第11話 新たな火種
夜、人々が寝静まった静寂の中、アメリカのニューヨークから少し離れたとある廃ビルの中から、何発もの銃声が響き渡っていた。
この廃ビルを住処にしているギャングが血相を変えて銃を撃ちまくっていた。
彼等は地元警察すらも相手にしたくないレベルで凶悪なギャングだ。
そんな奴らが、必死の形相で一人の人物に突撃銃の弾を束になって撃ちまくる。
その人物は、まるで散歩でもするかのように当たる弾だけに反応して避け、亜高速で飛んでくる弾丸を、持っている45口径の大型拳銃、グリズリー・ウィンマグで狙い撃ち落とし、消音器を着けて隠れて狙ってくる敵を脇見もせず正確に頭を撃ち抜く。
しばらく時間が経つと、廃ビルはギャング達の死体が各所に転がっていた………。
仕事を終えた彼女は、割れた窓の縁に腰掛け、腰にぶら下げた赤い缶を手に取り、中から茶色いシミの付いたタバコを一本取り出して火をつけた。
火をつけたそのタバコは、パチパチと音を立てて火花が散り、クローブの独特な香りが廃ビル内に立ち昇った。
タバコの煙と共に、心地よく少し冷たい風が入り込むと、ローテールに縛った赤く長い髪を解いてポケットからスマホを取り出し、どこかに電話をかけた。
「こっちは終わったぞベアード。そっちは片付いたか?」
『あぁ、安心してくれセツ。アンタがそっちで暴れてくれたおかげで、奴らが詐欺で得た金を洗浄する前に回収できた!コレであのアホボンも終わりだ(笑)』
電話越しに上機嫌な男の声が響き、セツと呼ばれた彼女はフッ笑い……
「で? ローンはどのくらい返済出来そうだ?」
『………………』
ベアードと呼ばれた彼は黙った。
「……今回の分で12年くらいは返せると思う」
『お気の毒様w』
パチパチと弾けるタバコを吸いながら、セツは廃ビルを降りて行く。
彼女が通り過ぎると、転がってた死体は床から現れた闇とその手が闇の中に溶けて逝く………。
「で、次の依頼は何かあるのか?」
一仕事終え、セツは次の依頼へと着手しようとしたが………ベアードが少し言い淀む。
「どうした?」
『いやセツ……それがな、今度のは殺しじゃないんだ』
「? どういう依頼だ?」
『それが、とある人物と戦ってくれって……しかもかなり本気でやってほしいっていうもんだ』
前金もかなり振り込まれており、断るに断れない状態にあるらしい。
セツは、少し考えてから答えを出した。
「どこの誰と戦えばいい?」
詳細をスマホのメールに送ってもらい、彼女は内容を確認した。
標的は栗原龍太郎。
彼は鬼の力を持っていて、その実力を見るために戦ってほしい。っという内容だった。
そしてさらに、彼には弱みとなる少女が一人居るとの事。
二人の写真も転送され、セツは鋭い眼差しで写真を見た。
「………この依頼主は何考えてんだか…………しかし、日本か…………………」
彼女も日本人ではあるが、アメリカの裏社会では弾丸の魔女と呼ばれ恐れられている。
「久しぶりに、里帰りでもしてみるか………」
彼女は廃ビルを後にし、青い目で夜空を見上げながら、どこかに淋しげな雰囲気を出して出国した。
彼女の吸っているタバコはガラムスーリヤというヤバいものですw