第20話 人外滅討術
前半は佳鈴目線で。
後半はセツ目線でいきます∠(`・ω・´)
そして最後は………
「見せやるよ、鬼が人に伝えし、魔を祓い滅する原点となる退魔法、人外滅討術を」
龍太郎が落ち着きを取り戻して、鬼の力に当てられていた私の息苦しさは無くなっていた。
さっきから眼にも止まらない速さで戦闘をくり広げられて、展開に理解が追いつかないけど、龍太郎が刀を構えてから、両者の空気が更に張り詰めて緊張が走る。
そして龍太郎が言った"人外滅討術"。
多分、読んで字の如くのものだとは思うけど、いったいどんな風にして戦うのか、皆目見当も付かなかった。
けどそこは、朱里さんが教えてくれた。
人外滅討術は、起源不明の、あらゆる退魔法…悪霊やその他魔物を退ける、又は退治する方法の事と、その方法の大元となるものだと教えてくれた。
退魔の歴史は古く、退魔という言葉は、群馬県伊勢崎市の退魔寺というお寺の名前に使われていることから、比較的古い時代から存在したと言われている。
他にも宗教によって退魔法は様々存在しているけど、ここで有名なモノを上げるとしたら【悪霊退散】だろう、と朱里さんは真剣な面持ちで答えてくれた。
そして人外滅討術には、決まった型とかは無く、如何に上手く、霊力や人外の力等を扱うことが出来るかを重視するものらしい。
子供の頃、警察官のお父さんに憧れて、私と龍太郎は剣道や柔道、空手に合気道も習ってきて基礎は出来ていた。
そして、とある場所で実戦に模擬戦を行って、人外滅討術を叩き込まれて、現在に至ると…。
しかも龍太郎には、成長封印が施されているとか…………。
龍太郎、あなた……一体なんなの?
次々と私の知らない、家族の隠れた一面を知って、私は少しショックを受けていた。
今まで一緒に暮らしてきて、何でも知ってると思ってたのに……。
実は人外…鬼で、日本刀を振るって人外と戦って、さらには、人と命のやり取りまでやって…………。
日常生活からは想像もしてなかった。誰が想像出来ると思う?
それでも、龍太郎は私を守る為に戦っている。
何かしたいと思っても、何の力も持ってない自分じゃ、龍太郎の足を引っ張るだけ…。
現に莉桜ちゃんの時も、カマキリのお腹の中から莉桜ちゃんが出てきた時に、勝手に飛び出して、命を失いかけて…………。
そして今は、私を助ける為に、あんな血塗れになってまで戦って………。
私は只々、龍太郎の無事を祈ることしか出来なかった。
そんな私の様子を見て、朱里さんはまた苦虫を噛み潰したよう顔をする。
彼女からしてみれば、龍太郎が私を守る明確な理由と事情を知っている故に、ここでその理由を口にできない事が歯痒かった。
言えない罪悪感を仕舞い込んで、再び前を向いて、龍太郎と赤い髪の女性との闘いに目をやった。
龍太郎は集中力を上げて、神経を研ぎ澄ませて、鬼の力で全身を覆い纏い、刀の刃紋が炎の様に揺らめいている。
まるで、鬼の力の奔流を現すかのように力強く、荒々しくも静けさを表すように感じた。
朱里さんも固唾を飲んで、この戦闘の終わりが近いと予見する。
(龍太郎、貴方があの赤髪に勝とうとするなら、初見のアドバンテージをフル活用して、尚且つ、何をしているか見破られるまでが勝負よ。今の貴方じゃ、人外滅討術の基礎しか出来てないんだから……)
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〜セツSide〜
「まんま分かりやすい武術の名前だな?
で?さっきよりは、良いもん見せてくれるんだよな?」
「………今にわかる」
目の前の龍太郎が紅い目を光らせて、アタシを見据え、コレから何をしてくるのか…………。
人外滅討術と言ったか?
名前がそのまんま過ぎて分かりやすいが、恐らく古武術に該当するなんらかの戦闘術か…?
いずれにせよ、早めにこの龍太郎が、何をしているかハッキリさせないと、初見殺しをされかねない。
アタシは通常状態で本気を出す事にし、自身の魔力残量と状態を確認してから、魔眼でかの少年を見据えた。
さっきから鬼の力がダダ漏れだが、それでも落ち着きを取り戻してからは、荒々《あらあら》しさが大分無くなっていた。
だがそれでも、大き過ぎる鬼の力で、彼の周辺は鬼の力に包まれて、デカい火のような目印の様に視えていた。
さて、どうするのか見させて……っ!!
ヒュッ!
ハラ………
気を抜いたりはしていない。
まただ。
左腕の裾を斬られた時と同じ、また空間を切り取ったように接近された。
今度は前髪を数本斬られた。
アタシの魔眼は、人外の力を視るだけでなく、筋肉が動く時の微細な電気信号すら見て取れる、望遠広域の千里眼でもある。
だからそうそうに、見逃すことはない。
だが…………見誤った?
しかも足音すらも無く、ただ刀を振るう音だけが、静かに聴こえた。
コレは何かあると確信した私は、目の前の龍太郎………いや、鬼に対してこれまで以上に注視した。
その一挙手一投足一つ、見逃さない!
先手はアタシが取った。
大型拳銃をあの鬼に3発撃ち込むが、奴は一振りで、弾丸全てを斬り伏せた。
直後、今度は背後から音も無く鬼が現れて、刀を振り降ろそうとする!
