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【01-04】

「マジュツ?」


「そう。例えば浮遊術」



マジュツの次はフユージュツ? 


何よそれ……と思いつつ、あぁもしかして、とちょうど思い出したことがある。


ルミナリア王国は鉱山の国として有名で宝石で豊かになった国。だが隣国であるエーデルアルヴィア王国は不思議な力を操ることで有名で、かつて武力で国を大きくして豊かにしていったのだと聞いたことがある。それ以上の詳しいことはわからない。



「マジュツって魔法のこと?」


「うーん……魔法とは似て非なるものですが、まぁいいでしょう。そのようなものです」


「そんなの私は使ったことないわ」


「そうですか……。それならなぜ、崖から落ちたのにシェリー嬢は生きているのでしょうね」


「それは……私にもわからない」



するとエリオンがシェリルの顔を覗き込む。



「君は……本当にシェリーという名前なのか?」



ギクッ。やっぱり愛称だってバレてる?



「そ、そうよ。何かダメ?」


「いや、ダメではなくて――……」



そこから話の続かないエリオンはシェリルをじっと見つめたまま顎に手を当てて考え込む。そして相変わらずじっと……じーっと見つめている。



(何なのかしら、この人……怖いわ)



シェリルがビクビクしていると、アランの話が続いた。



「誘拐や窃盗・密輸目的でルミナリアとの国境を無断で超えようとする者がいて、崖を降りようとしたり一か八か飛び降りたりして面倒なことをするんです。ですからここは一応その砦になっております。ルミナリアの方たちはご存知ないのでしょうけれど、崖の下には落ちても衝撃吸収される魔術を張り巡らせているのですよ」


「へーえー、ルミナリアのために?」


「いいえ、そういうことではありません。なんと言いますか……ぐちゃっと死なれると、片づけるこっちが大迷惑なんですよ。まったく……死ぬなら自分の国内にしてくれと言いたい」



ぐちゃっと。可能な範囲で想像すると、モザイク案件にブルッと体が震えた。精神年齢14歳のシェリルには刺激が強すぎるのだ。


ただ、そこで疑問が湧く。それなら自分が生きていても何ら不思議ではないと言えるのではないか。


するとその疑問を察したかのようにアランの話が続く。



「それでも落ちた場所と打ち所が悪ければ死にます」


「それなら私は落ちた場所も打ち所もよかったから生きてたってこと?」


「いいえ。あなたが落ちていた場所はいわば非常に不運な場所。ちょうど1本高い木があって、衝撃吸収はその木より低い場所に張ってあります。あなたはというと……驚いたことに木の根本に落ちていました。しかも無傷で」



シェリルは自分の手足を見つめながら首を傾げた。


崖から落ちた時は気を失っていたから、自分が木に当たったかどうかなんて覚えていない。ただ、相当高い崖の上から落ちて木に当たれば結構な怪我どころか命を落とすはずだ。少なくとも崖から落ちる前も多少の怪我はしていたのに、それが今、無傷だなんて……。



「私、どうして生きてるのかな」


「それはこっちが伺いたいことですよ……」



すると黙っていたエリオンが不意に口を開いた。



「ところで先ほどから気になってるのだが……君の胸元にある黒い片翼の印は呪いだろう?」


「……はい!? のっ、呪い!?」



シェリルは眼球が飛び出そうなほど目を真ん丸に見開く。



(呪いって何!? 聖女の印って聞いてたんだけど……。しかも私って聖女なのに呪われてるの!? 全然神聖じゃないわ……)



今日は一体何なのだろう。意味のわからないことばかりが続いて頭が酷く混乱する日だ。



「君は……もしかして知らずにそんなものを付けてるのか?」



自分に付いてるものを『そんなもの』と言われることに非常に抵抗を感じるが、知らないものは知らない。


シェリルが顔を引きつらせながら首を横に何度も振ると、エリオンが疑問を滲ませた顔でじっと見つめて告げる。



「その印は、遥か昔この国にいた呪われた姫・エレーヌの胸にあったと伝えられている印とそっくりだ」



……エレーヌ? あれ? その名をどこかで聞いた気がする。どこで聞いたんだったっけ……。


考え込んでいると、エリオンの話が続いた。



エレーヌ姫は隣国の王子と婚姻を結んだものの、婚儀の夜にその王子が忽然と姿を消す。その後見つかることがないまま1年後に離縁。


そして次にエレーヌ姫が婚約した相手も、婚儀を行う前に姿を消す。


疑惑の目はエレーヌ姫に向けられ、呪われた姫と呼ばれるようになった。


そして幽閉されたエレーヌ自身もじきに消息が分からなくなり、その後の足取りはつかめていないらしい。



「一説によると、危険視されて幽閉されたエレーヌは、密かに彼女を慕う者たちの手で国外に逃がされたのではないかと言われている。そのエレーヌと同じ印が君にあるというのは……どういうことなのだろうな」


「そ……そんなの……私にはわからない……」



すると訝しげな様子のアランが首を傾げた。



「その印といい、崖から落ちて生きてることといい、年齢のことといい……シェリー嬢はどこか不思議ですよね。まだまだ何か隠しているのではありませんか? 正直にお話しください」


「……」


「お話しいただけないなら、話したくなる自白術でもかけましょうか? 私、得意ですよ?」



ニヤリと笑うアランの横顔が怖い。


魔術ってなんて卑怯なんだ。変な術を掛けられて、関係ないことまであれやこれや話してしまったら羞恥で死ねる。そんなの御免だ。



「わかったわ。話す」


数多くの素晴らしい作品がある中、この作品に出会っていただき大変光栄です。

長編作品となります。

引き続きご覧いただけると嬉しいです。

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