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【11-06】

手動投稿をしている関係で、投稿時間がブレて申し訳ないですm(_ _;)m


では本日分をどうぞ↓

「シェリー、君だってわかってるだろう? 好きになっても無駄だ。レドモンド伯爵が許すはずがない。でも僕は……僕だけは許される」



現国王であるユリウスの父、そして宰相であるレドモンド伯爵家当主のシェリルの父。二人の絆は固いとされ、シェリルが聖女に選ばれる前は、二人ともユリウスとシェリルの結婚を誰よりも望んでいたのだ。



「ねぇシェリー、よく考えて? 彼は違うよ。君には相応しくない」



聞きたくない。やめて……。


そう思うのにユリウスの残酷な言葉が続く。



「彼では君と釣り合わないんだ。わかってるだろう? 君には僕以上に相応しい相手はいないんだよ。そして僕にとってもシェリーしかいない」


「――ッ……」


「僕はどんな君でも愛すよ。だからお願いだ。一晩考えてみて? それで明日の早朝に返事を聞かせて? 会いに行くから」


「でも……」


「君に振られたら王子として立場がないから、僕一人で会いに行くよ。だからどうか、シェリーも誰にも言わずに一人でこっそり出てきてほしい」



ねぇ、お願い……と、ウルウルした目で見つめられれば断れず、渋々「わかったわ」と返事をして滞在している宿の場所を教え、ユリウスの元を離れた。





「何だ、どうかしたのか?」



ショックと疲れが混ざった気持ちが顔に出ていたらしく、エリオンに悟られた。



「う、ううん、何でもないわ」



そう答えたものの、ユリウスの言葉がズキズキと痛い。



『彼は違うよ。君には相応しくない』



途中で耳を塞いでしまいたかった。そんなことはわかってる。それでも『違う』『相応しくない』と言われて平気でいられるほど、エリオンへの気持ちが些細ではないことを思い知る。


こんな大きな気持ちが、胸の奥にそっと仕舞っておけばいずれ消える? 消せやしないのではないか。


ほぼ確信めいた予感が苦しくて、俯いてグッと手を握り締めていると、「そんなに握るな。痛めるぞ」とエリオンが手をそっと開かせてくれた。


心配そうに眉根を寄せて見つめる目も、躊躇なく触れる手も優しくて、今にも枯れそうな心にそっと雨を降らせてくれるかのようだ。


胸にジンと沁みて視界が滲んだ。



「ねぇエルは……私が怖くないの?」


「ん? 怖いって何が?」


「あんな話を聞いた後なのに……私、呪われてるのに……手に触れてる」


「そんなの今さらだろう。ルカのためにも、燃やす前に嫌なら嫌ってはっきり言えよ?」



そう言ってエリオンは優しく微笑んで頭をガシガシと撫でてくれる。


……あーあ、この人はどこまで私の気持ちを大きくすれば気が済むのだろう。呪いの話を聞いた上でも躊躇なく触れるらしい。



「うん……ありがとう」



溢れ出しそうな涙を、唇を噛み締めてグッと堪える。


こんなの好きにならないわけがない。大きくなってはいけない気持ちがどんどん膨らんで、ダメだとわかっていても、なお心の中を温かさが満たしていく。


恋心を抱くことがごく自然の流れであるかのようで、ありのままの姿であると主張するかのようで、あるべき姿を保とうとしているかのようで……まるで運命であるかのようだ。


そうだとしたらなんて皮肉な運命なのだろう。


こんなにも思いを募らせたところで叶うことはないのに……。


潤んだ目も震える唇もエリオンには見られたくなくて、顔を背けて遠くを見つめた。


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