騒がしい新年(襲撃後の朝)
結果、私が襲撃されたことはまるで起こらなかったかのようになった。でも、こうすることがみんなの利益にかなうんだろう。アルナイ侯爵や他のオーソドックス貴族たちは処分を免れたし、皇帝陛下も思う通りに内閣を再編やリノス王国を含む北方の征服地を直轄領とすることができた。帝国もまた動乱を避けられた。私が驚かされたくらいで、他には本当に誰も損をしていないようだ。めでたしめでたし。命を新年後で失う予定の襲撃者は別かもしれないが、彼は私を襲う時点で覚悟を決めていたはずだ。
家に帰ると母親はただ私の頭を撫で、叱ることはなかった。ラドはまだ後悔しているようだったが、父親は「親衛隊の警備は十分行われていた」と慰めてくれた。任務中は全員が鎧を着用していたし、ラドも衛兵も迅速に反応してくれた。騎士として死の危険に直面するのは常であり、生き残った理由を検討する方が重要だ。
しかし、足手まといになったのは親衛隊の責任者のこの私だと感じだ。もっと迅速に反応できたり、力があればよかったのに。いや、あの時確かに私は油断していた。皇帝陛下や皇室に危害が及ぶ危険にだけ注意を払っていて、自分や親衛隊に対する危険には警戒を怠っていた。実に痛い失敗だ。私はその夜、母上への祈りの中で自分を厳しく責めた。
翌日は今年の議会の初日で、私も早朝に会場へ行き警備を確認した。議会は全国の貴族たちと皇帝陛下が重要な問題を話し合う場であり、陛下と契約を交わした領地貴族は全員が参加する。参加できない場合でも代表を派遣する。出席者の数は昨夜の宴会よりもはるかに多く、警備もとても厳重だった。親衛隊は全員出動し、近衛軍団の警備部隊も貴族街の警戒を強化していた。
午前の会議は午前の钟の鐘と共に正式に開始され、貴族たちが次々と入場した。会場は昨夜の宴会場であったが、配置が再び行われていた。皇帝陛下と秘書たちの机は昨夜の位置にあり、他の長机は壁際に配置されていた。議会の席は固定されておらず、爵位で分かれているのみである。皇帝陛下に近い席ほど爵位が高く、貴族たちは自然と知り合い同士で座った。私でも新貴族とオーソドックス貴族が分かれて座っているのが分かった。新貴族の服装はどちらかといえば質素で、オーソドックス貴族の服装はとても華やかであり、日常では見かけないような飾りが多用されていた。
人数を見ると、上級貴族ではオーソドックス貴族が新貴族よりも多いが、下級貴族では逆にオーソドックス貴族の数が少ない。また、貴族たちは全員発言の機会が与えられているが、伯爵以上の上級貴族のみが議決に参加できる。
会場には昨日のアソース侯爵のトドルのように黒い礼服を着た人々も数名いた。彼らはアウレルの反乱で家族を反乱軍に殺害された貴族たちだ。中には邸宅が反乱軍に襲われた者や、皇都内で命を落とした者もいた。また、反乱で命を落とした貴族本人に代わって、爵位を継承したばかりの者たちも出席していた。皇帝陛下は彼らに特別な配慮をした。例えば見舞金の支給や、この度の事件で爵位を継承した名誉貴族が爵位を格下げされないような措置を認めていた。
私はラドと共に、昨日と同じく礼服を鎧の上に着て皇帝陛下の背後に立っていた。皇帝陛下の傍らにはスタブロスがいた。彼が本日の会議の司会進行役を務めている。彼は今、皇帝陛下に代わって議会の規則を宣言しているところだ。スタブロスの隣には皇帝陛下の秘書の文官たちが座っていた。机の上には小さな銅鑼が置かれていた。アラリコ、エリジオ、そしてフィドーラ殿下もここに座っている。フィドーラ殿下は私に鋭い視線を送り、「昼食の時に話がある」と小声で言った。私は一瞬最近の行いを振り返り、もしかしてフィドーラ殿下がルナの正体が私であることに気付いたのではと不安になった。
