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人外討魔伝記  作者: 一ノ瀬カイヒロ
第二章 弾丸の魔女
16/50

第15話 誘拐

まだ扁桃炎治りません(´;ω;`)

そして新たにXのアカウント作りました!


今後は活動報告出来るかもです(.❛ᴗ❛.)

翌日、私達はいつも通りの朝を迎え、今日も変わらぬ日常が過ぎ去るはずだった。


今日は龍太郎から、放課後にお父さんの着替えや差し入れを持っていってほしいと頼まれた。


お父さんは警察官で、今は莉桜ちゃんの事件を追っている…。


正直、あの時のことを素直に話せたらどれだけ良いかと悩みはしたが、どう考えても現実的じゃないから今も黙っている。


警察署まで歩く足取りが少し重い。

今も必死になって莉桜ちゃんの捜査を頑張っているお父さんを、なんか裏切っている様な感じがしてる…。


そして警察署に辿り着くと、私は受付でお父さんの着替えを持ってきた事を言い、お父さんが来るのを待っていた。


少し待つと、少しくたびれた感じの雰囲気を出しながらも、笑顔を向けたお父さんがやって来た。


着替えと龍太郎の差し入れ料理の入った荷物を渡し、お父さんの着替えが入った紙袋を受け取り、お父さんは微笑みながら私の頭を撫でた。


そしてこの事件が思うように進展していないであろう、お父さんは私の気持ちを考えてつい謝ってしまっていた。


「すまんな佳鈴、ありがとな」

「なに言ってんのよ、いつも全力で頑張ってるんだから、こっちこそありがとうだよ」

「…………すまんな」


分かっている。

この事件は解決しない。

その結果を分かってしまっているからこそ、お父さんの言葉が私に重くのしかかった。

家族同様に育って来た莉桜(りお)ちゃんの仇を討つ気概で全力で取り組んでいるのに、それが実らない事実に、私は笑顔をお父さんに向けながら心では謝っていた。


「龍太郎が、関係者の人全員で食べてって言ってたよ。ニンニクの芽と鶏レバーの炒め物だって」

「スタミナ付きそうだな。ありがとな」


頑張って笑顔を向けながら、私は警察署を後にした。




警察署から少し距離が出来た辺りで、私は少しうつむいてしまい、警察署の方を見ながら「ごめんなさい」と呟いた。


そして次の目的地に向かって歩きだす。


そこは警察署から電車で二駅程の距離にあった。


莉桜りおちゃんの事があったから、およそひと月ぶりに行くことになり、私はこれから会いに行く人に少し申し訳ない気持ちだった。


たどり着いた場所の名前は『りんどう』。

私のおじいちゃんがいる老人ホームだ。


受付で記帳し、入館証をもらって首にかけてエレベーターに乗り、おじいちゃんの部屋をノックする。


「おじいちゃん」


中では介護士さんがおじいちゃんをベッドに移している最中で、私に気付いたおじいちゃんが喜び、86歳の身体に鞭打って起き上がろうとするが、私はそれを止めた。


「来るの遅くなってごめんね?」

「ハッハッハ、来てくれるだけでも嬉しいもんだよ」


屈託のない笑顔を見せるおじいちゃん。

お父さんが晩婚ばんこんだったから孫の顔を見るのを諦めていた時に私が産まれ、龍太郎と一緒におじいちゃんに泣いて喜ばれ、私達を抱いて喜んでる写真はベッドの近くに置いてある。


