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人外討魔伝記  作者: 一ノ瀬カイヒロ
第一章 人外の存在
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第二話 不穏


日直を済ませて少しすると、続々とクラスメイト達が登校してきて、その中に龍太郎の姿を見付けた。

彼も私を見付けると、私の机の上にお弁当とおにぎりを一個、莉桜ちゃんにもおにぎりを渡した。


「日直おつかれさん」

「ありがと」


二人一緒におにぎりにかぶり付く。

私はちりめん山椒、莉桜ちゃんは変わり種に当たったみたいだった。


「龍太郎くん、これ美味しい! これなに?」

「ピーナッツ味噌」


意外なチョイスだった。

たしか茨城県の郷土料理だったよね?


「弁当にも入ってるから」

「そうなの?ちょっと楽しみ♪」


たまに龍太郎ってこういうサプライズみたいなことをしてくれる。

将来絶対にシェフか板前さんになった方が良いと思うなぁ。


「おっはよ〜!あっれ?美味そうなの食べてんじゃんお二人〜♪」


おにぎりに舌つづみをうっていると、後ろからクラスメイトの男の子が声をかけてきた。

稲波純也いななみ じゅんやくんだ。


「おう」

「おはよう」

「おはよう稲波くん」


三者三様の挨拶を返すと、稲波くんはヘラヘラしながら私達が食べているおにぎりに目をやる。


「龍太郎〜、俺にもなんか恵んでくんない?ちょっと朝メシ食べてなくてさ〜」

「お前はいつもそうだろ」


そう言いながらも、しっかりと稲波くんのおにぎりとお弁当を差し出す龍太郎。


「ありがと〜!心の友よ〜!」

「くっつくな」


メリメリメリメリメリメリメリメリメリメリ!!!


「あだだだだだだ!!!」


龍太郎のアイアンクローが炸裂した。

稲波くんってあんな感じで軽いし、服装も腰パンでだらしないけど頭良いんだよね〜。

なんなら成績上位だし。

私も頑張っるのに………。ちなみに学年トップは莉桜ちゃんだ。


そして器用に龍太郎のアイアンクローから逃れた稲波くんがおにぎりを口に運んだ。


「お、これアボカドじゃん!でもサッパリしてて美味しい!龍太郎なんこれ?」

「アボカドパクチーライム」

「なにその組み合わせw どして作ろうと思ったん?」

「ドイツで人気のおにぎりの具なんだと。バイト先の人がそう言ってたから作ってみた」

「まさかのドイツ!?メッチャウケるんだけど〜w」


一個二個と次々とパクパク食べる稲波くん。


「ふ〜!助かったよ龍太郎〜!」


お腹いっぱい食べて満足したみたいだ。

稲波くんのこういうところ、なんか犬っぽくて可愛く思ってしまう。

莉桜ちゃんも同じ事を思ったようで、『ワンちゃんみたい』とクスクス笑った。


「んじゃ〜俺ちゃん飼って〜w ワンワンw」

「え〜w どうしよっかな〜w」


こんな風に誰とでも仲良く出来るって、稲波くんの才能だなぁって思う。

初めて会った時は馴れ馴れしく感じてたけど、いつの間にか仲良くなってたし。

でもそれが龍太郎とケンカしたあとだったのか、お互いに頭から血をダラダラ流して家に連れてきてドン引きしたのは今でも覚えてる。


そうこうしていると、担任の先生がきてHRを始める。

今日も私達は勉学に励んだ。


=============================


放課後、私と莉桜ちゃんは図書室で予習復習をしていた。

科目は数学。

私は自分言うのもアレだけど、ものすっごく数学が苦手。こんな数式なんの役に立つのかなぁ?

頭からケムリを上げながら、なんとか無事に完了した。

「つ…つかれた〜〜」

「お疲れ様、佳鈴ちゃん」


脱力して机に突っ伏しながら何気なく窓側を見ると、空がもう赤色に染まっていた。

何かに集中するとアッという間に時間が溶ける。


「もう夕方かぁ」

「今日頑張ったもんね」

「う〜…だってあの先生小テスト魔じゃん。予習復習しとかないと色々ヤバいし」

「中間テスト近いから最近多いのかもね」

「言わないでよ〜…」


忘れておきたかった現実にウンザリしながら、私達は帰る準備をしていると、たぶん校内からだろうか、ネコ鳴き声が響いてきた。


「またネコ……最近多いねぇ」


ここ最近、私達の学校内では何故か野良ネコや迷い犬といった動物達がよく侵入している。

先生たちも戸締まりやらなんやらで対策は講じているが、あまり改善されていない。

場合によっては一生徒の家のワンちゃんが居なくなって、その後私達の学校内で…しかも授業中にその生徒の机の横にヒョコッと現れたりしていて理由のわからない状態になっていた。


一昨日おとついも授業中に教卓の上にネコちゃんいたよね」

「う〜ん…この学校って50年も経ってるから、そこまで老朽化するかなぁ?」

「え?ここって50年も経ってるの?」


興味が無かったから知らなかった学校の無駄知識トリビアを聞きながら図書室を出ようとすると、今度はネコのケンカする時の鳴き声が大きく響き、私達はビクッと驚いた。


「「…………………」」


校内が薄暗く静けさも相まって少し怖くなってきた。

私達はお互いの顔を見合わせて早足で下駄箱に向かおうとすると、途中で用務員さんと鉢合わせして驚いて悲鳴をあげて走って逃げてしまった。

用務員さんごめんなさい。


「はぁ〜っビックリした〜」

「まだ心臓がバクバクしてる〜」


校門を出て帰路に付くと、怖かったせいか予習した時よりもさらに疲れた。

それと同時にお腹も空いてくる。


いつもの通学路の道祖神どうそしんの前まで来ると、帰りのお参りを済ませてから朝にお供えしたチョコとクッキーをおさがりして、オヤツとして二人で食べる。

食べながら莉桜ちゃんと雑談をして、おさがりを食べ終わった時に莉桜ちゃんが声をあげた。


「どうしたの?」

「図書室に#$©€%¥忘れたかも」

「ホント?じゃあ取りに戻る?」

「ごめんね佳鈴ちゃん、ちょっとだけ付き合って?」

「いいよ〜」


さっきの怖かったせいかな?

普段忘れ物をしない莉桜ちゃんが珍しいなぁと思いながら、私達は学校へと戻って行った。。。。。




道祖神どうそしんの前を通り、角を曲ったあと、道祖神どうそしんに異変が起こる。


本来、道祖神どうそしんのようなお地蔵様がある理由の一つとして、神隠しに遭わないようにする意味がある。

現代の言葉で言い換えるなら、迷わないための目印だ。

そんな道祖神どうそしんの首が突然ヒビ割れ、ゴトンっと音を立てて次々と割れ落ちた。


まるでここから悪いことが起きることを示唆するかのように。

私達の身代わりになるかのように………。

次回、ホラーに入ります。

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『図書室に#$©€%¥忘れたかも』 『ホント?じゃあ取りに戻る?』 で文字化けしてます。
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