第17話 埠頭での戦い2
やっと書けた!
よろしくお願いします∠(`・ω・´)
威嚇射撃をされて少し経ったあと、檻の中でうずくまっていた私の耳に金属と銃声が聞こえ、ハッとした私は倉庫入口の方へと顔を向けた。
龍太郎が来て、あの赤い髪の女性と戦っているんだ!
私は一瞬笑顔になり、音のした方へと振り向いたが、直後流れ弾が私が入っている檻に命中して、私は悲鳴をあげながらヤバいと判断して檻の隅っこに移動して身体を小さく丸めた。
そして数秒間が空いたあと、突如凄まじい勢いで倉庫の窓ガラスが飛び散り、コンテナには流れ弾の弾痕が着き、とんでもない衝撃波と音が襲いかかり、私は檻ごと吹っ飛ばされた。
いやいくらなんでも外でどんな事が起こってるの!?
一回転、二回転して頭や身体を打ち付けられ鈍い痛みが私を襲う。
こんなんじゃ命がいくつ有っても足りない!
再度衝撃波が襲ってきて檻が吹っ飛ばされ、壁際に叩きつけられて、私は思いっ切り背中を打ってしまった。
そして次に目を開けたときには、同じ様に衝撃波で吹っ飛ばさたコンテナが私が居る檻に向かって落下してきた!
いくら同じ金属同士でも、質量が違えば檻と言えど簡単に押し潰される。
そう思った直後、『オン!』と聞き覚えのある声が聞こえると、落下してきたコンテナが鈍い音を響かせながら結界に阻まれ、私が入っている檻との接触は避けられた。
「佳鈴ちゃんっ、大丈夫!?」
「朱里さん!?」
結界を展開させた朱里さんが声をかけ、私の無事を確認する。
檻が吹っ飛んで結構打ち身が酷いけど、とりあえずは大丈夫だと告げると、朱里さんは檻に結界を固定して流れ弾と衝撃波を防ぎながら私に治癒術を使った。
おかげで打ち身の痛みは綺麗に引いてくれた。
とはいえ、ここが嵐の中心ではないとはいえ倉庫の中は惨状と言ってもいい状態だった。
今も絶えず流れ弾がと銃声に、金属が打ち合う音が飛び交い、衝撃波が襲っ来てコンテナが見るも無残な事になっていた。
一体どんな状態なのよこれは………。
「龍太郎…かなり本気でやってるわね。あの赤髪、強いわよ」
朱里さんがそんな事を呟いた。
え?なに?龍太郎ってこんな強かったの!?
驚きと同時に、そんな龍太郎相手に戦っているあの赤い髪の女性もとんでもなく強いと認識した。のだが、朱里さんの次の台詞に背筋が凍りついた。
「違う。龍太郎はかなり本気なだけで、まだ全力でやってない。多分、あの赤髪もそうよ」
コレでまだ全力じゃない?
倉庫の外で戦闘を繰り広げているのに、倉庫の中はグチャグチャ。
コレでまだ全力じゃないとか………。
私の戦慄を他所に、朱里さんは陰陽術を使って檻の鉄柱を焼き切り、私はなんとか脱出する。
滅茶苦茶になった倉庫の中はコンテナの破片で切らないように慎重に進み、倉庫の入り口へとなんとかたどり着いた。
そして倉庫の外に出て私の目に飛び込んで来たものに
私は目を見開いた。
互いに頭から血を流し、鉄の様な匂いと硝煙の香りが立ち込める中、赤い髪の女性が、お腹から大量の血を流して片膝を着いている龍太郎の頭に銃口を向けている場面だった…………。
「龍太郎っ!!!」
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時間は少し遡る。
最初の弾丸を斬り、龍太郎がセツに勢い良く突っ込んで斬り上げようとする。
だがセツは、大型拳銃の2丁拳銃であるのに距離を取らず、なんと龍太郎に向かって突っ込み出した。
両者互いに接近戦へと持ち込み、先に仕掛けたのはセツだった。
龍太郎の制空権間近ギリギリのタイミングで、右手で4発、左手で3発、計7発の弾丸を1秒も満たない時間で撃ち、龍太郎の出鼻を挫こうとするが、龍太郎はこの7発全部に反応する。
1発目を刀の切っ先で斬り上げ、2発目を斬り上げた勢いのまま刀の峰を傾けて弾道を逸らせ、3発目は鍔で受け止め、4発目を今度は柄で受けた!