アタシは透かさず、ソードオフを右手に持ち替えて、背面撃ちで対応しようとしたが、撃った瞬間、今度は真っ正面に鬼は瞬間移動でもしたかのように現れ、驚いた私は左手の大型拳銃で鬼の斬撃を受け止めた!
鬼の力で、肉体が大幅に強化でもされているのか、片手では受けきれず、右腕を添えて、片膝を着いてようやく受けきれたが、なんつー圧力だよ。
金棒だったら潰されてペシャンコだが、刃物なら………。
アタシは耐えていた状態から、あえて脱力し、刀の刃を大型拳銃で滑らせて捌き、回し蹴りで鬼を吹っ飛ばそうとするが、当たる瞬間に鬼は姿を消し、今度は左側面に出現する。
ガラ空きとなったアタシ背中に、衝撃が走った。
鬼の左拳がメリ込み、メキッと音が身体の中に響いて、アタシは錐揉み回転しながらコンテナに叩きつけられた。
痛みに耐えながら、鬼向かって大型拳銃を連射するが、奴は刀で銃弾を斬り落としながら接近してくる。
(……?)
アタシは疑問に思った。
なんでこの鬼は、さっきみたいに現れない……?
あの瞬間移動のように、急に現れたり消えたり出来るのなら、何故今しない?
硬いコンテナに叩きつけられて、痛みで動きが少し鈍くなってる今なら、連撃を叩き込まれてもおかしくない。
チャンスのはずなのに、何故ここで普通に接近してくる?
何か条件があるのか?
疑問に思いながら体制を整え、連射しながら私も鬼に向かって突っ込んで行く。
何か条件のようなものがあるのなら、千里眼を駆使すれば、見つけられるはず。
互いに接近し合い、何度目かの私の銃と、鬼の刀が火花を散らして打つかり、激しい戦闘を繰り広げた。
その中で、また現れては消えるを繰り返して、アタシは翻弄される。
いくらこの鬼の体の動きを見ても、あの瞬間移動のような動きが出る時の起こり見えない。
体の電気信号も、通常の動きしかしていないから、鬼の力を使って、瞬間的に身体能力を上げることはしていない。
となると、考えられるのはいくつかある。
この状況下で、特に一番考えられるは、特定の何かを何処かに設置する。
例えば、印紋か何かを戦闘中に仕込んで、それを起点して瞬間移動している可能性高い。
そして、設置出来るとすれば地面。
アタシは視界を地面にまで広げるが、特に何かを設置している様子もない。
というか、人外の力が見えない。
なら一体コイツは、どうやってあんな瞬間移動をしている?
少しイライラしながらではあったが、一度全体を俯瞰視してみようと、アタシは千里眼で視野を大きく広げた。
大型拳銃からソードオフに切り替えて、散弾をばら撒きながら、後に下がろうとした。
鬼はソードオフを見た瞬間に、後に瞬間移動で下がって、アタシと同じ様に距離を取った。
「!?」
直後に、異変を視て取った。
今、この鬼の瞬間移動の瞬間、奴の規則性というようなものが見えた。
(まさか………影か!?)
ダダ漏れの鬼の力が、火のように明るく視えていた事が災いした!
火のように明るかったせいで、影まで見えていなかった!
ならばあの時、コンテナに叩きつけられて接近するチャンスだったのに、して来なかった理由も説明出来る。
単純に奴の影が、アタシのいた位置まで伸びきっていなかったからだ!
なら、この位置はマズイ!
埠頭にある街灯等は、先の戦闘の衝撃波で大半が割れて、数本電気が着いている。
そして、今奴の影を伸ばしているのは、背後の月の光!
そう気付いた瞬間だった。
後に下がった直後に、また瞬間移動で鬼の急接近を許してしまった!
「!!」
今のアタシの位置と、奴の影が一直線で繋がっていた。
その線上に、鬼が現れた!
間違いない!
この鬼は、自身の影の先端と、肉体の位置を入れ替えて、瞬間的に移動出来るんだ!!
焦ったアタシは、ソードオフを撃とうとしたが、殴られた背中が突っ張り………
「っ!!」
銃口を向けるのが遅れてしまった。
この時、アタシの背中の骨…右肩甲骨にヒビが入っていた。
そのヒビが、アタシの動きを鈍らせてしまった。
そしてその僅かな時間があれば、鬼の刃は、アタシを完全に捕らえていた!
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〜龍太郎Side〜
人外滅討術の基礎は、まず、己の闇を制御することから始まる。
己の闇とはなにか?
人外滅討術では、闇とは影を指す。
影はもう一人の自分、分身であり、決して消えることのない闇。
闇の化生と渡り合うのならば、影の力なくして命無し。
影と言う闇の力が、人外を葬る力の一端となる。
あの時、基礎鍛錬を受けてた時に、道満のおっさんが言ってた言葉、今ならなんとなくわかる。
溢れて止まらない鬼の力、使えば使うほどに、自分が人間では無いと自覚してしまう。
だが、この鬼の力を使わなければ、佳鈴を守ることが出来ない。
既に俺は、幼馴染みの莉桜を守れなかった。
遺体だけは取り返せたが、彼女を………莉桜の遺体を遺棄する時は……胸が張り裂けそうだった。
もっと早く気付ければ、もっと早く手を伸ばせたのなら………!
自分の家族や友達が死ぬってのは、想像以上に胸に、心にくる。
だから、奪わせない!
目の前の魔女が、何者かなんざ知らん!!
佳鈴を狙うなら、容赦はしない!!!
「人外滅討術」
俺は一閃を放った。
「影現·斬!!」