皇帝陛下は議会の主催者であり、議題を決める権限を持っている。つまり、陛下が必要と判断し、そして可決できる問題だけが議会で送れる。多くの場合、議会に送るのは貴族の協力を得る必要がある問題ばかりだ。たとえば重要な文官の任命や、各領地貴族の納税額などだ。今回の議会では、北部の各旧王国を皇帝直轄領とする議題が取り上げられている。また内閣大臣の人事についても話し合われる予定だ。
しかし、アウレルの反乱に多くの貴族子弟が関与していたため、陛下は反乱参加者の家主を責めないことを条件に、議会での支持を得ることに成功している。従って、今年の議会では陛下が長年悩まされていた多くの問題が進展する見込みだ。また議会の日程を埋めるために、宗教問題への見解や道路建設計画など、あまり重要でない問題も議論される。
皇帝陛下は継承者の問題も議題に挙げる。でも今年の議会では上級貴族が集まったこの機会に、陛下が継承者問題について考え始めたことを説明するだけだ。結論はまだ遠い話だ。アウレルの死後、これは必然的な結果となっている。帝国の慣例では、皇帝が自身の継承者を選ぶ権利を持っている。でも通常、皇后の長男が選ばれる。そして彼がまだ若いうちに側近や侍衛、婚姻を手配する。皇太子は一部の仕事を任され、帝国の運営を学ぶ。
こうして皇太子は、皇太子時代の側近たちを頼りに、即位後に帝国を迅速に掌握する準備を整える。皇太子が成人後、貴族街の邸宅に移るのも継承者育成の一環だ。皇太子の側近が宮殿を頻繁に出入りするのは不便だからだ。しかし、この方法にはリスクもある。野心家たちがコスティンのように皇太子を扇動して反乱を起こす可能性があるのだ。だからこそ、皇帝陛下が最後の瞬間まで継承者を明らかにしないこともあり得る。
皇位継承者以外の皇子や皇女も皇位を継ぐ可能性があるが、継承順位は皇太子の後に回るため、彼らには重要な役職を与えられることもなく、特別な教育も施されない。多くの場合、彼らはフィドーラ殿下のように、政略結婚の道具として扱われる。一度も彼らの人生が自らの意思で決まることなく、他人によって操られていることを考えると、何とも言えない悲しみが湧き上がる。アウレルの死に感謝するべきなのだろうかとさえ思う。
私は事前にスタブロスに今日の予定を確認していた。まずは彼が議会の規則を説明し、それが半刻(約30分)ほど続く。その後、皇帝陛下が簡単な挨拶をし、いよいよ議題の議論に入る。スタブロスは各議題を順に紹介し、上級貴族たちはそれについて意見を述べることができ、最後にスタブロスがその議題についての投票を仕切る。ただし、発言の時間は限られており、全員が発言の機会を得られるわけでもない。もし全員が自由に発言できたら、反対の貴族たちが議会が閉会するまで延々と話し続ける可能性がある。時間通りに昼食をとるためにも、スタブロスさんには発言時間をしっかりと制限していただきたいところだ。
議会は皇帝陛下が貴族の意見を直接聞くための場所だ。陛下は議会の決議を受け入れることもできれば、拒否することもできる。しかし前も言ったように、議題は陛下が決めるものであり、貴族の協力が不要な議題は通常、議会には持ち込まれない。そのため、議会で否決された事項を陛下が実行しようとしても貴族たちの協力を得られず、成功することはほとんどない。従って、皇帝陛下が議会の決議を覆すことは滅多にない。過去にはある皇帝が議会の反対を押し切って多くの法案を強行したことがあり、貴族との対立が深刻化し、最終的には内戦に至ったと伝えられている。そのため、議会を効果的に利用するのも皇帝の必須科目と言えるだろう。フィドーラ殿下たちもこのために議会見学をしているのだろう。




