嵐の名残り(明日工場街へ)
読者の皆さん、こんばんは。とりあえず前のエピソードのタイトルも前部つけました。これで少しでも読み易いだろうか。
一周した後、私は出発地点に戻った。ペーガソスから降りると、すぐにフィドーラ殿下が駆け寄ってきた。彼女は私の手袋を外し、自分の手で私の手を包み込んだ。
「フィドーラ殿下、私の手はまだ冷たいですよ。」私は慌てて手を引こうとした。フィドーラ殿下と向き合うのが怖いような気がしていた。秘密を打ち明け、あとは彼女に委ねてしまうのがいいのだろうか?やっぱりそれは無理だ。フィドーラ殿下に向き合う前に、まず自分自身を納得させなければならない。
「どうやらもうわたくしの手を嫌がってしまうわね。」フィドーラ殿下は私を見下ろして言った。
「申し訳ありません、フィドーラ殿下。」私は頭を下げて言った。ああ、やっぱり私はフィドーラ殿下には逆らえないな。
「フィドーラ殿下。ルナが皇城に来た時、踊りを見たいという理由で彼女を呼んでください。陛下も彼女の舞を褒めていたことですし、皇族の前で踊るのも失礼にはならないでしょう。」ユードロスはグリフォンから降りるとすぐに言った。ずるい!これではもう断れないではないか!
「うん、それはいい考えだわ。そうしましょう。最近、父上の後継者の競争で忙しくて、招待状を書く暇がなかったわ。ルチャノ、帰ったらすぐに書くわ。ルナはいつなら暇っているかしら?」フィドーラ殿下、私の手を握りながら見下ろして言った。
「フィドーラ殿下、ルナはいつでも殿下の命令に従います。しかし、踊りの件はもう少し考えさせていただけませんか。彼女はあまり人前で踊るのを好んでいないようです。」私は震えながら答えた。
「どうして。父親の前では踊れたのに、わたくしの前では嫌なの?それなら、わたくしが即位したら、専属の舞姫に任命しますわ。どうかしら?」フィドーラ殿下は不満げに言った。
「いえ、彼女は殿下の前で踊ることを喜んでくれると思います。」私は慌てて言った。
「はは、最初からそう言えばいいわよ。」フィドーラ殿下は上機嫌で言った。
「フィドーラ殿下。専属の舞姫の件はよくお考えください。ルナは私の妻になる予定ですから。」ユードロスは隣で頭を下げながら言った。
「ユードロス、ルナは数日前に婚約を解消するつもりはないと言っていましたよ。さっきもお伝えしましたよね。」私はユードロスに念を押した。
「うん、そうだ。でも、私は諦めないよ。決意を甘く見ないでほしい。」ユードロスは隣で真剣に言った。フィドーラ殿下は私の手を放し、ユードロスの肩を叩いて励ました。
「ルチャノ、どうして君は途中で鞍を放したんだ。しかも両手を放して!」ソリナがペーガソスから降りるなり私に叫んだ。
「足だけで姿勢を保てるでしょう?」私は言った。
「初心者だろう?誰が最初からそんな危険なやり方を教えたんだ。アドリア領のペーガソスライダーはみんなそうなのか?」ソリナは明らかに怒っていた。
「でも両手で鞍を握らないと、どうやって弓を操るんですか?」私は尋ねた。
「もう飛行中に武器を操作する試験に合格したのか?資格証明書は?」ソリナはさらに怒り、私は頭を下げた。証明書はリノス王国で取得したもので、アドリア領には持ってきていない。だから「ルチャノ」には資格がないのだ。
「申し訳ありません。」私は頭を下げて謝った。
「それなら、しっかりペーガソスライダーの訓練と資格試験を受け。もう危険なことはやめるんだ!」ソリナは私に怒鳴った。
「いいじゃないか、ソリナ。ルチャノは飛行がとても上手なんだから、このまま資格試験を受けさせたらいいだろう。今グリフォン軍団の戦力は大きく損失しているから、早く補充したいんだ。」隣でロレアノが言った。
「でもロレアノ様、私は親衛隊の仕事があります。たとえペーガソスライダーの資格を取ったとしても、任務をこなすのは難しいでしょう。」私は再び言った。
「構わないよ。君のような人が軍団に入ってくれるだけでも、私は感謝している。アドリア領で君はペーガソスライダーとして人気が高かったと聞いている。君の助けで、もっと多くの若者がペーガソスライダーになりたいと思ってくれるだろう。」ロレアノは笑いながら言った。私を広告にしないでくれ!
