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【10-11】

エレーヌは急にスッと体が軽くなった感覚がして、すぐそばにいるルカニエルに告げる。



『もう大丈夫みたい。支えてくれてありがとう。離して?』


『あぁ』



ルカニエルの翼から解き放たれ、上半身だけ体を起こして座る。心が満たされると、凝り固まっていた体も随分自由になった感覚だ。



『ねぇ、ルカニエルはどうしたら天界に帰れるの?』


(けが)れた翼を元に戻せば帰れる』


『どうすればあなたの翼を元に戻せる?』


『呪いを解くしかないのだろうな』



“触れられるのは真に愛する者のみ”……つまりは母も切に願った、真に愛する者と結ばれることのみということなのだろう。


どうしてもルカニエルの翼を元に戻したい。だが結婚が叶わず呪いを解くことができない自分にはどうすることもできず……恐らくもうすぐ命が尽きるのだろう。でもこんな状態では死んでも死にきれない。


どうすれば……。


するとマイロとジャスパーの声が聞こえてきて、ルカニエルが姿を消す。



「おっかしいな……なぜだかエレーヌはうまくいかないんだよ。石も赤くならない」


「ならばまだ生きてるのか?」


「あぁ、たぶん」


「まったく、どこまでも面倒な女だ」


「でもおかしいよな。実験したやつらはみんな死んだってのに、なんでエレーヌだけ……」



一体何の話をしているのだろう。平気そうな声で不穏なことを口にしている二人が妙に恐ろしい。


すると二人がエレーヌのいる牢の前にやってきた。



「おい、これに魔力を込めろ」



ジャスパーがそう言うと、黒に赤い亀裂のような模様の入った石が再びコロコロとすぐ近くに転がってきた。それにしてもこの石は何の石だろう。


手を伸ばして石を掴むと……掴……掴む……うん? 指の中を石がスカスカと通り抜けて掴めない。あれ!? 


するとジャスパーが手にする木の棒が牢の中に伸び、エレーヌの足をゴツゴツと突く。



「おい、起きろ」


『やめて! そんなに乱暴にしたら痛――……あら、痛くないわ』



エレーヌは首を傾げる。そして心なし、自分の足が4本見えるようだが気のせいだろうか。



「くそっ、起きろって言ってんだろ。ちゃんと償いをしろよ」


『何言ってるの? 私、起きてるわよ?』



イライラした様子のジャスパーを見て、エレーヌはどこか不気味さを感じながら目をぱちくりさせて見つめる。


するとマイロがフフッと笑みをこぼし、悦に入った表情を浮かべた。



「なんだ、やはりもう死んでるじゃないか」


『あ、あの……』


「おっかしいな……。さっきは死に際すぎて力が貯まらなかっただけか? でも緑の石はできて……あれ?」


『あの……聞いて?』


「お前のことだ、どうせ何か勘違いしたんだろう。早とちりであまり周りが見えていないのはお前の悪い癖だ。……まぁいい。何はともあれ、とにかくこれで実験は全て成功ということだ」


「あぁ、そうだな」



ハッハッハッハと笑いながら去っていくマイロとジャスパー。


……ちょっと待って? 私、ここにいるんだけど? 全然二人と目が合わなかったのはなぜ? 


唖然としながら二人が去っていくのを見つめていると、再びルカニエルが現れた。



『あれは魔血石だな。面倒なものを持ち出したものだ』


『……まけっ……せき……とか今はどうでもよくて……ヒィッ!』



上半身を起こして座っているはずの自分をよく見れば、血の気のない自分のもう一つの顔が床に寝転がった状態で見えるではないか。


……えっ、えっ……えーーっ!?


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