完全に刀を逆袈裟の斬り上げ状態の龍太郎は、今度は左足に力を込めてブレーキをかけ、アスファルトにくい込んだ左足でバックステップ。
そしてそのステップの勢いを使って斜めに回転斬りを繰り出し、残りの3発全てを斬り裂いた。
だが刀を振り上げた状態の龍太郎を見逃す訳なく、セツは龍太郎の懐に入り込み、ほぼゼロ距離で大型拳銃の銃口を龍太郎に向けるが、コレに龍太郎は左の拳で大型拳銃を殴って銃口を逸らし、追撃を避ける為に刀を振り下ろす。
最短距離を取るために刀の刃ではなく、柄をセツの頭目掛けて打ち込もうとするが、セツは流れる動きで八極拳の鉄山靠で対応した。
咄嗟に龍太郎はセツの鉄山靠に左腕を入れてる直撃は免れるが、1メートルほど吹っ飛ばされる。
距離が開くと間断なくセツは弾丸を撃ち込む。
その弾丸をまた龍太郎は斬り裂いて、また両者が距離を潰す。
次に仕掛けたのは龍太郎。
両足に力を込めて、さっきよりもっと早くセツに近付き袈裟斬り……の振りをして足刀蹴りをセツの顎を目掛けて放つ。
セツは龍太郎のフェイントに引っかかり、両腕でガードして龍太郎の足刀蹴りに耐える。その衝撃は凄まじく、まるで重機に轢かれたかのようなとんでもない音を響かせ、その威力は衝撃波を生むほどだった。
2人の周辺のアスファルト、その下のコンクリートが割れ砕かれ、停泊していた船は大きく傾き、テトラポッドのいくつかが割れ飛んで海に落ちた。
そしてここから、2人の動きがさらに加速した!
龍太郎の蹴りを押し返したセツは、そのまま膝蹴りを繰り出して龍太郎から距離を作ろうとするが、龍太郎はその膝を腹筋に力を込めて受け止めた。が、セツの蹴りをはまるでテコンドーの足技の様に、鞭のように変幻自在に変化した。
龍太郎は側頭部に衝撃を受ける。
セツの足先がコメカミに直撃したのだ。
一瞬意識が飛びかけるが、すぐにセツへ意識を集中させて刀による連撃を繰り出した。
セツはそれに対して、太極拳の様な動きのガン・カタで龍太郎の連撃を捌き、隙間を縫うようにして大型拳銃を撃つ。
龍太郎は大型拳銃が火を吹く度に柄、峰、左手、肘、膝を使って銃口を逸らしたり、弾丸を弾いたり斬ったり避けたりした。
だが、避けた弾丸はまるで意思を持ったように跳弾し、龍太郎の背後や頭上から雨の様に襲い掛かる。
龍太郎は身体をズラしたりして跳弾の弾道から逸れたりして対応するが、戦いながらでやると全ては避けきれず、少しづつ弾丸を受けてしまう。
セツも龍太郎の連撃をガン・カタで捌くが、龍太郎は刀を振り下ろす際に半歩後に下がったり、横にズレたりして刀の切っ先の見切りを見誤らせたりして、セツも少しづつ刀傷を負っていく。
セツと龍太郎が打ち合うたびに衝撃波が発生して、埠頭は最初の原型ほとんど失っていた。
その最中、龍太郎は違和感を覚えて居た。
セツは類稀なる拳銃使いだ。
銃は撃てば弾丸を消費する。
だがセツは、この戦いの中で一度も大型拳銃の弾倉を入れ替えていない。
しかも彼女の使っている弾は45ACP弾という、大型の弾を使っていて、通常なら装弾数は多くても8発。
湯水の様にバカスカ撃っているとアッという間に撃ち尽くしてしまう。
だがセツは弾倉を入れ替えていない。
(まさかコイツ………)
龍太郎は過去に何度も銃を撃ってくる敵とは戦っていた。
だが時々、自身の魔力や妖力を消費して弾丸を生成して、銃を無限に撃ちまくろうと考える輩も居た。
おそらくこのセツも同じだと龍太郎は考えた。
