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人外討魔伝記  作者: 一ノ瀬カイヒロ
第二章 弾丸の魔女
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第22話 ツギハギの妖魔

お待たせしました∠(`・ω・´)

今回は朱里の視点からお送りします。

朱里(しゅり)視点〜


迂闊うかつだった。


埠頭ふとうでの戦いに、一旦いったんの終止符が打たれたと思って油断していた。


流れであの赤髪セツに治癒術を施そうとした時、突如として現れたアイツ(ナナシ)に、戦慄せんりつして動けなかった。


佳鈴かりんちゃんにセクハラをしようとした時に、激昂げっこうした龍太郎りょうたろうの突きをかわし、その後、感情のままに突撃して行って、状況がまた変わった。



ただでさえ、アレだけ血塗ちまみれで出血しているのに、怒りで痛みを忘れる。

そのせいで傷口から更に出血して、もう龍太郎りょうたろうの白い制服が、血で赤黒く変色している。


さらに、鬼の力を全開で使っている。



あんな状態で鬼の力を全力で使ったら、いつ意識が無くなるか分かったものじゃない!



どうにかしてサポートしないととは思いつつも、私は動けずにいた。


佳鈴かりんちゃんと、あの赤髪セツが近くに居た事がさいわいして、私はさま結界を張りつつ、赤髪セツの治療には入れてはいた。




「があああぁぁぁぁーーーーーーーっっ!!!」

「ハハッ!イイねイイね!!確実に前より強くなってるよ龍太郎りょうたろうくんw」





治療の間も、ハイスピードで戦闘を繰り広げる龍太郎りょうたろうとナナシ。



全力の龍太郎りょうたろうに対して、ナナシは完全にってる態度で、龍太郎りょうたろうの斬撃を、蚊でも払うかのように素手でいなし、さばいってダメージゼロ。



実力差が明らかだが、それでも龍太郎りょうたろうは怒りのままに攻撃を繰り出す。


刀、拳、蹴り、手数も威力もさっきとはケタ違いに増している。けど、ナナシはホントに子供と遊んでいるかのように、容易たやすさばいていく。


佳鈴かりんちゃんには癒しの波動を、赤髪セツには治療術と、それぞれ別の術を使って、さらには結界を張っていた。



器用だと思われるだろうけど、正直言って脳が焼けそうに痛い!



佳鈴かりんちゃんは、ナナシの底無しの悪意と妖気にてられて、恐怖のあまり震えて起きあがる事ができない。

赤髪セツは、龍太郎りょうたろうとの戦闘で半身不随はんしんふずい状態。



状況は最悪だった。





「ったく!なんでこんな時にアイツ(ナナシ)が出てくるのよ!」





愚痴を零しながらも、必死に3つの術を使い、頭の痛みと滝のような汗を流す。

そんな大変な中、あの赤髪セツが声をかけてきた。



「お前……アイツを知ってるのか?」

「は?だったら何よ?」

「アイツは……いったい何だ? あり得ない力の混ざり様だったぞ?あんなの、合成獣(キメラ)ですらあんないびつな混じり方はしない!なんなんだアイツは!?」



赤髪セツの青い魔眼には、アイツ(ナナシ)がその様に視えるらしい。


ギリシャ神話に出てくる合成獣(キメラ)と比べたら、そりゃ奴の方がいびつでしょう。

でも、奴と合成獣(キメラ)とでは、出生の経緯けいいが違う。



「そりゃそうでしょ、アンタの言う合成獣(キメラ)が何なのかは知らないけど、アレを一緒にしない方が良いわよ! アイツは……っ!!!」



言いかけようとした時だった。


ナナシに吹っ飛ばされて、地面をバウンドしてきた龍太郎りょうたろうが結界につかり、かなりの衝撃が私に伝わってきた!



しかも、結界内の佳鈴かりんちゃんが一番間近に衝撃音を受けて、恐怖状態から気が付いて、赤黒く変色した制服姿の龍太郎りょうたろうの状態を見て驚いて顔を青くした。




「いや〜メンゴメンゴw

ちっとばかし手加減ミスったわw」




そこに音もなく現れるナナシ。


再びナナシを目の前にした佳鈴かりんちゃんは、奴の底無しの悪意宿る笑顔に、得体えたいのしれない恐怖を再び感じ取り、恐怖のあまりに嘔吐おうとした。



「ちょっとちょっとw 人の顔見てゲーするとかヒドくない?w ほら、背中ポンポンしてやるよ♡」



そう言って奴は、私の結界をデコピンで弾いた。



その衝撃は、頭をハンマーで殴られるのと大差がない。



私の結界は音を立てて割られ、その反動で私の頭から血が吹き出した。

意識が持っていかれそうだったけど、かろうじて地面に崩れ落ちた痛みで、気を失わずに済んだ……。


が、一気に状況が最悪になった。




「ほらほら、オレちゃんゆっくり介抱してあげるから♡」




奴の手が、佳鈴かりんちゃんにセクハラしようとした時、今度は奴に鉛玉なまりだまが飛んできた!




あの赤髪セツが、奴に向けて銃を撃ったんだ!





仰向けで大型拳銃グリズリーを両手で構えて、ナナシの頭を狙って撃たれた弾丸は、真っ直ぐに飛んでいったが、弾丸がナナシの頭に当たることは無かった。



ナナシは弾丸に反応して、指突しとつを軽く放ち、弾丸を端微塵ぱみじんに消し飛ばした!




