第23話 唾
お待たせしました∠(`・ω・´)
今回は佳鈴の視点からです。
朱里さんから、あのナナシって人が人型の妖魔だと聞かされて、驚愕したのと同時に納得もした。
見ているだけでも恐ろしくて、なによりもあの笑顔が恐ろしかった。
あの時のカマキリ以上の恐怖のせいで吐いてしまう程に恐ろしくて、正直朱里さんの温かい力が無かったらずっと吐いてる。
赤い髪の人の髪を掴みながら、BB弾であの人の身体を穴だらけにして、血を流して苦しんでいるその様子を見てケタケタ笑っているのを見て、さらに恐ろしくなる。
以前に朱里さんが「妖魔どんな形をとっていても、基本的に残虐性が高い。
子供が命の尊さを知らずに、虫の羽を千切ちぎって面白がるように、妖魔も人を弄ぶ」と言うのを思い出したけど……………妖魔ってここまで酷いの?
想像以上の酷さにまた吐いてしまいそうになる。
血の臭いが周囲に充満し、あのナナシって妖魔以外、全員が満身創痍。
しかも相手は、伝説の妖怪と名高い"鵺"。
「龍太郎…お願い……起きて」
私は藁にも縋る思いで、龍太郎を揺すった。
ナナシに吹っ飛ばされて叩き付けられて、夥しい量の血を流して気を失って、あの赤い髪の人を助けてと懇願した。
自分でもわからないけど、あのセツって人は死なせちゃいけない!
自分の心が、魂がそう訴えてるように思えるのと同時に、人が死ぬのを見たくないという思いが強かった。
だが、そんな私の思いとは裏腹に……。
「あぐっ!」
ナナシは赤い髪の人の膝に、BB弾を撃ち込んでヘラヘラ笑っていた。
「プハハハハッw イイ声で鳴くじゃないw」
撃ち込まれて、破裂したBB弾の破片が赤い髪の人をさらに追い込んで、その表情を愉悦の表情で楽しむナナシに対して、赤い髪の人は痛みに耐えながら、視線だけはナナシから外さないように睨み付けていた。
「そして折れない精神性もイイね♪ さすがはあの『黒い猛獣』に育てられただけの事はある♪」
「!!?」
赤い髪の人が、ナナシの言葉に目を見開いて反応し、さらに強い睨みを効かせた。
物凄く触れられたくない事みたい。
「テメェ………なんで…」
「ん? なんで? そりゃあの時俺もその現場に居たからだよw
70年前の、あの現場に、ね?♪」
「なっ……!?」
赤い髪の人が大きく眼を見開いて驚く。
驚く彼女をよそに、ナナシはニヤけた笑顔のまま…フザケた口調で言葉を続ける。
「まさかあの時の小娘が弾丸の魔女って呼ばれるとはね〜w
しかもあの『黒い猛獣』の悪魔の力を引き継ぐとかw いや〜、人生ってわからないもんだよね〜w」
ペラペラと語るナナシ。そんなナナシの言葉を赤い髪の人は黙って聞いて…………いなかった。
微かにだが、目を見開いて、ブツブツと何かを呟いていた………。
その呟きにナナシが気付いた。
「ん〜? なに〜?」
「…………るな」
「あ?」
聞き返したナナシを髪の毛を、赤い髪の人は折れた指で掴んだ。
痛みを無視して、赤い髪の人は凄い形相でナナシを睨み……………
「ドムを…………その名で呼ぶなっ!!」
ナナシに折られた指がパンパンに腫れ上がって、とても痛いはずなのに、赤い髪の人は凄く怒った表情で、ナナシに食って掛かった。
「なに? 髪型乱れるんだけど?」
「知るかっ!! あの時、あの場所に居たなら答えろっ!!