フィドーラ殿下を皇宮に送り届けた後、私はアデリナと一緒に家に帰った。今日は久しぶりに暇ができたので、家でゆっくりと自分のやりたいことをするつもりだ。家に戻ると、倉庫の方からいい香りが漂ってきた。これは菊の香りだろうか?私は香りを嗅いでみた。しかし、私は香りを区別するのが得意ではなかった。
「シルヴィアーナ、宿題はどうだい?」私はアデリナを連れて倉庫に向かいながら尋ねた。これは空の倉庫だ。最近、私はアデリナとシルヴィアーナに頼んで精油を作ってもらっている。ミハイルがこの倉庫は今空いていると言ったので、私は一時的に借りたのだ。
今日はシルヴィアーナが一人で作業していた。倉庫の床には試作品の蒸留機が設置されており、プスプスと蒸気を出していた。倉庫には暖炉はないが、蒸留機がずっと動いているので、外套を着る必要はない。倉庫には精油の原料が山積みになっており、燃料となる薪も置かれている。シルヴィアーナは隣の机に座って宿題を書いていた。机の上には定期的にチェックするための砂時計もあった。
「順調だよ。見て、もうこんなにできたんだよ。」シルヴィアーナは立ち上がった。彼女はまだエプロンを着ている。シルヴィアーナは私に栓をした小さな銅の缶を手渡した。栓を開けると、濃厚な菊の香りが鼻をくすぐった。
「もうこんなにできたんだ。」私は感慨深く言いながら、さらに香りを嗅いだ。うまくいったようだ。香りはとても濃厚だ。
「そうだよ。私たちは何日もかけて作ってきたんだ。最初は経験がなくて、材料と時間を無駄にしてしまったけれど、それでもこんなにたまったんだよ。」シルヴィアーナは嬉しそうに言った。
「フローラルウォーターもこれだけ集めたんだよ。」アデリナは隣の陶器の壺を指差した。そこには今日作られたフローラルウォーターが入っていた。フローラルウォーターはすぐに劣化してしまうため、その日のうちにお風呂で使うことになっていた。実際、それはちょっともったいない気がする。前世の記憶によれば、フローラルウォーターは飲み物や化粧品にも使えるはずだ。うーん、やっぱりソティリオスと相談して、精油とフローラルウォーターの工場を立ち上げるべきだな。
「そうだね。マッサージをするとき、オリーブオイルに少し精油を加えると、もっとリラックスできるよ。」私は言った。前回、私はルナの姿をしてユードロスに会いに行ったとき、シルヴィアーナが私にマッサージをしてくれた。でも、それはあまりにも贅沢だったので、貴重なオリーブオイルは食べるために使いたいと思った。それ以来、彼女には髪を洗ってもらうだけにしている。
「ルチャノ兄さんで試してみてもいいかな?」シルヴィアーナは目を輝かせて言った。
「じゃあ、やってみてくれ。」私は目を閉じて、運命に身を委ねるように言った。仕方がない。精油はフィドーラ殿下への婚約記念の贈り物だ。彼女にマッサージをする前に、私がテスト対象になるしかないのだ。
「まったく、ルチャノは本当にだらしない貴族じゃないの。」アデリナは隣で冷ややかに言った。
「シルヴィアーナ。突然思い出したけど、フィドーラ殿下は私よりも背が高いよね。アデリナにもマッサージをしてくれるかな。」私はアデリナの腕を掴み、悪戯っぽく笑いながら言った。私だけがテスト対象になるのではなく、アデリナにも付き合ってもらわないと。
「それはいい考えだよ、ルチャノ兄さん。」シルヴィアーナはさらに嬉しそうに笑った。
「ふん、若様は本当に意地悪だね。」アデリナは少し不機嫌そうに、でも期待しているように言った。
「若様、ニキタス商会から手紙が届いています。彼らは近日中に前回の工房に来て、蒸留酒の市場投入について話し合いたいとのことです。」ハルトが倉庫に入ってきて言った。
「うーん、ちょうど精油についても商談したいと思っていたところだ。明日からまた親衛隊の選抜が始まるので、時間が取れなさそうだな。ハルト、午後に私と一緒に行ってくれるか?」私はハルトに言った。
「もちろんです、若様。」ハルトは言った。
「よかった。それなら、すぐにソティリオスに手紙を書くよ。今回は化粧はしなくてもいい。自分で服を着れば十分だ。」私は言った。工場街に行くときは、もちろんルナの姿に扮しないとね。
「化粧?」ハルトは不思議そうに言った。
「ハルト兄さん、工場街に私を護衛してくれますか?」私は元の声で言った。
「若様、まさかルナの姿に扮して工場街に行くつもりですか?」ハルトは驚いて言った。
「もちろんだよ。護衛してくれるよね?」私は目をぱちぱちさせながらハルトに微笑んで言った。ハルトは困ったようにため息をつき、そしてうなずいた。やった!