一見脅威にも思えるかもしれないが、コレには致命的な弱点があった。
それは、魔力や妖力の消費が恐ろしく激しい事だった。
過去に龍太郎が戦った相手は、突撃銃や短機関銃といった連射の効く銃を使ってきたが、連射が効くという時点で弾丸の消費量は圧倒的だ。
ゲームの無敵モードのように、弾数を気にせずに撃ちまくれれば気持ちも良いし優越感にも浸れるだろう。
だが、己の魔力、妖力の管理も出来ない奴等には過ぎた力だった。
いずれもすぐに力を使い切って疲弊したところを簡単に首を斬り落として倒していた。
だがセツは、己の魔力管理を適切に把握して使う事が出来る。
龍太郎は額に汗が流れ、一時的にセツから距離を取った。
セツも龍太郎から距離を取り、大型拳銃を構える。
セツも龍太郎に対しては最初の認識を改めた。
彼は強い。身体能力だけでここまで自分と渡り合える者はそうそういない。
だがそれだけだ。
戦って分かった。
龍太郎の欠点を。
理由はどうか知らないが、彼女の役割は龍太郎の中のモノを、龍太郎自身の手で打ち破る事だと認識した。
(少し本腰を入れるか)
セツの眼が青く光りだした。
先に動いたのはセツ。
彼女はさっきよりも速く大型拳銃の引き金を引き、13発の弾丸を龍太郎に向けて放つ。
龍太郎は追尾跳弾を警戒して13発全てを斬り伏せた。
だが、龍太郎の意識が弾丸からセツに切り替えようとした時、セツは龍太郎の視界から消えていた。
驚いた龍太郎は周囲を見渡すが、セツの姿はどこにも無い。
セツを見失ってさらに警戒心を強めた…その時だった。
背後から右斜め上から銃声が聴こえ、龍太郎の視線が後に向いた直後、首筋を弾丸が掠った。
あと数cmズレていたら首の動脈が撃ち抜かれていた。
額に嫌な汗が流れながらも銃声の聴こえた方向に眼を向けるが、そこには何も無かった………とその時っ!
「!?」
銃声と共に右脇腹を撃ち抜かれていた。
音の聞こえた方向に目を向けるも、そこは海しか無い。
龍太郎はかろうじて原型を留めて崩れているコンテナに隠れて背中を守りながら、次の銃声が聴こえるのを待った。
ドウンッ!!!
音がして、弾丸が龍太郎に向けて撃たれる。
弾丸は跳弾し、龍太郎の真上から降り注ぐ。
だが、龍太郎はコレを見越してコンテナに隠れていた。
背中を隠し、左右は崩れたコンテナが壁になっている。
となれば、必然的に弾道は上か真正面かのどちらかになる。
当然、セツもその考えを読みきっていて、彼女は口元上げながらその誘いに乗った。
そして弾丸は、龍太郎の手によって斬られた。
だがここで龍太郎は予想外な事に気が付いた。
さっき斬った弾丸、形状が違っていた。
大型拳銃から撃たれたものじゃない!
斬られた弾丸の形は、狙撃銃のものだった。
この埠頭に隠していた?
もしかしたら他にも………。
疑問に思ったのも束の間、セツが闇の中から龍太郎の背後に表れ大型拳銃を乱射!
対応に遅れた龍太郎は左肩に2発弾丸を受けてしまったが、身を低くした体勢で残りの弾丸を避け、追尾跳弾を警戒しながらセツ向かって突撃して一刀を繰り出す。
突進による加速と身体能力による突きは、まるで大槍の様な一撃。
セツは大型拳銃で受け流そうとするが、突きが間近に迫った瞬間…
「ッ!!」
受け流すのを止めて回避を選択。
目尻に傷を負い、ギリギリのタイミングで刃先を避けたが、鍔が右頬骨の辺りに直撃し、左側に錐揉み回転してコンテナに突っ込んで下敷きになった!
