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【11-01】相応しくない

あけましておめでとうございます。

サイドストーリーの執筆を行っておりましたが、目途がついたので連載再開!

物語も大分終わりの方になってきました。

もう少し続きますが、どうぞお付き合いよろしくお願いします。

『それで私ね、牢の柵をスーーッと通り抜けられたの! びっくりよ!』


「そう……ですね……」



明るく話すエレーヌだが、その内容は重く壮絶。堪え切れずに涙を流すシェリルを、『ごめんね』と言いながらスリスリと頬ずりして宥めてくれようとするキュイの姿のエレーヌ。どんなに苦しい思いだったのだろうかと思うと遣り切れない。


でも苦しんだのは自分ではなくエレーヌだ。だからなんとしても救う手立てを見つけ出したい。


シェリルは涙を拭う。



「エレーヌさん、そのマイロとジャスパーの子孫にあたるのが、神官長のカルロ・マクロードなのね?」


『そのとおりよ』



エレーヌの言葉にシェリルは頷きつつ、気になっていたことを天井に向かって問う。



「ルカ……もしかして、崖から落ちた時に助けてくれたのはあなたなの?」


『そうだな。俺の加護の力が働いた』


「そう……ありがとう。あなた、いい人なのね。……あ、人ではなくて、シテンシ……だったかしら? ところでシテンシって何?」



と目をぱちくりさせていると、ルカニエルがフッと笑うのが聞こえる。



『なるほど、さすがに心地よいな。お前、俺と(つが)い――』



と話の途中でボンッと一角で爆発音が鳴る。エリオンがルカニエルの気配がする方に向かって何か撃ったのだ。



『危ねッ……おい、当たったらどうすんだよ! 今の俺、結構弱ってるんだからやめろよ! 冗談で言っただけだろうが』


「あまりに笑えない冗談だったから、高位な熾天使様なのも忘れて撃ってしまったんだ。悪いな」



そう嫌味を込め、エリオンがルカニエルに向かってフンッと鼻で笑うのが聞こえる。



『誰がそいつを守ってやってると思ってんだよ』


「それは……感謝してる。かなり」


『だろ? まったくよぉ、俺がいてよかったよな。そうでないとその女、2回死んでるぜ』



ブツブツと文句を言うルカニエルの、『結構弱ってる』という言葉がシェリルは気になってならない。



「ねぇルカ、姿を見せてはくれないの?」



シェリルが天井に向かって問うと、エレーヌが代わりに答えてくれた。



『私のせいでルカニエルはどんどん翼が黒くボロボロになってしまって……白いのはあと1つだけなの。だからあまり見られたくないみたいなのよ』



シェリルは目をぱちくり。


……待って? あと1つ? 12もあったのに? 


何となく嫌な予感がして胸がざわつく。たらりとこめかみを汗が伝ったところで、エレーヌが再び話し始めた。



『つまりね、シェリー……あと一度、もしもあなたが心から愛する人以外に触れられて強く拒むような状況になると、ルカニエルの翼は全て黒く染まってしまうの。それで何が起きるかは……わからない』



なっ……なっ……何ですってぇぇ!?


シェリルが息を呑んで言葉を失っていると、エリオンが告げる。



「元が力のある天使だからな……恐らく手を付けられないほどの凶悪な魔物と化す」


「そ、そんな……」



追い打ちをかけられたかのようだ。


……待って待って、それなら責任重大じゃない!? 失敗が許されないわけで、プレッシャーなわけで……でも恋心なんてつい最近知ったばかりの恋愛初心者なわけで!



『言っておくが、俺は弱ってる。ちょっとした接触でもお前が嫌がれば、相手も俺も燃えるかもしれないから気をつけろよ。まぁ何とか気張ってみるけど、せいぜい相手を選ぶことだな』



ハッハッハ、とルカニエルは禍々しい声ながらもかぁるい感じで笑っているが、シェリルには全然笑えない話だ。



「私の結婚って、そんなに命がけなものなのね……。知らなかったわ」



それに自分の結婚がもしかしたら大惨事を引き起こすかもしれないなんて、想像だにしないことだった。


ハハッと笑うも空笑い。


ダメだ、顔が引きつる……。


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