第29話 ドミニクとベアードと酒カス
お疲れ様ですよ〜∠(`・ω・´)
ここは少し平穏かな?
出てきた物は美味しかった。
ご飯のようなものを牛乳で柔らかく煮込んでメープルシロップがかけてあって甘くて、小さな干しブドウも混ざっていて、私は涙しながら必死になって食べた。
戦時中は何とかして食いつないではいられたが、この時はいつ食べたのなんか覚えていないほどに空腹だった。
今の時代になってつくづく思う。
食べ物が手に入りやすく、それが当たり前になってしまっている人も居るだろうが、私は今でも食べらることに感謝していた。
「ひっく……んぐ…はぐひっく……」
『食うのか泣くのか、どっちかにしたらどうなんだ…』
『そう言うなって、俺たちの想像を絶するほどに、腹減ってたってことだろ』
悪態をつく黒い人と、それを宥める無精髭の人。
『それにしても驚いたなぁ、まさか奴等アジアにまで手を広げるなんて…』
『んで? このガキどうするつもりだ?』
『ん〜、クライアントは保護した子供全員引き渡すこと、とは言ってたけど………この子を見るに、それは止めておいた方が良いかもしれないなぁ』
私の様子をみながら、無精髭の人は頭を悩ませた。
酷い目に合って、命からがら窮地を脱したと思えばそこは海外。
しかも日本と戦争で、敵対していたアメリカにやって来てしまった。
私の扱いに頭を悩ませている無精髭の人が、日本語を話せたのが幸いして、私はいったんは落ち着きを取り戻していた。
『なんでだ?』
『………この依頼してきた奴が少し違和感あったんだ』
『違和感? 』
『誠実そうには見えたんだけど、なんかどこか胡散臭いというかね……』
『…………お前がそう言うってことはそうなんだろうな』
黒い人は、無精髭の人の話を聞いて、顔が険しくなる……。
その横で私はご飯を食べ終えて「ごちそうさまでした」としっかり手を合わせると、黒い人の目には不思議に映ったようで…
『日本人でも神に祈るんだな……』
と、少し不快な様子で呟いた。
『あぁ違う違う。ソレは感謝してるんだよ』
『感謝?』
『そ、日本には神道ていう文化が昔から根付いていてね、全てのものに命が宿ってるっていう考え方があるんだ』
『それのどこに感謝する必要があるんだ?』
『食べ物となった物にも命があって、その命を頂いてるから、食べる前には「いただきます」って感謝して、食べ終わったら「ごちそうさま」って手を合わせるんだってさ』
『………お前よくそんなマイナーな事知ってたな?』
『昔、日本人に助けてもらったからね、その時に』
『ほ〜ん?』
聞いておいて興味なさそうに、黒い人はウイスキーを喇叭飲みする。
その後、食べ終えては落ち着いた私を見て、無精髭の人は私を一先ず、少し心を許した私に、軽く自己紹介をしてもらった。
「オレなまえ、ベアード。コッチ、ドミニク」
「べあーどさんと……どみにく…さん?」
「ドミニクわ、ドムていうとイイよ」
慣れない日本語で、当時の私が理解出来る範囲で教えてくれて、私も自己紹介をするとベアードは首を傾げた。
「生島 節子です、12歳です」
「……What?」
「?…わっつ?」
目が点になってたベアードにドムが気付くと、彼は私が12歳の女の子だと聞かされて同じように目が点になった。
『……マジかよ』
『どうみても8歳にしか視えなかった………』
私の容姿と年齢が二人の目に釣り合ってなかったようで私が8歳の少女に見えたらしい…。
というのも、2人がそう思ったのには理由がいくつかあった。
まず一つは、私を攫って、地獄を見せた連中にあった。
奴等はそのほとんどが女児性愛者で組織された連中で、名を「グリムネスト」と呼ばれている。
攫った女児には恐ろしい場所という意味と、変態にとっては居心地の良い家という意味があり、そいつらは今現在でも活動を続けている連中だ。
思春期に入る前の女児にしか興味が無く、思春期に入った女の子には見向きもしない変態どもの集団。
『これ奴等が知ったらこの子を殺しにくるかも……』
『ったく面倒くせぇな…』
1945年のアメリカの女の子の場合、戦時中でも第二次性徴期は平均的に10〜12歳頃に始まり、初経が12.5〜13.5歳頃に起こるのが一般的だった。
対して日本は、戦時中の女の子の第二次性徴期はアメリカよりも栄養状態が悪かった為に、大凡の平均で 14~16歳 程度だったとされいる。(現代の日本では平均12~13歳)。
グリムネストの連中は、女の子の第二次性徴期が始まる"12歳"には手を出さないというルールがあった。
変態達のこだわりらしく、女児達の反応だからこその興奮があるとか…。
コレを知った時はドン引きしたし、絶対に絶滅させる
と誓ったのは言うまでもない。
ドムとベアードは話し合った末に、一端私を自宅まで連れて帰って、後日じっくり話し合って日本にどうにかして私を帰す方法を考える事にした。
『早いとこアジトに戻るとするか』
『アジトって……俺の家なんだけど?』
少し騒ぎ起こした私達は店員に文句を言われながら、代金を少し多めに渡して酒場を後にして、近くに停めてあった車に乗り込んで、ベアードの家へと車を走らせた。
車の中から見るアメリカは、私にとっては未知で溢れていた。
