第13話 気丈
久しぶりの学校は、同級生達にこぞって心配かけてしまったせいかメッチャ驚かれた。
最初はてんやわんやだったけど、授業が始まるといつも通りの授業風景。
そして数学の先生による小テスト地獄…………。(汗)
幸いにも莉桜ちゃんと勉強したところが出たから、それほど苦戦……………はしなかった。(と思うことにしよう)
で、やっとお昼ごはんの時間。
久しぶりにクラスメイトとお喋りしながら食べるごはんは楽しかった。
あ、うちの学校は屋上を解放していないので教室内で食べました。
そんな気丈に振る舞う私を、龍太郎は後ろで少し離れたところから見ながらお弁当を食べていた。
「龍〜太郎〜!お昼だぜ〜!!」
ガッ!!
メリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリ!!
「いだだだだだだだだだ!!!」
お昼ご飯をせびりにきた純也くんを龍太郎は箸の柄で両コメカミをピンポイントでねじり込んだ……………。
「飛び付くな。犬かお前は」
「へへっ、分かってるクセによ〜♪」
懲りてない純也くんの反応にため息を付いた龍太郎だったが、諦めて鞄から純也くんのお弁当を差し出した。
「ほら」
「ありがとう〜!心のとも………」
メリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリ!!!!
「あただだだだだだだ!!ちょっ……長い〜〜〜〜!!」
「ちょっと来い」
純也くんにアイアンクローをしたまま、龍太郎は彼を連れて教室から出る。
その間しっかりダメージはあったけど、純也くんはお弁当だけは忘れずに持って行った………。
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中庭。
龍太郎と純也くんはベンチで昼食を食べながら、ある程度私の状態を話していた。
「そっか…………佳鈴ちゃんやっぱりまだ………」
「あぁ、だからもう少しのあいだ………」
「バイト代わってくれか? イイぜ」
「すまんな……」
「イイってイイって! 身内がそんな状態じゃコンディション調えられねぇじゃん?だからもっと俺のこと頼ってくれてもイイんだぜ〜!」
「こんな状況でなきゃ頼まねぇよ」
「相変わらず素直じゃないねぇ〜」
食べ終わったお弁当箱を龍太郎に返して、近くにある自販機で飲み物を買い、飲みながら教室に向かう二人。
「落ち着いたらでイイからさ、またウチのチビどもに顔出してやってくんねぇか?」
「………まぁ、気分転換になるかもな。佳鈴の状況を見て誘ってみる」
「サンキュー!」
純也くんは孤児だ。
彼は産まれてすぐに、孤児院の前にへその緒が付いた状態で捨てられていた。
病院やレディースクリニック等での出産記録も無いことから、どこかでひっそりと産み落としてすぐに…という経緯を持つ。
以前に私達はその孤児院に招かれて、龍太郎が料理を振る舞って子供達が『おいしい!』と好評だった。
普段は子供達と職員さん達が当番制で作っている。
しかもその孤児院はこども食堂もやっている。
国からの補助金は年々減額されていて、さらには物価高に消費税増税で金銭的に厳しい状態が続いているから、純也くんは龍太郎の紹介でバイトをしていると聞いている。
どんなバイトなのかは知らないけど。
そして二人は教室に入り、午後の授業を受けた。
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同時刻。
セツが青い目を光らせながらターゲットとなる二人の高校生を観察していた。
ただし、彼女は相手に気配を察知されない為にかなり遠く………およそ2km先の建物の屋上から見ていた。
「栗原 龍太郎………見た目は普通の高校生だが、裏では妖魔を狩る鬼………」
手元には、どこからか撮られた刀を振るって妖魔を斬る龍太郎の写真が数枚握られている。
彼女はすぐには動かず、必ず相手を観察する事を仕事にしていた。依頼主が逆恨み等で無実の者を手に掛けないようにする為だ。もしその場合、依頼主は始末しているのだが、今回は戦うことだけの依頼。
彼女はどこまでの力を出しても良いのか?
そして場所はどうするか?
そして、龍太郎をどのようにして誘き出すかを思案していた。
「………………やはり、この子を使うしか無いか…」
考えた末に、彼女は私の方に視線を移しため息をついた。
「やだねぇ、ホントに……」
諦めた彼女は腰にぶら下げた赤い缶からタバコを一本取り出して火を着けて、パチパチ火花を散らして憂鬱な気分を解消しようとした。