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【11-02】

それにしても……とシェリルには少々の疑問が湧く。



「ねぇ、エレーヌさんの時で黒くなった翼は3つだったはずよね? それでたぶん私のことを守って1つ黒くなって……残りはあと1つ? ほかの7つはどうしたの?」


『それは――』



エレーヌが続きを話し始めた。




マイロとジャスパーの様子を探った結果、二人はエーデルアルヴィアをたびたび訪れ、魔術についての知識を深めていることを知る。


そしてエレーヌが暮らしていた小屋の床には魔法陣が描かれ、そこにはエーデルアルヴィアの闇市で行われている人身売買で得た、僅かながらも魔力を持つ身寄りのない子供や奴隷が連れて行かれた。「祈りを捧げなさい」と言われるままに呪文を唱えた人々が魔血石の餌食となっていたのだ。


あまりに惨たらしい状況に放ってはおけず、エレーヌが密かにキュイのくちばしを使って魔法陣の一部を消して防いだのだが、気づかれて元通り書き直されるだけ。原本と思われるエレーヌの描いた魔法陣の蝋板も見つけ出して消したが、いくつも写しがあるらしく、何の意味もなかった。



『マイロとジャスパーは微量の魔力を持つ人をお金で買って魔力石を多数作らせ、それ以上の資金を得る。いずれ魔血石の餌食にして葬る。彼らはそうやってどんどん財力を付けていったのよ』



やがてマクロードと名乗るようになったマイロらは、この神殿の持ち主から聖職者の権利を奪い、自らが聖職者の地位につく。


そして知り得た魔術と魔石の力を使って、人知を超えた現象を起こしては「魔物の仕業だ」と触れ回ってその土地の人々の恐怖を煽り、また密かに魔術を使用してその恐怖の現象を抑える。


自作自演ともいえるこの方法でも、魔術にあまりなじみのないルミナリアの人々がマクロード家を頼るようになるのは必須といえた。


そして魔石の力を得たマクロード家は魔術を使って次々と土地を侵略し、自らの領地を広げていったのだった。



『それからしばらくしてさらに力を付けたマクロード家は、とある話を流し始めたの。それが聖女伝説よ。その時に便利に利用されたのが私の境遇だったの』



大分風化して詳細までは語られなくなり、とにかく神殿が恐ろしいものとしてばかり伝えられている今。エレーヌが当初の聖女伝説を教えてくれた。


――――


聖女伝説――遥か遠い昔、この国を脅かす巨大な竜の魔物が現れ、一人の若い娘が自分の命と引き換えに聖なる力で封印した。その若い娘が亡き後も同じ聖なる力を受け継ぐ者が必ずこの国に現れ、やがて聖女と呼ばれるようになった。聖女は胸に片翼の印を宿し、聖なる力を操って魔物が暴れ出すと封印の儀でそれを鎮める。ただ、最初の聖女が封印の際に竜から呪いを受けていたため、その呪いも新たな聖女に受け継がれる。その呪いは人々を焼き尽くすほどの邪悪な炎の力。聖女の怒りはこの国の破滅に繋がるとされ、聖女は大切に崇め奉らなければならない。


――――


こうして、魔術・片翼の印・人を焼き尽くすほどの炎……それらのエレーヌの境遇を利用して、マクロード家は聖女伝説を作り上げたのだった。


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