日本とは違う文化の未知故に、この時の私にはアメリカという国の一端を垣間見て凄く怖かった記憶がある………。
何もかもが違くて、家族も居ない………。
まるで私だけ…1人、別の世界に取り残されたよう恐怖を感じてしまっていた。
今考えると無理もない話だ……。
親しい家族が死に、弟と生き別れ、いきなり知らない土地で………しかも戦争で日本と戦っていた敵国アメリカに迷い込んだんだ。
それに、日本でもアメリカへのプロパガンダが流布されていた事に、私も少しは影響を受けていたと思う。
小学校に通っていた頃は、アメリカを「物質主義的で堕落した国」と教えられ、反米意識を植え付けてた。
軍国主義教育の一環として、私たちは「米英打倒」をスローガンに掲げて戦闘訓練や防空訓練にも参加した。
英語の授業もありはしたが、「敵国語」として使用が制限され、英語教育は縮小し、私は受けたことが無い。代わりに日本語や軍事教練が重視されてたんだ。
街頭や公共施設にも、アメリカ兵を怪物や悪魔として描いたポスターが貼られてたし…。
これらは国民に、恐怖と憎しみを煽って戦う決意を促すもので、今でも思い出すとゾッとする……。
主にアメリカ兵が日本人を虐待するイラストや、「本土決戦」の準備を呼びかけるスローガンが一般的でだったから、その時のイメージが幾らか残っていてもおかしくはなかった……。
『…………』
車の後部座席で小さくなっている私を、ドムのその大きな手が私の頭の上に置いてきた。
ビクッとしてしまったが、ドムは私の方を向かずに、仏頂面だったが、幼児をあやすかのようにポンポンと優しく撫でてくれた。
「………………」
お母さんとも、お父さんとも違う、黒くてゴツゴツした硬くて大きな手。
だけど、久しぶりに頭を優しく撫でられて心僅かにだったが、私の不安は彼の大きな手で薄れたのはハッキリと覚えている。
そんななんとも言えない不思議な空気間を、ベアードはバックミラーから覗いて口元を緩ませていた。
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しばらく車を走らせて、ようやく目的地に到着した。
周りには他の家は建っておらず、まさにポツンと一軒家、という感じの……なんというか、田舎のおばあちゃんの家に着いたようなそんな雰囲気を感じた。
「さ、つタよ」
運転席から出て、私を後部座席から降ろしてくれたベアードは、ここがボクの家さ!といった感じで胸を張った。
この時代でマイホームを持っていることは珍しく、彼はコレを自慢にしていたのだが……………
鼻高々にドアノブに手を掛けようしたその時だった。
ドタドタドタドタっ!!っと家の中から人が走ってくる音が響き渡った。
『チっ!』
「えっ!?」
ドムが突然私を抱き抱えて、バックステップして扉から遠退いた。
そして………
「Welcome back!♡ I love you Baird!!♡♡」
長い金髪をなびかせて、大きなおっぱいをバルンバルンに揺らしながら、扉を物凄い勢いの体当たりで打ち抜いてきた女性がベアード抱き着いてきた。
「Ouch!!」
勢いに任せてふっ飛ばされて、アスファルトに頭を思いっ切り打ち付けて2、3回バウンドしたベアード。
『……ま〜たコイツは………………………』
「っ!? !? !??」
呆れ顔で頭をガシガシ掻いて少しイラついたドムと、何が起こっているのか分からずドムにしがみつく私………。
ベアードに抱き着いた女性は彼の胸板に顔を埋めて、スーハースーハーと彼の汗の臭いを嗅いでデレデレ顔に…………女性がしたらいけないような、ダラしない恍惚な表情をしていた…………。
『マリア……またお前酒飲んでるのか!?』
『うへ〜??のんでなひよ〜♡』
『ウソつけ!どっからどう見ても飲んで…っつか酒臭!!』
『だ〜か〜ら〜♡ のんでなひんだっへば〜♡』
飲んでないと言いながら、彼女は右手にもった瓶の中身をゴクゴクと喇叭飲みして、今度はいきなりベアードに飲んだモノを口移しで飲ませ始めた……。
ベアードは顔を真っ赤にして、口に入れられたモノをつい飲んでしまったが、それはガッツリお酒だった。
しかも違法な密造酒。
『………ウプ』
で、口移したら急に酔いが回り…………
『%#$≠¥>€¿=≠©$%#$=€€¥©#%%≠!!!!!』
キスしたまま、ベアードの口の中に大量リバースした。
その後はとんでもなくヒドかった………。
リバースされたモノがベアードの気管に入って窒息しかけ、白目を剥いたベアードにマリアと呼ばれた女性がなんか喚いて、ベアードに腹パンして、その衝撃で気管に入ったモノが逆流。
ものの見事に口と鼻から物体Xが大量噴射した………。
で、その物体Xを見て女性が貰いリバース。
ベアードは頭からソレをモロに被って………………
私はカルチャーショックを受けた。
今にして思う。
なんだよこの状況………。
私が幼稚園児の時に曾祖父さんの葬式の時に、葬式で気分が悪くなってお焼香を上げようとした時にお坊さんの頭にゲ〜したのは今でも思い出です……(遠い目)
もちろん、葬式が中断されたのは言うまでもない∠(`・ω・´)




