【09-11】
前のエピソードでポンコツなミスをしたので修正を加えました。
真面目なストーリー展開なのに、ご覧いただいて違和感や疑問点のあった方がいらっしゃいましたら申し訳ありませんm(_ _;)m
何も気づかなかった方はそのままお進みください笑
「待って……王城を木端微塵? そんな小さな魔血石たった一つで?」
『そうだ』
「なんて恐ろしいの……」
信じ難い話に、シェリルの声は震える。そんなものが世に出回ってしまえば、災いの元になるのは必須だろう。
『お前、前に来た時に首飾りを付けてただろう。あれには魔血石が入っていた。お前の命を奪う算段だったのだろうな』
「嘘……私、そんな恐ろしいものを身につけてたの!?」
封印の際に身を守る役割をするものだと言われて握りしめたペンダントだったのに……。目覚めるとなくなっていたが、思い出せば確かに半球形の丸いモチーフが付いており、サイズはだいたい1インチくらいだった。
ただ、そう聞くと頭の中には疑問が渦巻く。
先ほど、この魔法陣が『魔力だけではなく生命をも奪うためのものだ』と聞いた。つまりは魔血石にも力を込めることができる魔法陣だということなのだろう。
「ねぇ、それならおかしいわ。私はどうして生きてるの?」
『俺がいる神殿で死人は出さない。神殿の外で人間がやることには不干渉が鉄則だけどな』
「そう……なの……?」
『それにお前には、どのみち俺の力が働いてる。石のちっせー穢れなんて痒い程度だ。人間が作ったあの程度の魔法陣ごときに、俺の加護は越えられない』
「……加護?」
『印、付いてるだろう』
「この片翼の印って、あなたが付けたものなの?」
『そうだな。まぁ元はお前のためのものではないが』
「元は……?」
『お前は、エレーヌの呪いと加護を受け継いでいる者だ』
するとエリオンが口を開いた。
「やはりそうか。エレーヌ……エーデルアルヴィアの呪われた姫・エレーヌ」
『そのとおりだ、クローヴィス』
「……ルカ、その名は今はちょっと面倒だ」
『そうか。では、エ――』
「エリオンと呼べ」
そんなやり取りにシェリルは首を傾げる。
「エル、知ってる人なの?」
「人ではないが……まぁな。ルカニエルという名前だからルカと呼んでる」
……人ではない? それに『クローヴィス』って何?
疑問符が頭の中に広がる中、ルカニエルがフンッと笑う。
『まぁお前の事情なんてどうでもいい。お前と争ってる場合ではないからな。それより……エリオン、お前はエレーヌの話を聞きに来たのだろう?』
「あぁ」
『それなら……おい、いい加減黙ってないで自分で話せよ、エレーヌ』
すると『シェリー?』とおずおずと呼ぶ声が……なぜか耳元で聞こえる。
チラリと目を向ければ、そこにいるのは――
「えぇぇぇぇっ!? キュイ!?」
嘘でしょ、肩に乗るキュイから人語が聞こえる!
目を丸くしてキュイを見つめていると、キュイの言葉が続く。
『驚かせてごめんなさい。私の魂だけが残って、今はこの小鳥の体を借りているの』
信じがたい状況だが、シェリルは事態を無理矢理嚥下するかのようにゴクリと唾を飲み込む。
「そ、それなら……えっと、キュイ……じゃなくて、エレーヌ殿下は――」
『殿下なんて付けなくていいわ。今までどおりキュイに話すみたいに普通に話して』
「う、うん……えっと……それならエレーヌさんは、ずっと私のそばにいたということ?」
『ええ。あなたがユリウス殿下の第一王子妃候補として名が挙がった10歳の時から……あなたが私を飼い始めた時から、ずっとそばにいるわ』
全く気づかなかった事実に驚愕。
……待って、どうしよう! 信じられない! 私ったら尊いお姫様をあろうことか鳥かごに囲ってたの!? 今からでもエレーヌ殿下にカーテシーした方がいいかしら? とりあえず肩から降ろして差し上げてから、どこかに着地していただいて……えっ、どこに降ろしたらいい!? ふかふかのクッションが欲しいわ!
ちょっとパニックになってあたふたしていると、エリオンがフッと笑って「落ち着け。大丈夫だ」と宥めてくれる。
この状況で落ち着けるエリオンが信じられない。どれだけ肝が据わってるのだろう。
するとエリオンが訝しげに小鳥姿のエレーヌを見つめた。
「それで、なぜあなたの呪いと加護をシェリー嬢が受け継いでいるんだ?」
『それは――』
シェリルが動揺する中、エレーヌが話し始めた。