お前がドムを殺したのかっ!?」
眼を血走らせるように見開いて、声を荒げて赤い髪の人はナナシに詰める。
まだ出会ってそんなに時間は経ってないけど、この人がここまで荒ぶるなんて………。
勝手に赤い髪の人にクールなイメージが付いてしまってたから驚いたけど、ナナシは赤い髪の人に対して不敵な笑顔を向けたまま……
「ていw」
ボキンッ!!
「がっ………!!」
髪の毛を掴んでいた赤い髪の人の腕を、指一本で、凄い音を立てながら折った。
「あのさ? 人にモノを尋ねる時って、アメリカじゃあ、髪の毛掴んで恫喝することが礼儀なの?」
顔は笑っているのに、目が笑っていない。
赤い髪の人の髪を掴んでる手に力が込められ、ナナシは赤い髪の人をまた地面に顔から叩き付けた。
そしてまた持ち上げて、今度は赤い髪の人のもう片方の腕を指で突いてまた折り、そしてまた顔を地面に叩き付けた。
「ヒッ……!」
「わかる〜? コレが日本で人にモノを尋ねる時の礼儀『土下座』って言うんだよ〜?w」
頭からまた激しい出血をして、顔面が血塗れの赤い髪の人の姿に、思わず小さい悲鳴を上げてしまった。
酷すぎても言葉が出来ない!
「ほら、わかったらちゃんと土下座して頼みな? ブレッドウィッチちゃんの大切なたいせつなドムドムくんを殺したのは、だ〜れ〜で〜す〜か〜ってw」
バカにして見下した物言い。
ナナシは赤い髪の人だけでなく、彼女の大切な人の事をも嘲笑して煽る。悪意全開でまた吐きそうになる。
顔を潰され、両手両腕を壊されて………普通の人だったらもう、心身共に折れてしまっているはずだった。
でもあの赤い髪の人は……最後の抵抗と言わんばかりに………
「ぺっ!」
ナナシの顔に、血の混じった唾を吐きつけた。
「ドムを…………殺したのは……お前か?」
思ってもみなかった赤い髪の人の行動に、私は驚いていた。
まさか、あんな状態で挑発し返すなんて思ってもみてない。
朱里さんだって「ちょっとちょっと!?」っといった顔で驚いていた。
顔に吐きつけられた唾を、ナナシは指で掬い上げ、その唾に視線を落としてジッと見た…………そして、
「ペロ」
「「「!?」」」
その唾を舐め取った。
ズズズ〜っとわざと音を立てて、そして味わうかのように口をモゴモゴして…………飲み込んだ。
「う〜ん、血が混じってても女の子の唾は美味いもんだねぇ〜?w」
普通は激昂とかする場面だと思うのだけど………ナナシの斜め上の行動に私も含めて朱里さんも赤い髪の人もドン引きした。
もうダメ、キモ過ぎる!!!
赤い髪の人の唾を舐め終わると、ナナシはなんの前触れも無く、今度はデコピンを彼女のお腹に当てた。
ボゴッ!!という鈍い音が響き渡り、凄まじい衝撃が赤い髪の人に襲い掛かり、彼女は激しく吐血した。
「ゴブっっっ!!!!」
「そんなに知りたい? なら、美味しい唾を貰ったから、特別に名前だけなら教えてやるよ」
虫の息の状態の赤い髪の人にやらしい笑みを近付けて、彼女の耳元で囁いた。
「キミのたいせつなドムドムくんを殺したのは、ジョンジェーンってヤツだよw
通称『JJ』。フランケンシュタインの妖魔さw」
ヒュー、ヒューと辛うじて息が出来ている状態の赤い髪の人に、いやらしい顔を近付けて、煽りながら仇の名前を告げると、ナナシは赤い髪の人の服を破き、私は息を飲んだ。
彼女の胸には、火傷のような大きなケロイド状の酷い刺し傷の跡があったからだった。
「そして、この胸の傷を付けてた相手名前でもあるよw」
いったいどんなので刺されたら、あんな傷跡が出来るの?
普通の刃物じゃあんな傷跡は出来ない!
