表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/192

【09-10】

するとエリオンが迷いつつも説明してくれた。


ルミナリアの鉱山一帯にある鉱石の中には、魔力を込めて使うことができる『魔石』が存在し、それは二種類あるらしい。


一つは魔力石。魔力を蓄えたその石はエメラルドのような緑色に輝く。大きさによって差はあるものの少量の魔力を蓄えることができ、魔力を持たない人々が生活の中で便利に使うことができるものだ。


魔力石はルミナリアで採掘されるものの、魔力を持つ者がほとんどいないルミナリアでは魔力を込められる者もいないため、ただの石同然で無価値だった。だからそのほとんどは魔力を持つ者がいるエーデルアルヴィアに輸出されているらしい。そしてエーデルアルヴィアの魔力を持つ人々による慈善活動を通して魔力石が国内に配られ、魔術がどんどん浸透していったようだ。


魔力を込められてルミナリアへ逆輸入された魔力石は非常に高値が付き、ルミナリアの一部の王族や上級貴族が所望するらしい。



そしてもう一つの魔石が魔血石。魔力石と同じで魔力を込めることができる石だが、市場には出回っていない。


魔力だけでは飽き足らず人の血液を吸い取ると言われる石で、人の命を奪う『悪魔の石』と呼ばれているのだという。


非常に希少な石で、採掘できる場所は地下深く。魔力を込めると黒い石に赤い亀裂のような模様が入って禍々しく光る。



「だが、魔血石は不幸を呼ぶものとしてルミナリアでもエーデルアルヴィアでも恐れられたんだ。だから魔血石が採掘された鉱山は忌み嫌われ、古くに封鎖されたはずだ。それがなぜ……」



その昔、ルミナリアの一部の鉱山の地下深くから新種の石が掘り出され、効力が不明なままエーデルアルヴィアの商人に渡したところ、その石に魔力を込めてみようと試した王族が変死を遂げたのだという。それが魔血石だった。


それにより魔血石は危険視され、それ以降エーデルアルヴィアに持ち込まれることなくルミナリアで封鎖の措置が取られた。


同時にエーデルアルヴィア・ルミナリア両王国で地下採掘の深度が定められ、それを超える採掘が禁止されたのだった。


すると魔物ではない者が口を開く。



『マクロード家の人間がいるだろう。あれは元炭鉱夫だ』



マクロード家。シェリルには覚えがあった。



「カルロ・マクロード……神官長がそうよ」



エリオンにそう告げると、エリオンは首を傾げる。



「だが、魔力を持たない者の多いルミナリアで、仮にマクロード家が掘り出しているとして……そんなものを一体何に使うつもりだ? 何か知ってるのか?」


『お前は、魔血石が魔力のある者から魔力と血をただ単に奪うものだと思っているのだろう?』


「違うのか?」


『違うな。まぁ無理もない。魔血石の使用者は表立っては()()()()()()()()()()()からな』


「どういう意味だ?」



すると魔物ではない者が魔血石のことを話してくれた。


魔力石に魔力を注ぐという行為は、人間から石へ向かう魔力の一方通行なのだという。それは魔力を消費して疲労するというだけで、人間の体に大きな影響はない。


だが魔血石はそれとは違い、相互通行をするらしい。


魔血石は人間が魔力を込めると、その魔力と入れ替わるように体内に入り込んで有害な魔力を放ち、内側から人間を弱らせる。そして双方の均衡を崩して一方的に命ごと力を根こそぎ奪い取っていくのだという。



『人間の体の内側を穢すものだ。全身にその穢れが広がれば命は助からない。干からびたように死ぬからな。まるで血が抜かれたように見えるんだ』


「そうか……」


『そしてその力で満たされた魔血石は、魔力石とは比べ物にならないほどの威力を発揮する。例えるなら……1インチより少し大きいくらいの魔血石一つで、そこの王城くらいなら簡単に木端微塵にできるな』



その言葉に、二人の会話を黙って聞いていたシェリルはブルリと体を震わせる。


総毛立ち、冷や汗を伴って冷えていく体を自らの腕で抱え込んだ。


※『1インチより少し大きいくらい』とは、3センチほどの大きさです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