第26話 妖傷
お疲れ様ですよ〜∠(`・ω・´)
今回からセツの過去編です。
まずは前回から2日後からどうぞ!
………暗い。
闇の中で、アタシは浮かんでいるのか、それとも沈んでいるのか、よく分からない感覚の中で、アタシが経験してきた過去が走馬灯の様に視える。
多分、コレは夢だ。
『お母さん!』
今ではもう、ハッキリと思い出せない母さんが、アタシ達を生き残らせる為に、その犠牲になった。
そして………
『!!』
アタシを庇って、ドムは銃弾を受けた。
だが銃弾は貫通して、アタシをも貫いた。
そして………
ドッ!!
何かに貫かれて、意識を手放した。
「…………………」
そして、圧迫感のある状態で、アタシは目を覚ました。
「ここは……………」
見慣れない天井と、重いと思ったらアタシの身体の上に、サビ猫が座ってジッとコッチを見てる。
猫は目を覚ましたアタシと目を合わせると、顔を近づけて匂いを嗅いで、アタシの頭の横に移動して身体を丸くしてまたジッと見つめてきた。
猫に目を合わせると、その流れで床に布団を敷いてあの子……たしか佳鈴だったか?
彼女が寝ていた。
身体を起こして周りを見ると、どうやらここは彼女の部屋らしい。
シンプルな部屋だ。
でも、それでいて清潔感があって可愛らしい。
勉強机には、可愛らしいネコのピアスを大事そうにして、ハンカチの上に置いてあった。
彼女を誘拐した時にも着けていたヤツだな。
「やっと起きたのね」
ジロジロと部屋を見ていると声を掛けられた。
あの巫女服の様な格好をした妖精のような……たしか、
「シュリ……って名前だったな、お前」
「ふ〜ん、名前だけは覚えててくれたんだ?」
あの時みたいに少し不機嫌そうな愛想の悪さで、彼女は私をジロジロと見る。
「とりあえず、かなり回復はしてるみたいね」
そういえば、あの時かなり重症だったな。
言われて思い出したから、私はとりあえず自分の身体を見た。
左手をグーパーしたり、肩を回してみたり。
パンツ以外剥ぎ取られてほぼ裸のような状態だが特に問題は無かった。
「ほら」
「?」
雑に何かを投げられて、アタシソレをキャッチする。
なんだこの黒い塊は?
「秘伝の丸薬よ、それを食べれば回復は早まるわ」
……………すごくマズそうだが、とりあえず口にしてみる。
きな粉のパサパサ感が、口の中の水分を一気に持っていく。
シナモンチャレンジよりかはマシな方だか…。
その後に、ほんのりと甘い味が口の中に広がり、噛み続けていけば、ゆっくりと甘さが広がっていく。
食べづらくはあるが悪くはない。
「そこに水もあるから、水分補給しときなさい」
目線の先にペットボトル。
開けて喉を潤していると、シュリがアタシの胸の傷の事を話してきた。
「アンタのソレ、妖傷よね?」
………………アタシは少しの間、黙ってしまっていた。
あまりこの傷には触れられたくは無いが、多分コイツは気付いている。
「言葉が伝わらない?なら、聖痕とでも言えばいいかしら?」
「……………充分に伝わってるよ」
妖傷と聖痕とでは大分意味合いが違うが、大凡似ている。
人間の理解を超えた傷痕、と言えば同じだが、聖痕が清らかさや救済、信仰の証としての"浄化された傷"。
逆に妖傷は、邪悪な超自然的存在によって刻まれた"不浄で呪わしい傷跡"。
だが皮肉にも、この妖傷………この傷こそが、新たながこの悪魔の力を受け継いだ要因だった…………。
「いったい何に襲われたら、そんな傷を負うのか気になるけど、ともかくアンタはもう半日、ここで大人しくしてなさい」
言いたいことだけ言って、あのシュリとかいう妖精は部屋から出て行き、アタシはその後をついて行った。
「…………アンタ、安静にしてなさいって聞こえなかった?」
「いや、ちゃんと聞こえていた」
「だったら………」
「せめてシャツか何か羽織らせてくれないか?」
「…………………」
いや、さすがにほぼ全裸はマズイだろ?
