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【プロローグ】

フワフワのフリルで飾られたお姫様みたいなドレスを着て、でも振る舞いはまだまだお転婆だった4歳の幼き日。


大きな木を見つけて駆け寄れば、その下にいたのは辺りに咲き誇る可憐で美しい花々に負けないくらい、凛と輝く金色の髪の王子様。



「将来は僕のお姫様になってくれる?」


「うん、いいよ」


「じゃあ約束だ」



そう言って王子様は淡いピンクの花を、そっと左手に結んでくれる。


その時キラキラと花びらが光って見え、まるで赤い糸が結ばれたような、心が繋がったような感覚がした。



「うん、約束」



だからシェリルはどうしても幼い頃に交わしたその約束を守りたかった。


信念を貫き通したかった。


ただひたすらに、真っ直ぐに。


その約束が心に灯る(ひかり)のようだったから。


進むべき道しるべのようだったから。


そして王子様との結婚はあと2年で叶うはずだった。


それなのに――



「ア……ッ!」



虚しい叫び声をあげてすぐ、体は背後に(かし)ぎ、伸ばした手は誰にも取られることなく(くう)を切る。


視界には雨で濁った闇色の空が映った。


頬や瞼にヒタヒタと当たる冷たい雨は重く圧し掛かるかのように体に降り注ぎ、背中が闇に引き寄せられていく。


前も闇、後ろも闇、どちらに行っても闇。


自分の何がいけなかったのだろう。何を間違えたのだろう。


答えなんて見つからないまま、涙の伝う頬には自嘲の笑みが浮かぶ。



(手を伸ばしたってどうせ誰も……)



真っ黒な闇が心をも蝕み、13年と374日の記憶が走馬灯のように流れていった。




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