「最後に仇の名前を教えてあげたんだ、これでもう心残りは無いよね?」
「!?」
そして唐突に死刑宣告を告げた。
…………ダメ
(ーーーーーーーーーっ!!!)
私の頭の中に、声にならない声をあげる莉桜ちゃんの声が響いた………。
「いっそのこと、女として一発ヤッても良かったけど、俺オッパイ小さいのダメなんだわw」
最低過ぎる理由を告げると、ナナシが五指を揃えて貫手の構えを取とった。
まさか………素手であの人を貫こうとして…!?
………ダメ!
グチャグチャと肉を食い千切る………あの時の音が頭の中で響いた………。
「いくら悪魔憑きでも、心臓を潰されれば死ぬ。キミは今後、俺の大きな障害になりそうだしね?」
「………………………」
「もう返事も出来ないかw うんじゃ、遠慮なくヤッちゃうかw」
貫手の腕に力が込められた。
ダメ!!
(佳鈴ちゃん………………………て……)
「サヨウナラ、ブレッドウィッチ♡」
なんの躊躇も無く、ナナシが貫手を放った!
「ダメーーーーーーーーーーーっ!!!」
わたしのせいで、また、ひとがしぬ
イヤだ………
イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!!!!
赤い髪の人が殺される!!
私を誘拐したけど………それでも守ってくれた!
あの人と莉桜ちゃんとが重なった。
あの人は莉桜ちゃんじゃない。
でも……………!!!!
(佳鈴ちゃん………………………たすけて……)
っ!!
(カリンチャン…………タスケテ……)
「やめてーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
叫ぶしか出来なかった。
お願い………誰か………………神さま…助けて!!!!
ガウンっ!!!
「「!?」」
火薬が炸裂した、乾いた重い音が埠頭に響いた。
撃たれた弾丸は、貫手を放とうとしたナナシの手を貫いた。
「お?」
素っ頓狂な気の抜けた声をあげ、少し驚いたような表情をしながら、ナナシは弾丸の撃たれた先を見た。
そこには、赤い髪の人の大型拳銃を片手で構え、銃口から硝煙を上げて、紅い目を光らせてナナシを睨む龍太郎だった!!
だが、ナナシが私達の方に視線を向けた直後、赤い髪の人の髪を掴んでいたナナシの手が両断された!
斬ったのは………龍太郎!?
え!? 龍太郎が2人いる!?
ナナシの手を斬り飛ばして、解放された赤い髪の人を、流れるような動きで抱きかかえて私達の元に戻って来て…
「朱里!!」
「ったく、ホントに人使いが荒いわね!」
直ぐ様救出した赤い髪の人の治療術をかけ始めたのと同時に、大型拳銃を持ってた龍太郎が力無く倒れ、パンっと弾ける音をして消えてなくなった。
そして朱里さんの状態が、とんでもない事になってた。
頭から出血してるついでに、鼻血がとんでもない事になってた……。
「……………へぇ〜? なるほどねぇw」
私達の方を向いて、斬り飛ばされた自分の手を拾い上げながら、納得した表情でナナシが笑顔を向けていた。
「俺がブレッドウィッチ虐めに夢中になってた時に、龍太郎くんの擬態式神を用意して、本物の龍太郎くんは影現で気配を殺して隙を伺ってたのか」
この龍太郎って………式神ってたしか、陰陽師が使うことで有名なアレ?
いつの間に………。
「クハハハハハっw 夢中になってたとはいえ、まさかついに龍太郎くんに斬られることになるなんて……………今日は記念日だね!!w」
手を斬り飛ばされたのにナナシは大喜びして、辺りに血を撒き散らしながらクルクル回って踊っていた
異様過ぎる………。
でもそんなフザケた事をしていても、隙が全く見当たらないらしく、龍太郎は歯軋りをしながら刀を構えていた。
「あぁでも、ここでこのまま戦い続けるのもなんか勿体ない! 一気にイッたら楽しみが減っちゃうから今日はこの辺りて引くとしよう。
でも、ただ引くだけじゃそれも勿体ないから、記念に龍太郎くんには、ちょっとした試練をプレゼントするよw」
まだ何かするつもりなの!?