龍太郎の突きは正面のコンテナを貫き、鍔にまで刺さるとコンテナはまるで大事故に遭ったかのように複数個宙を舞って中身をぶち撒け、埠頭のアスファルトと廃倉庫にと、まるで落石のように降り注ぎ、大きな音を立てて形を変形させていく。
龍太郎はセツが下敷きになったコンテナの方へと振り向くと、セツがコンテナを蹴り飛ばして這い出てきた。
「痛っ、随分やってくれるな、こりゃ追加報酬要求しないとちょっと釣り合わないぞ…」
互いに頭から血を流し、鋭い目付きで睨み合うセツと龍太郎。
そしてまた2人同時に動き出す。
が、セツの動きが変わった。
太極拳でのガン・カタに変わりないのだが、攻撃に転じるときの動きに八極拳とテコンドーに加え、空手、ムエタイ、ジークンドーと、各種の格闘技の動きが組み込まれ、さっきより見切りも読みもやり辛くなった。
「っ!!この…!!」
セツの戦いの技術の引き出しの多さに龍太郎はドンドン劣勢になっていく。
遠近中とほとんど隙のない敵に出会ったことが無い龍太郎は強引に唐竹割り繰り出す。セツは半歩動いて軽く避けて銃口を向けてくるが、龍太郎の唐竹割りの狙いはセツではなかった。
龍太郎が狙ったのは、コンテナの一つがぶち撒けた中身の小麦粉だった。
業務用の大きな段ボールに入った小麦粉は斬り裂かれるのと同時に、地面に刀を叩き付けて発生した衝撃波で大きく舞った。
これで相手の視界は数秒だが封じた!
龍太郎は気配を断ち、素早くセツの背後に回り込んで一刀を振るおう……とした。
「っ!!!」
セツは振り向きもせず、背面撃ちの姿勢で龍太郎に銃口を向けていた。
それだけでは無い。
彼女の右手に握られていたのは大型拳銃ではなく、ソードオフと呼ばれる水平二連銃。
「悪いが視えている」
ソードオフの銃口と龍太郎はほぼゼロ距離。
龍太郎が息を飲んだ瞬間、ソードオフが火を吹き、彼の腹部に大きな風穴を2つ開けた!!
撃たれた衝撃で大きく吹っ飛ばされ、血と内臓と思しき肉片を撒き散らしながら地面に打ち付けられて転がされる。苦悶の表情を浮かべながらも龍太郎は立ち上がろうと片膝を付くが、目の前にはセツが既に龍太郎の頭に大型拳銃の銃口を向けていた。
「チっ……!」
「さすがは鬼の子……と言ったところか?なかなかに頑丈だな」
龍太郎の負ったダメージは大きい。
しかも彼が受けたのは通常の弾ではなかった。
通常ショットガンと言えば散弾銃イメージが強く定着しているだろう。FPSのゲームでも、ショットガンは近接戦において絶大な効果をもたらす反面、中距離になると散弾の威力は落ちる。コレは現実でも同じだ。
補足すると、対人でよく使われている弾はバックショット呼ばれるものだ。
元々は中型の動物、鹿などを狩る為に使われる弾丸で、名前の由来は、鹿はBuck呼ばれ、それを狙うから来ている。
だが龍太郎が受けた弾は、ショットガンを扱う弾の中で最も強力な破壊力と貫通力と飛距離を持つ弾、スラッグ弾と呼ばれるものだった。
木造の壁、木製ドア、自動車のドア、コンクリートブロック、レンガ塀などを貫通でき、狩猟では熊やイノシシなど大型の獲物に使われる。
その中でも龍太郎が受けた弾はリーサル型と呼ばれるものだった。
リーサル型は破壊者とも呼ばれる弾であり、破壊力が特に強い。着弾すると先端が割れ、花が咲くように広がり破片が千切れて対象の内部で飛び散り、酷いダメージを負わせられる。
コレを腹部に2発もくらった龍太郎は内臓がズタズタになっていた。それもセツの魔力によって生み出され、さらに威力を強化させている。
「龍太郎っ!!!」
そこに私達が倉庫から飛び出してきてしまった。
「佳鈴っ!伏せろっ!!」
そしてまたセツが脇見もせず、左手の大型拳銃の銃口を私達に向け発砲した!
龍太郎の闘い方は天然理心流を参考にしています。
セツは一部八極拳と、太極拳の円を画く様なガン・カタで攻防一体に。
避けられれば弾丸が勝手に追尾跳弾となって襲いかかります。
ついでに弾丸にもこだわってます∠(`・ω・´)