代大統領スカルノ政権によって独立と発展をかかげて混迷こんめいを極めていた。

彼はナショナリズムとその統一、「パンカシラ」と呼ばれる5つの原則を公約にしていた。

一神教、公正な人道主義、国民統一、民主主義、社会正義を国是こくぜとし、多民族国家の結束を図った。


そして多民族ゆえに、当時のインドネシアでは民族主義者、宗教勢力、共産主義者など多様者たちが集まっていた。


私はその中で、「インドネシア共産党(PKI)」という国際的な共産主義運動をしていたこの党による、裏での反共産主義者の重要人物を狙った暴力事件や殺人を追って、あわよくばPKIのトップを殺してほしいという依頼を受けていた。


暗躍しているのがインドネシア共産党(PKI)だというのまでは分かってはいたのだが、証拠となるものがほとんど出ず、困った所に白羽の矢が立ったのがドムだった。

蛇の道は蛇と言うように、アウトローにはアウトローでということで極秘裏に依頼が来たのだが、当時ドムは別件の依頼で手が離せず、急遽きゅうきょ私が行くことになった。

混迷期にあったといえ、女で、しかも日系アメリカ人として行った私にはかなり過酷かこくだった。


まず男女の格差があまりにも顕著けんちょだった。


手探りで情報収集から始めようとしたら「女が肌や顔を見せるな」だの「女は出歩くな家のことをしろ」だのやかましい。

あまりにもしつこいからアウトローらしく暴力で黙らせて、そしてその男達をおどして手足にして情報を収集させた。


「で、調べたらPKIは関与かんよしてなかった。暴力沙汰ぼうりょくざたを起こしていたのはPKIとはまた別の過度かどな共産主義組織だったよ」


インドネシアはオランダ植民地時代に、大規模な農園経済プランテーションが発展し、多くの農民達がが土地を失い、小作農こさくのうや労働者として働いていた。


スカルノ政権は独立後、貧困ひんこんと不平等を是正ぜせいするため土地改革をかかげて、そのために改革法を成立させる為に奮闘ふんとうしようとするのだが、この裏で貧困層ひんこんそうへの高利貸こおりがしや過酷かこくな労働と低賃金ていちんぎんでの酷使こくしして国民を食い物にしていたのがこの共産主義組織……所謂いわゆる極左きょくさと呼ばれる連中だった。



奴等の組織名は、『Gerakan(ゲラカン) Rakyat(ラキャット) Merah(メラ)』。通称GRM。インドネシア語で【赤い人民運動】という意味だ。



農村で貧農ひんのうに法外な借金を押し付けて、返せない者を私兵に変えたりする過激派で、スカルノ大統領の土地改革の混乱に乗じ、まるで寄生虫のように農民を食い物にしていた。


当時、奴等やつらの数はあまりにも多いうえに、現代みたいな組織化された貧困ひんこんビジネスよりも手広くやられていた。その為に、奴等やつら駆除排除くじょはいじょしても虫のようにいて出てきて時間が掛かった。


「PKIは比較的(ひかくてき)穏健派(おんけんは)だったよ。多分牙は隠していただろうが、私の仕事の邪魔にはならなかったな」


調べていったら、GRMの連中の過激な活動を全てPKIがやったという痕跡こんせき捏造ねつぞうしていた。奴等を相手にしていた事はPKIにとっても都合が良かったらしく、戦闘の際は人が立ち入らない様にしていたようだった。


「あと、グリムネストの連中も絡んでた」

「またアイツらか………」


時代が動く時、それは混乱を極めた激動の時でもある。その混乱は変態どもにとっては好都合。


その最たる例が私だ。



「ってことは、アイツらも始末したってことか?」

「完全に駆逐くちくするのは無理だったが、両組織りょうそしきともインドネシアからは叩き出したよ」

「なるほど、お疲れ様だな」


メアの背中をポンポンしながらする話の内容じゃなかったが、メアやアン、マイクにボブ、パティの姿を見ると、現地にいた子供達の姿を思い出す。


あの子達は……ちゃんと生きていけたか………?