何をするのか分からないナナシの言動に戦々恐々していると、ナナシは斬り飛ばされた自分の手を踏みつけ、聴き慣れない言葉を一言紡ぐ。
すると彼がばら撒いた血が脈動し、踏みつけた手に血が一気に集まり始めた。
一拍置くと、また大きく脈動した。その振動は空気を震わせて私達にも直接肌で感じられるほど強く、何が生まれてくる…………そんなイヤな感じがした。
直後、突如として埠頭を黒い雲が覆い、ゴロゴロと音が響いた。
まさか………………。
龍太郎も朱里さんも、私と同じイヤな予感が走った。
その予感は、見事に的中した。
埠頭に、ナナシに落雷が落ちた。
一瞬で辺りに血と焦げ臭いニオイが立ち上り、白い煙がナナシの姿を隠した。
そして煙が薄まると、ニヤけた顔のナナシとその側には、バケモノがいた。
鼻息荒く「ヒョーっ!ヒョーっ!」と鳴き、猿の顔、狸の体躯、虎の四肢、尻尾が蛇そのもの。
伝記に記されていた"鵺"がそこにいた!!
「驚いたかい?w 1000年前くらいに、破魔矢で撃ち落とされそうになった時以来の分け身だけど、俺の手を斬れる実力がある龍太郎くんなら充分に倒せるはずだよw」
鼻息荒く、威嚇している鵺の頭をポンポンしながら、ヘラヘラした態度でナナシは挑発してくる。
倒せるって………朱里さんのおかげで傷は塞がってはいるだろうけど、龍太郎ここまで相当量の血を流してる。
今動くことすら辛いはずの状態なのに、まだ戦わせるの?
「でも、タダで俺の分け身を倒しちゃ芸がないから、もうちょっと難易度を上げておこうw」
ナナシがまた何か良からぬ事を考え、今度は鵺から数歩後ろにさがって、比較的損害の少ない倉庫の前に立った。
そしてヤツは………倉庫に向かってデコピンした。
ドンっっっっっ!!!!!!!!
凄まじい衝撃音が響き渡り、デコピンされた倉庫は物理法則を無視してギャグ漫画のようにキレイに飛んでいった。
「…………は?」
私はマヌケな声をあげてしまった。
飛んでいった倉庫は、某有名テレビ局の建物にキレイにブッ刺さり、窓ガラスと瓦礫が周辺に落ちて行き交う人達に大きな被害をもたらした。
…………ちょっと待って?
さっき赤い髪の人、ナナシのデコピンお腹に受けてたよね?
倉庫一つ飛んでいくほどの威力と衝撃を直に受けたとすれば……赤い髪の人のお腹のなかは……………!!
「テメェ……!!」
「コレでここの人払いも壊れたw ここに警察が来るまで、あと15分ってところかな?w」
生み出した被害に何にも感じていない様子で、ヘラヘラしながら拝むようなポーズをして笑ってる………。ナナシの………妖魔の嗜虐性を改めて垣間見たように思えた…………。
「うんじゃ、制限時間15分以内に分け身を倒してみようw
それじゃ、がんばってね〜w」
そう言うと、ナナシは残った片手をヒラヒラさせて歩いて何処かへと歩き始めた。
龍太郎が「待ちやがれ!」とナナシに飛びかかろうとしたが、鵺が行く手を阻んだ!
唸り声を上げて、龍太郎に向けて殺意を宿す視線を向けながら鵺が吠えた!
吠えると同時に、雷が周辺に10本ほど落ち、その轟音は鵺と龍太郎との、死合いのゴングのように轟いた。
次回!
鬼と鵺とのバトル!!
被害は甚大です∠(`・ω・´)
そしてモンハンワイルズが楽しいヽ(=´▽`=)ノ




