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【11-05】

ユリウス、長らくお待たせ~。

12月13日から待たせっぱなし笑

扉が開いて神殿を出ると、ユリウスがすぐそばで待っていた。



「シェリー!? 大丈夫だった!? ぼぼ僕、びびびびっくりして……」



そう言ってユリウスはシェリルの手をギュッと握る。


大丈夫か聞きたいのはこっちだ、と思うほど、ユリウスは心細そうな顔で目を潤ませていた。



「うん、一人にしてごめんなさい。私は大丈夫だから手を放して?」


「……シェリー、忘れ物は見つけられた?」



そうだ、ユリウスには忘れ物を取りに来た、と話したのだった。


ただ、こうして手を握るユリウスに何も話さないわけにはいかない。


シェリルは自分にかけられている呪いについて、ユリウスにも大まかに伝えることにした。






「えっ、シェリーにそんな呪いが!?」



そう言って慄くと、ユリウスは握っていた手をパッと放す。当然の反応と言えよう。



「うん。だから私はそれを解かなくちゃいけないのよ」


「そうなんだ……」



するとユリウスが、布で顔を隠したエリオンに告げる。



「ねぇ君、少しシェリーと二人で話す時間が欲しい。構わないね?」



エリオンが返事をせずに黙っていると、今度はユリウスの顔がシェリルに向く。



「シェリー、お願い」



今にも泣きそうなウルウルの目でユリウスに言われれば断れない。



「わかったわ。……エル、少しだけ待ってて」



シェリルはエリオンから少し離れた場所で、ユリウスと二人だけで話すことにした。






「それで……話って何?」



足を止めてユリウスと向かい合うと、ユリウスは優しげに微笑む。



「夜に会ってた時にも言っただろう? 僕はシェリーがいいって。君のことが好きなんだ。婚礼の儀は君と行いたい。ダメ?」



そう言って小首を傾げるユリウスはなんてキュートなのだろう。そのかわいらしさについつい絆され……ない。ダメよ。幼い息子の言うことを聞いてあげる母親でもあるまいし。


そもそも「君と行いたい」と言われて、じゃあそうしましょうと言えるわけがない。


呪いを受けている身である上、なにせ婚礼の儀が行われるのは明日だ。ダメかと聞かれれば、正直言ってダメだ。ダメに決まってる……が、自国の王子にきっぱり『ダメ』と言うのは躊躇われる。



「急にそんなこと……難しいと思うわ。だってユリウスにはカミラ様がいるでしょう?」



するとユリウスがフフッと悪戯に笑う。



「実はね、婚礼の儀の招待状には、僕の婚礼の儀を行うとしか書いてないんだ。僕が頼んで相手の名前はあえて記さなかった。だから当日のサプライズだってありなんだよ」



あら、それは面白い趣向ね……なんて思うわけがない。


ユリウスのトンデモ発言に頭痛がしてきた。サプライズがあり? いやいや、王族の婚礼にサプライズなんていう催しはどう考えてもなしだ。ユリウスの現婚約者がカミラだと国中に知れ渡ってる以上、どう考えてもおかしいではないか。王国民の不信感を招きかねない。



「ユリウス……王子の結婚相手を当日のサプライズで変更するなんて聞いたことがないわよ」


「そう? 前例なんて気にしなくていいよ」



おぉ、ユリウスにしては、いつになく革新的で強気ではないか。どうしたことだろう。



「と、とにかく、そんな急に言われても……。私、もう行くわね?」



するとユリウスに「待ってよ」と呼び止められる。



「シェリー、僕を見捨てないで」



心細そうに泣きそうな顔をされれば、冷たくなんてできない。恋心はなくとも情はあるのだ。



「見捨てるなんて、そういうわけではないわ」


「だって、君も思うだろう? 君の代わりに妃候補となったカミラは何か怪しいって。そんな人と僕を結婚させるつもり?」


「そ、それは……」


「お願いだ、僕を助けてシェリー。恐ろしいことに巻き込まれるのはすごく怖いよ」


「……と、とりあえず、彼に相談してみるわね」



そう言ってエリオンを示すと、ユリウスのかわいらしい顔が少しだけ曇った。



「ずいぶんあの人のことを信頼してるんだね」


「あっ、うん。まぁ、命の恩人だし……」


「シェリーは、あの人のことが好きなの?」


「えっ!?」



直球で問われて、ブワッと顔に熱を持つのを感じる。嘘を付くのが苦手な自分が恨めしい。もちろん答えずともユリウスにはわかった様子だ。



「ふぅん。彼は護衛の人だって言ってたよね? 顔があまり見えないからどんな人かよくわからないけど……彼は上級貴族なの?」



念のため、ユリウスにもエーデルアルヴィアの人だということは隠しておいた方がいいだろう。



「そ、そういうわけでは……」


「ふぅん、傭兵か、よくて騎士ってところか。それなら……許されるわけがないよ」



そんなことは自分でも重々承知している。


それでもはっきりと言葉にされると、まるでとどめを刺されるかのように胸が酷く痛んだ。


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