「な〜に〜? こんどはブレッドウィッチちゃんが相手してくれるの〜?」




貼り付いた笑顔を向けて、赤髪セツに軽口を叩くナナシに、彼女は舌打ちして、一気に魔力を弾丸に込めて撃とうとした。


が、引き金を引くより速く、ナナシが赤髪セツに接近して、彼女の左右の指の骨を、指突しとつで折ってしまった!!


痛みで大型拳銃グリズリーを手放してしまい、赤髪セツはナナシに髪の毛を掴まれて、持ち上げられた。




「チっ!テメ……!」

「いきなり弾丸とかヒドくない?

コレでも一応、キミの依頼主クライアントなんだけどな〜?w」




そして告げられた言葉に、赤髪セツは目を見開いた。それは私も聴いてて、驚きを隠せなかった。




「は……? 依頼主クライアント……まさか、この依頼はオマエが!?」

「そそ! キミに龍太郎りょうたろうくんと戦うように依頼したのは、このオレw」




まさか、龍太郎りょうたろうと戦わせるように依頼したのがコイツ!?




「オレちゃんの目的の為に、龍太郎りょうたろうくんには強くなってもらわなきゃいけないんだけど、その為には、彼の中の封印がものすっごくジャマなのよ。

んで、早急にこの封印を少しでも取っ払う為に、力の資質が似てるキミに依頼させてもらったの♪

だから、すっごく感謝してるよ♡

今から口座に全額振り込んでおくからね〜w」




スマホを取り出して、アプリを使ってササっと振り込みのボタンをタッチすると、ナナシはその画面を赤髪セツに見せつけた。




「コレで依頼完了w

また何かあったらメール送るから、またよろしく〜♪」




そしてナナシはなんの前触れもなく、赤髪セツの腹にひざを打ち込み、地面へと顔面を叩き付けて、赤髪セツの頭を躊躇ちゅうちょなく踏み付けた!!





「んで? なんで佳鈴かりんちゃん介抱しよとしたら、撃ったのかな?」





そして再び赤髪セツの髪の毛を掴んて持ち上げ、闇のような瞳で…笑顔ででこ赤髪セツに迫るナナシ。


これちょっとイラついてるわね…。


奴の様子を密かに観察しながら、ゆっくりと佳鈴ちゃんの所に行き、私は再び癒しの波動で彼女の状態を落ち着かせた。




「ハっ! あんな依頼を無理矢理やらせておいて、わからねぇか?

誰が未成年と戦わせた?

そして誰が、普通の人間の女の子を、こんな危険な事に巻き込ませた?

やった実行犯は私でも、それを依頼したテメェに対して、一発撃っとかなきゃ気が済まねぇからだよ!」

「ふ〜ん? 一発ねぇ?」




不敵な笑みを浮かべながら、ナナシはズボンのポケットから何かを取り出し、それを赤髪セツに向けて親指で弾いた。



パンっと音が響き、赤髪セツの肩の骨が砕かれた!!



関節ごとヤられて、苦悶くもんの表情の赤髪セツの顔を、ナナシはニヤニヤしながら2発、3発と撃ち込んでいく。



音に驚いた佳鈴ちゃんが振り向き、赤髪セツの方を見るとその光景が目に入って、息を飲んで驚いた。


やつが親指で弾いていたのは、BB弾だった。


普通、あんな小さなプラスチックの塊が、人体を貫く訳がないのだけど、奴の場合は理解不能な力でBB弾を弾いて人体にメリ込ませて、その衝撃でBB弾が破裂。


傷口周辺に細かいプラスチック片が食い込んでかなりのダメージになる。



「がっ……あぁっ!」

「プッ……プハハハハッw 一発どころか何発も食らってやんのw」



ボロボロの赤髪セツをさらに追い込んで、痛がって血を流すその様を見て、嗜虐的しぎゃくてきな笑みを浮かべて笑うナナシの姿に、佳鈴かりんちゃんは顔を真っ青にした。


そりゃそうでしょう。


もしこんな状況で、ナナシと同じ様に笑える様な人間がいたら、ソイツはサディズムの極みだ。




「なんなの……あの人」




あまりの光景に、佳鈴かりんちゃんが言葉を漏らした。

癒しの波動を浴びせつつ、龍太郎りょうたろうに治癒術を使って回復させながら、私はナナシの正体を言った。




「アイツは、人型の妖魔よ」

「え?…アレも……妖魔?」

「妖魔はね、長く生きて人の命を多く奪い続けたらああやって人型になるのよ」




かつて、奴は『平家物語』や『摂津名所図会(せっつめいしょづえ)』にも書かれてその名を全国に知られた。そして一度は源頼政みなもとのよりまさに弓で撃ち落されたとされたが、実際には肉体を半分に割って擬態を作り出し、それを死体として落下させて事なきを得て数多の人の命を奪い続けた。



そして奴が自らを名無し(ナナシ)と呼ぶのは、奴自身が正体不明という意味の名で呼ばれた事からだった。



それも当然だろう。

赤髪セツいびつな力と言った理由も、ここに起因きいんする。


顔は猿、胴体がたぬき四肢ししは虎で、尾が蛇。声はトラツグミという鳥みたいに「ヒョーヒョー」と不気味に鳴く。


雷を自在に発生させ、尾の蛇の毒を撒き散らし、虎の爪で引き裂き、かつては『雷獣』とも呼ばれた奴の正体は、"ぬえ"と呼ばれた存在だった。

ほとんどウィキペディアや検索すればぬえはこう書かれてますが、私にとってはすごく助かります。感謝!

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