「アンタの服はあの時にボロボロよ。だから、龍太郎の物でしか着れるものは無いわよ?」
「ああ、それでイイ」
そう言うと妖精はそそくさと別の部屋に入り、アタシはとりあえずリビングに入った。
リビングには彼がいた。
「起きたのか、お前?」
コチラを見ないまま、フライパンで肉を焼いている……たしか、龍太郎だったな?彼が居た。
「全裸で動き回るな」
「服をほぼ剥ぎ取っておいてそりゃ無いんじゃないか?」
「仕方ねぇだろ。それともあんな状態のままベッドに寝かし付けておいた方が良かったか?」
「別にそれでも良かったが?」
「…………………」
ああ言えばこう言う。
口で勝てそうに無いと悟った龍太郎は、舌打ちをしながら、コッチを見ないまま、少し厚めに切った肉を炒めた。
いい具合に焼き目を入れたら、パセリやミントといったい香草類を刻んだボールの中に焼いた肉を次々に入れて、菜箸で軽く混ぜ合わせた。
味付けは軽く塩コショウのみ。
熱々の肉を、彼は水にさらしてレンチンしたほうれん草の葉で、一個一個手早く丁寧に巻いていく。
余熱と肉の脂で、ほうれん草がいい具合にしんなりとなっていく。
旨味が染み込んでいるようだった。
作ってる間に妖精が龍太郎のワイシャツを1枚持ってきた。
私はソレを羽織らせてもらい、「血が足りてないから食え」とテーブルに促され、私はごご相伴にあずからせてもらった。
「アレから、どのくらい経ったんだ?」
「2日だ」
「そうか………助けてくれてすまない」
「佳鈴がそう望んだからな。
アイツはアイツで、人の本質を自然と見抜く」
だから決して悪い奴じゃないんだろう、と。
彼の目は最初の時と比べて、鋭さは残ってはいるが、敵意等は無かった。
肉を切って焼いて、味付けしてまたほうれん草で巻いてと、作りながらあの後のことを話してくれた。
埠頭はほぼ全焼。
ナナシが吹っ飛ばしたらしい倉庫の一つが、テレビ局にブッ刺さり、関係者が何人か亡くなったようだった。
元総務省の名前の知らない、天下りのゲス数名だったらしいが、被害は相当なものだったそうだ。
おかげで連日ニュース、新聞やネットは大荒れらしい。
とくに近隣住民の不安や批判がすごいと………。
「ナナシは?」
「アレから姿を見せてない。いつもそうだ、あのクソ野郎」
………不満でも溜まってるんだろうか、彼はなおも肉を焼き続けてほうれん草で巻いてドンドン作っていく。
アタシを大食漢かなんかと思ってるのか………?っと思ってたら、隣の妖精がすごい勢いで食べてた。
なんか、頬袋に食べ物を詰め込み過ぎたげっ歯類かなんかか?
「まっはふいいめいはふよ! ひょうはろうをつほふふるはめとはいっへはへぼ、はんはひはひほばはへはらほっひほひひめひはふほ!」
「飲み込んでから喋れ」
…………ニュアンスから多分、「まったくいい迷惑よ!龍太郎を強くするためとか言ってたけど、あんな被害を受けるコッチの身にもなれっての!」って言ってるのだろうか?
なんというか、アメリカのあの面々とキャラの濃さが変わらない気がする。
少し呆れて食べていると、後から静かにあのサビ猫がやって来た。
猫は龍太郎の隣に座ると、今度は彼をジッと見つめ始めた。
「わかってるからそう睨むな」
猫に話しかけて少しすると、フライパンの隣でグツグツと湯気を上げいた鍋のフタを上げた。中には湯引きした、鶏のササミと鶏レバー1個が出てきた。
二つとも鍋から取り出して、ボウルに移し替えると氷水でササミとレバーを締め、キッチンペーパーで水気を切る。
ササミは肉の繊維に沿って手早く解していき、レバーは包丁でほぼペースト状になるまで叩いた。
出来たソレを、猫のご飯と混ぜて器に移し、猫の前に置いた。
猫は少し匂いを嗅ぐと、勢い良くガッついて食べ始めた。
この家の中では、この猫が一番の大物なのかもしれないな。
とりあえず、肉はありがたく食べさせてもらった。
でもあの量……あの妖精がホントに食べきったな。
ウチのキッチンドランカーと変わらねぇ量だった…。
んで、食べ終わるとタバコを吸いたくなる。
「なぁ、私のタバコはまだ残ってるか?」
「…………ほら」
リビングの棚の中に入れてあった、私のタバコと携帯灰皿を彼が放り投げ、私はそれをキャッチ。
「ベランダ借りるぞ」
今の時代、喫煙者にとっては住みにくい。
まぁ、この吸ってるタバコは、世界でも類を見ないほどにニコチンとタールの量が多いから、周りに与える副流煙の弊害は段違いに高い。
静寂のなか、タバコのパチパチという音だけが響いた。
「………………」
佳鈴は、いったいどうして私を助けようとしたのか……。
タバコの煙を吐いて、自然とそういう考えになってしまう。
彼は、あの子は自然と人の本質を見抜くと言っていたが、私の何を見抜いたというのだろうか?
パチ…パチパチ…………パチ…
70年前から、アタシの時間は止まったままだ。
あの時、ドム…………ドミニク·ジョンソンという男が、私の育ての親が死んだ時、アタシは彼から悪魔の力を受け継いだ。
今以上に人種差別の酷かったあの時代、何度も私を《かば》って、銃器の扱いを教え込まれた。
そして、親以上に無償の愛を、不器用ながらでもアタシに与えてくれた。
戦争で両親と徴兵された兄を亡くし、唯一の血縁であった弟と生き別れ、あの地獄の中から拾い上げてくれた。
今でも目を閉じれば鮮明に思い出す。
アタシと………ドムとの出会いを……………………。
次回は連続投稿となります。
∠(`・ω・´)頑張るぞい