依頼とはいえ、少しでも関わりをもってしまうと心配をしてしまう。

裏稼業(こんな仕事)をしててこんな思いを抱いてしまうのは良くないと頭では分かってはいるんだけどな……。


あとのことは俺がやっておくよ」

「良いのか?家事育児で大変だろ?」

「もう慣れたよ、片手間に報告書作って依頼主に送るだけだからな」

「片手間なのかよw」

「まぁなw それから1時間後にリビングに来てくれ、晩御飯作って来る」


そう言うとベアードは私にメアとアンを預けて私の部屋から出ていった。


久しぶりのベアードの料理か、何が出てくるんだろうな?


「バ……バァ〜」

「ん?なんだメア?」


なおも私を見上げてジッと見つめてくる1歳児のメアの背中をポンポンしながら、私はゆっくりとメアとたわむれながら時間を潰した。


====================================


そして1時間後、私はメアとアン達と一緒にリビングへ向かうと、ものすごい量の料理を作ってた。


仕込みすでに済ましていたようで手早く油で揚げた肉料理がリビングのテーブルにドカッと鎮座ちんざし、その周りをサイドメニューのマッシュポテト、グリル野菜の盛り合わせにグリーンビーンズキャセロールと豊富だった。


そしてメインは、


「フィンガーステーキにプライムリブか、どれも美味そうだな」

「特性のホースラディッシュソースかバーベキューソースをディップして食べてくれよ」


どれもアメリカらしいもので久しぶりだ。

さらに地元産のエールまである。


「せっかくセツが帰ってきたんだ、これくらい用意するさ!」


さすがはベアード、抜かりないなw


内心ワクワクしながら席に座ると、私の前にマリアが一皿置いた。

あ、これマリアの好物のロッキーマウンテンオイスターだ。


「セツ〜!一緒に食べよ〜!」


かなりラフな格好ですでに出来上がってる状態だった。

おいおい、まだアンにおっぱいあげてるんじゃないのか?


「アンね〜、この間歯が生えてて噛まれちゃったの。だからね、明日から離乳食にしようかって」

「もう歯が生えてきたのか」

「だから今日からアタシもお酒解禁だ〜♡」


そういうとマリアはエールを一気飲みすると「プッハァ!」と凄い笑顔で飲み干した。


さ、食べるか。


手を合わせて「いただきます」と軽く言ってからフォークでロッキーマウンテンオイスターを口に運ぶとカリッと香ばしく、中は柔らかくてクリーミーな食感が舌の上でとろける。


味は濃厚で、ほのかに甘みがあり、牛肉の旨味がギュッと詰まってる感じだ。

シンプルなマスタード添えるとピリッとした辛さが加わって、さらにクセになる。エールとの相性もバッチリでついついエールに手が伸びる。


「っプァ!美味い!」

「だよねだよね〜!」


初めて食べた時は複雑な気持ちにもなったけど、こうして食べるとやっぱり美味い。

でも考えてみれば日本もこういった珍味ちんみは食べている。


日本人がタラやフグの白子……精巣を食べるように、コッチでは去勢きょせいした牛のキャンタマをこうして食べる。


子供達もベアードの料理に笑顔になって、ドムはウイスキーをボトルで喇叭飲ラッパのみしながらフィンガーステーキをホースラディッシュソースをディップして食べ、ロッキーマウンテンオイスターをさかなにしてウイスキーを飲む。


次は私がお土産みやげに持って帰ってきたインドネシアのスパイスを使って、何を作ってもらうか♫


食後は子供達にインドネシアのお土産みやげを配って雑談して、久しぶりに家族を感じて今日を終えた。


みんな、おやすみなさい。




別にあの人を叩いてるわけではないので、そこだけはどうかご理解くださいませ。


むしろ好きな部類の人です(◍•ᴗ•◍)


ちなみに、あの人はスカルノ初代大統領の第3夫人さんだそうです。書いてて初めて知りました(;´∀`)


では、今回は以上です∠(`・ω・´)

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