そしてその隣にはもう2つの写真が立てられていた。


一つは幼稚園の頃に莉桜ちゃんとおばさんも含めた家族写真。


おじいちゃんはその写真を手に取ると、少しあわれんだ表情でのその写真を眺めた。


「龍太郎から聞いているよ。辛かったなぁ」

「うん………でも、もう大丈夫だから安心してねおじいちゃん」


おじいちゃんに安心してもらうためにニコニコと笑顔を見せるが、おじいちゃんは私の頭をポンポンも撫でた。


「無理して笑わなくてもええんじゃよ。お前さんの気持ちは良く分かるからなぁ」


おじいちゃんは、今では数少ない戦争経験者だ。


6歳で終戦を迎えてからは周りの人に支えながら頑張ってきた。


もう一つの写真立てには、モノクロでおじいちゃんが子供の頃の家族写真が立て掛けてある。

兵士として亡くなった父親。

空襲で亡くなった母。

そして終戦直後に行方不明になった姉。


おじいちゃんの人生は波乱万丈と言っても過言ではなかった。


だからこそ誰よりも人の気持ちを分かってしまう。

特に孫娘である私の気持ちには敏感に感じ取ってしまう。

私はそれでも笑顔を見せ続けて、おじいちゃんと言葉を交わした。


幼稚園時代に拾ったサビ猫、グラピーが今家に居ること、学校の事、龍太郎が作った料理の事、色々話した。


おじいちゃんも、ホーム内でやったレクリエーションの話や、花壇に植えた花を押し花にして本のしおりにしたとかを話した。


楽しかった様子で、おじいちゃんは少しウトウトと寝始めた。


「ありがとうな佳鈴。来てくれて嬉しかったよ」

「うん、今度は早めに来るからね」


私はおじいちゃんの掛け布団を掛け直すと、おじいちゃんはゆっくりと目を閉じて寝息を立て始めた。


「ありがとね、おじいちゃん」


おじいちゃんは苦労人だ。

両親を戦争で失い、唯一の肉親である姉は行方不明。

おじいちゃんはずっと姉を探し続けてきた。


もしかしたら自分の姉も……と思い、有名な被害者の会に資金提供をしたりして必死になって探し続けてきた。

だが、ついぞ姉との再開は叶わなかった。


だからこそ、おじいちゃんは家族のみならず、人との繋がりを大切にしている。

莉桜りおちゃんもおじいちゃんにとっては私と同じくらいに大切な孫娘として接していた。


おじいちゃんの寝姿を少し見守りながら、私は自分の心の整理をし直しりんどうを後にした。



りんどうを出てからスマホを開くと、Rain(レイン)に龍太郎からメッセージが入っていた。


食材を買い忘れたから、帰りに買ってきてほしいと書いてあり、私は帰り際にスーパーに立ち寄った。


グラピーのウェットの材料に鶏もも肉と、しょう油と大根とリンゴを買って帰る。

グラピーのご飯に鶏もも肉はまだ分かるけど、大根にリンゴとしょう油でなに作るんだろ?と思いながら、私は帰路についたが、歩道橋で小学生がふざけあいながら反対側から走ってきて私にぶつかり、小学生達は謝りもせずに走って逃げて行った。


尻もちをついて買った食材、リンゴをばら撒いてしまった。


「もぅ、最悪」


最近の子供ってごめんなさいが言えないのかな?


立ち上がってスカートを整えて、散らばったリンゴを拾い始めると、近くにいた女性がリンゴを拾うのを手伝ってくれた。


「あ、ありがとうございます」


手伝ってくれた女性にお礼を言い、その人の顔を見るとちょっと驚いた。

まず髪がすごく赤かった。

そして目も青色で、一瞬外人さんかな?っと思ってしまうほどに綺麗な人だった。

服装も身体のラインが分かるようなボーイッシュな格好で、とくに腰のクビレがすごく綺麗だった。


モデルさんかな?と思いつつ、もう一度お礼言って帰ろうとした時だった。


「アンタが、栗原佳鈴くりはら かりんだな?」

「え…?」


私の意識はそこで途切れた………。


スーパーで買った食材だけ歩道橋に残され、私は街から姿を消した…………。



===================================


同時刻。


家に帰ってき龍太郎はグラピーのお出迎えに柔らかい笑顔で頭を撫でて、手を洗って料理の下ごしらえを終わらせ、煮込みハンバーグを作っていた。

途中、朱里さんが戻ってきてグラピーの背中に寝そべり、龍太郎に「手洗ってこい」と怒られてしぶしぶ洗いに行き、龍太郎は調理を再開する。

グラピーのご飯も作り終えて、あとは佳鈴の帰りを待っていると、龍太郎のスマホが鳴りだした。


相手は佳鈴からだった。


「おぅ、どうした?」

栗原龍太郎くりはら りょうたろうダナ?』


ボイスチェンジャーで変えた声が出てきて龍太郎は少し驚いたが、すぐに『誰だ?』と応えると、声の主は佳鈴を誘拐したと言った。


『返シテ欲シテホシクバ、今カラ〇〇埠頭ノ第三倉庫ニコイ』

「佳鈴は無事なのか?」

『一応、目的ハオマエナンデナ。彼女ニハ何モシテイナイカラ安心シロ』

「…………分かった。行ってやる」

『待ッテイルゾ』


通話が切れると、龍太郎はものすごい形相で怒りを抑えた。

龍太郎のただならぬ雰囲気を感じだった朱里さんは龍太郎に声をかけた。


「……何かあった?」

「佳鈴がさらわれた」

「!?」

「目的は俺らしい。行くぞ」


先にグラピーにご飯をあげて、戸締まりを確認してから龍太郎はマンションから飛び出し、住宅街の屋根から屋根へ、ビルからビルへと跳んで走り、目的地の埠頭へと向かって行った。



さて、次の戦いの開幕です!

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